トキは仲間を探している
けものフレンズ大好き
トキは仲間を探している
「わたーしはートキー♪ きょうもーなかーまーをーさがーしてー♪ うたーをー♪
うたーうーのー♪」
今日もこうざんちほーにトキちゃんの歌声がこだまします。
ショウジョウトキちゃんという仲間を見つけましたが、トキちゃんはできればもっとたくさんの仲間達と会いたいと思っています。
「トキ!」
そのショウジョウトキちゃんが、血相を変えて飛んできます。
「あらどうしたの?」
「落ち着いて聞いて!」
そう言っているショウジョウトキちゃんが自身が落ち着いていないようで、息を整えてから言いました。
「私達の仲間がみつかったの!」
この日はいつもと同じ一日にはならさそうでした――。
「ほんとう!? どこにいるの!?」
普段はローテンションのトキちゃんが、本当に珍しく、食い気味にショウジョウトキちゃんに詰め寄ります。
「それは――」
ショウジョウトキちゃんはその時の経緯を話し始めました――。
「~♪」
その日ショウジョウトキちゃんは、鼻歌を歌いながら自分的には優雅に、さばんなちほーを飛んでいました。
しかし――。
「あなたは……カラスね!」
地上から聞こえた心を抉るような一言に思わず体勢を崩し、そのまま地面に落ちてしまいました。
「いたた……、誰がカラスよ!」
ショウジョウトキちゃんは無礼な発言をした誰かに思い切り文句を言います。
見ればそこには、指を差しているキリンちゃんと差されているカバちゃんが。
「あなたは………サルね!」
「かすりもしないわよ!」
どうやらキリンちゃんがいつものように、とんでも推理をしている場面に出くわしたようでした。
カラスと言われたのはショウジョウトキちゃんではなく、カバちゃんだったのです。
「あなたからも何か言って下さらない? この子さっきから訳の分からないことでつっかかってきて」
「だってここに消えたジャパリまんのヒントが……」
「サーバルの話でしょ。あの子なら絶対に自分で食べたわよ」
「ぐぅ!」
「アホらし……」
ショウジョウトキちゃんはとっととその場から飛び去ろうとしました。
それをアミメキリンちゃんが止めます。
「ちょ、ま、待って! もう一回チャンス! 次は自信あるから! あなたが何のフレンズか思いだしたわ!」
「はいはいどうぞ」
ショウジョウトキちゃんは適当に聞き流します。
「あなたはトキのフレンズね!」
正確ではありませんが、今度はしっかり当てることができました。
「はいはいそうね」
しかしショウジョウトキちゃんはまぐれ当たりと思い、結局すぐにその場から去ろうとしました。
ただ次に言った言葉は、決して無視できるものではありませんでした。
「私、前に貴方に似たフレンズ見たことあるから!」
「なんですって!? どんな色だった!?」
「黒かった気がするわ」
少なくともこれでそれがトキちゃんでないことは確実です。
「どこで会ったの!?」
「それは――」
「……という話なのよ」
「つまりその子はゆうえんちで仲間に会ったと言うのね。早速行きましょう!」
「ええ!」
こうして2人はゆうえんちに向かいます。
「……それで、どこにいたのかしら?」
「とりあえず、どこかの建物の中にいたって言ってたわよ。がんばって探してみましょう」
「ええ」
ゆうえんちは、この何日か後に『無事セルリアンを倒せたアンドかばん何の動物か分かっておめでとう会』が開かれることになる、観覧車のあるエリアだけではありません。
アトラクション全てを調べるとなると、かなり大変でした。
それでもトキちゃんとショウジョウトキちゃんは、文字通り虱潰しに調べて行きました。
「……ふう、いないわね」
「今思ったんだけど、情報の出所がかなり不安だったのよね。あの子の事だから、ただの勘違いだったという可能性も……」
会って数分程度しか話ませんでしたが、ショウジョウトキちゃんにもアミメキリンちゃんがどういうフレンズか、だいたい理解出来ていました。
「それでも探さないで後悔するより、探して後悔した方がマシだわ」
「……そうね」
トキちゃんほどではありませんが、ショウジョウトキちゃんもまた仲間に会いたいと思っていたのです
しかし、やはり仲間は見つかりませんでした。
「うーん、たとえいたとしても、もうどこかへ行ってしまった可能性が高そうね」
「ここまで探していないとなると、流石に諦めるしかないのかしら。な~か~ま~よ~♪ おまえ~は~♪ いま~いずこ~♪」
「……あ」
「どうしたの?」
「そういえばここにトキみたいに歌や踊りが好きな子が集まる場所があったわね。どうせなら行ってみない?」
「……そうね、このまま帰るのももったいないわ」
そして2人は『JAPARIPARK』と書かれた書き割りのある、あの舞台に行きます。
「あれ?」
舞台に近づくと、トキちゃんはその裏に控え室のような場所があることに気付きました。
林の中に隠れるようにしてあったため、近づかないと気付けなかったのです。
「どうしたの?」
「こんな所に小屋が……とりあえず入ってみようかしら」
「そうね」
2人は意を決して中に入ります。
するとそこには黒く美しい羽を纏ったトキ――
『……人形?』
によく似たマネキンがありました。
「どうやらこのことだったみたいね」
「やっぱり勘違いだったじゃない!」
「これからどうしようかしら?」
「このまま帰るのはもったいないし、せっかくだから2人で歌ってから帰りましょ!」
「ええ」
そして2人はひとしきり歌うと、ゆうえんちを後にしました。
おしまい
ところでキリンちゃんのトキという名前は、いったいどこから出たのでしょうね?
ほんとうにおしまい
トキは仲間を探している けものフレンズ大好き @zvonimir1968
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