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司が覚えている世界地図とは大きくかけ離れたそれを、呆然と見つめる。
「まず、現状を理解していただくために、おそらくあなたが勘違いしている項目から説明させていただきます。
現状、日本は国として機能していません」
意味が分からず目を瞬かせる。
国として機能していない? なら
「《ここ》は、《どこ》ですか?」
司の問いに、眼鏡をあげながら涼は涼しい顔で答える。
「日本ですよ」
言っていることの矛盾さに、頭が混乱してきた。日本は国として機能していないという。けれどここは日本だという。
何を言っているのか、理解できない。
混乱している司の反応すら予想の範囲と言わんばかりに、涼はまた端末を弄った。
「二〇二八年、世界中に謎の物体が現れました」
言って、世界地図の端に、見たことのない黒い物体が映される。一般人が撮ったのだろうか。それともそこまで恐慌状態の中で撮られたのだろうか。映像は酷くブレていた。それでも、全体像は見える。黒い長方形二つを円柱が繋いでいる、何とも奇妙な構造だ。
それが分かるほどには、《それ》は大きかった。
「正式名称は不明です。ですが、これらは出現と同時に世界の至るところで破壊行為を開始。当時の軍事兵器では、破損させるどころか当たりもしませんでした。この物体には、物理攻撃は一切通用しないのです。
我々は、あれらを
テラー……恐怖の種。確かに、世界の至るところで破壊行為をしてきたのなら、それは恐怖の種と呼ぶに相応しい呼称だろう。
涼はあくまで冷静に続ける。
「被った被害は、この地図を見ていただければあえて言う必要もないでしょう。とにかく奴らは、無作為に襲ってきます。そこに善悪の基準はありません。各国はみな様々な対策を取りました。その結果発覚したのが、あの物体にはレーザー兵器なら通用するという、ただそれだけです。
二〇三二年、アメリカがレーザー兵器を搭載した試作機を開発、運用を開始。これで対抗策が見えたかと思われましたが、それが甘かった。今までどんな攻撃であろうと反撃しなかったテラーが反撃を開始したのです。世界はまた、テラーによる恐怖に支配されました」
涼は次に、地図に丸を付け始めた。位置で言うなら、イギリス、インド、ブラジルの三か所だ。
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