STAGE:4 マスコミには気をつけろ!

 中間市の市長に立候補したタレントの福田健次氏が、過去に取材でゲーム開発者に失礼な振る舞いをしていたというツイートを先日見ました。

 本当かどうかは分からないのでこの件についてのコメントは差し控えさせていただきます。

 が、僕自身も過去にテレビ局や、新聞、一般雑誌などのメディアマスコミの方々から嫌な気分にさせられたことがあります。


 十数年前、僕はゲームライターをやってました。

 と言っても『ファミ通』や『電撃』みたいな有名な雑誌媒体ではなくて、ネットの情報サイトです。

 今みたいにブログによるまとめサイトなんてまだなかった時代で、一早く情報を提供し、さらに無理して動画だって配信すれば、情報サイトは雑誌に取って代わる存在になれるんじゃないかと色々なところが力を入れていましたね。


 そしてそんな僕の仕事のひとつに、メーカーによるイベントの取材がありました。

 メーカーのイベントと言ってもその種類は様々です。

 スペースワールドという任天堂主催のゲームショウという大きなイベントもあれば、秋葉原での体験会なんてものもあります。


 でも、イベント取材と言えば、やはり一番楽しかったのはゲームの完成披露会。

 出来上がったばかりのゲームの映像が流れ、製作者のちょっとしたトークショウみたいなものがあります。

 披露会が終わった後には製作者への囲み取材。それまで雑誌の中でしか見たことがなかった憧れの人と直に話せるんですから、最初は緊張しまくりでした。


 ただ、そこにテレビ局や一般雑誌などの一般マスコミが出張でばってくると話が違ってきます。

 彼らは僕らよりも力を持っているので、とにかく態度が横暴です。

 そして彼らの「ゲームなんかどうでもいい」という態度は、とても苛立たしく感じました。


 例えばEAがF1のゲームをリリースした際、そのパッケージに当時F1デビューしたばかりの佐藤琢磨選手を起用しました。

 勿論、完成披露会には佐藤選手も登場します。

 基本的にゲームの完成披露会に一般マスコミがやってくるのは稀ですが、今回の例やCMにタレントを起用したりすると、馬鹿みたいに押し寄せてきます。


 で、彼らは披露会の質疑応答や囲み取材で、ひたすらゲームとは関係ない話ばかりを質問するのです。


 先のF1ゲームの時は、ひたすら佐藤選手のF1レビューに関する質問ばかりが飛び交いました。

 こっちがゲームに対して質問したくても、そんな無駄なことはさせないとばかりに矢継ぎ早にマシンの調子はどうか、とか、今シーズンの目標は、とか尋ねまくります。

 あの時はさすがにゲーム開発陣が可哀想でしたね。佐藤選手も「これ、ゲームの披露会なのになぁ」って困惑していました。


 こういうことは日常茶飯事でしたが、続いては珍しくて面白い話をひとつ。


 初代XBOXが日本で発売される際、緊急にビル・ゲイツが来日することになりました。

 その事を知らされたのは確か夕方の頃。夜遅くに日本につき、深夜に渋谷で記者会見をするということで、取材に行きました。

 初代XBOXの日本発売は2月22日。まだ春には程遠くて寒い中、深夜に会見をするとは言っても具体的には何時から始まるのかも知らされず、震えながら建物の外で待たされたものです。

 

 小一時間ほど待たされたところでビル・ゲイツ到着。

 が、なんせ緊急なことなので用意された記者会見の会場は小さく、最初にテレビや新聞などの一般マスコミへの会見が行われることになりました。


 もっとも普段からこういう扱いには慣れていたので、別に何とも思いませんでした。

 彼らの取材が終わるまで僕たちは列を作って待機。大丈夫、僕たちの多くは年に二回のイベントによって行列で待たされるスキルを得ているのでさほど苦にはなりません(と言いつつ、僕は行った事がなかったりするのですが)。


 で、さらに一時間ほど待たされたところで、ようやくテレビ局の人たちが取材を終えて建物から出てきます。

 テレビカメラを抱えた人が確認の為でしょうか、まだカメラを担いで何やらファインダーを覗きこんでいますが、そんなのは正直どうでもいい。

 早く暖かい部屋に入りたいし、何より世界のビル・ゲイツと対面し、話が出来ることに興奮していました。


 結局、ビル・ゲイツの記者会見はいたって普通なもので(もっとも「毎日XBOXで『デッドオアアライブ3』をやっているよ。持ちキャラはあやねだ」ってリップサービスだけかと思いきや、実際にプレイしてくれるとは思ってもいませんでしたが)、質疑応答もあっさりしたものでした。


 数時間待たされた割には正直言ってあまり記事に出来るところがなかったのですが、まぁ仕方ありません。

 最後に明日(その頃にはもうとっくに今日になってましたが)発売のXBOXを購入すべく、建物の中で行列を作っていたユーザーさんたちに軽くインタビューして帰りました。


 さて、ここまでは普通の話です。

 面白いのはここから。

 会社に帰っていつものように徹夜で仕事をしていたら、朝方、上司からメールが入りました。

 何か急な仕事の件だろうかと溜息をつきつつ確認。

 するとメールにはただひとこと、「お前、朝のニュースに映ってたぞ」とのこと。

 なんのことやらさっぱり分かりません。

 でも、この上司のメールを機に、それからも次から次へとメールがやってきました。

 どうやら昨夜、ビル・ゲイツの取材を終えて出てきたテレビ局の人はカメラの調整ではなく、僕たちを映していたようです。


 そうです、僕たちは彼らによって「」として全国に紹介されたのです。


 先述したようにそういうファンはちゃんといました。建物の中で列を作っていました。

 が、もともとは一般マスコミだった上司曰く、「建物の中で待っているよりも、この寒空の中、外で待っていると言う方がインパクトがあるんだよ」とのこと。

 

 まさにマスコミの偽造を確信した出来事となりました。


 あれから時代が進み、昨今では各種SNSでのタレコミによって、マスコミの偽造・捏造なんて半ば当たり前となっています。

 どうしてそういうことするのか、と思いますが、きっと彼らにとって真実よりもずっと大切なものがあって、それを世間に流すのが自分たちの仕事だという考えが染み付いてしまっているんでしょうね。

 

 正直ネットの世界もウソ・偽りが溢れかえっています。

 そんな今の時代だからこそ、マスコミは真実にこだわるべきなんじゃないでしょうかね。


 うん、なんか今回は真面目な話でごめんよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る