Soul Food

真白(ましろ)

Soul Food

 私は卵かけご飯が好きだ。

 小さな頃から大好きだった。

 今は専用の醤油があったり、ちょい足しとかが流行ってるけど、やっぱり普通の醤油で食べるのが一番好きだ。

 お茶碗に卵を割り入れ、醤油をひとさし。カシャカシャとかき混ぜ、そこに冷ご飯を入れて——え? ご飯を後から入れるのかって? 何言ってるの、ご飯は後からでしょ。しかもなに、冷ご飯じゃなくて炊きたてで作る? いやいや、ご飯が熱かったら卵に火が通っちゃうでしょ。

 いやいやいやいや、まってまって。別に醤油じゃなくて、塩でも砂糖でもごま油でもいいよ。海苔とかネギとかキムチとか食べるラー油とか入れてもいいよ。でもご飯は後からだし、冷ご飯でしょ。

 なんでなんで。入れる順番なんてどうでもいいならご飯を後から入れてもいいわけでしょ?

 そうじゃなくて。熱いご飯を入れたら生卵のとろとろ感がなくなっちゃうでしょ?

 いいかげんにしてよ! 卵かけご飯は私のソウルフードなの! 絶対にご飯は後からだし、冷ご飯じゃないとダメなの!

 

 翌日、私たちは離婚した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Soul Food 真白(ましろ) @BlancheGrande

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ