タベチャダメダヨ

@sakayu-

第1話

「サーバル、タベチャダメダヨ」

ボスがサーバルにしゃべった。

それを目の当たりにしたフレンズは大盛り上がり。

そしてそれは同時に、フレンズの秘めた想いに火をつけてしまった。


「私もボスとおしゃべりしたい。」

好奇心いっぱいのスナネコがかばんとちっちゃくなったボスに顔を近づける。

「みゃおー、食べちゃうよー・・・でもまあ食べるほどでもないか。

さっきジャパリまんをたくさん食べて満足なのです。」

そのままふわふわとどこかに行ってしまった。


続いてアミメキリンが挑戦する。

「ここはひとつ私が頑張るしかないわね!あなた、食べちゃうわよー」

ボスのレンズが光った。

「キリンハ草食デ、長イ首を伸バシテ高イ所ノ葉ヤ枝ヲ食ベルヨ。

頭ニハ5本ノ角ガアッテ、神経質デ緊張シイダヨ。」

「ハッ!?」

恐る恐るキリンは自分の頭に手をやる。

「あっ、本当に頭にコブが・・ボスも名探偵ね!

それにしてもいつの間にぶつけたのかしら、、原因を突き止めないと!現場に行きましょう!」

キリンもまたどこかに行ってしまった。

「お話してくれたのかな?」

サーバルがかばんの顔をのぞく。

「うーん、お話というより、ボクにキリンさんのことを教えてくれたような・・」

かばんは手首のラッキーさんを見た。目があったような気がした。


「次はアライさんの番なのだ!かばんさんは命の恩人なのだ!」

ボスは反応なし。

フェネックが声をかける。

「アライさーん。かばんさんを食べないとー」

「アライさんはかばんさんを食べないのだ。かばんさんは命の恩人なのだ!」

「アライさーん・・」

かばんさんは偉大なのだ、恩人なのだ。

繰り返すうちにサーバルが異変に気づいた。

「あれかばんちゃん、顔が赤いよ!」

「うん嬉しいけどちょっと恥ずかしくなってきちゃったかも・・」

「良かったねーアライさーん」

「アライさんも嬉しいのだ!良かったのだ!」


「なになにぃ?」

フレンズが集まってきた。

「かばんちゃんを食べようとすると、ボスがお話してくれるんだよ!」

サーバルの微妙な説明に一堂沸き立つ。

「サーバルのギャグはいいとして」

「われわれは料理が食べたいのです。」

「ヒグマはさっさと料理を作るのです。リカオンも来るのです、われわれはオーダーを取りに来るのを待っているのですよ。」

ヒグマとリカオンは島の長にハントされてしまった。


私もいいかな?とタイリクオオカミ。

「食べちゃうぞ、かばん。」

「食べないでくださーい」

「オオカミは嘘をつかないよ、ふふっ。」

夕陽のように燃えるオレンジと凪いだ海のように澄んだブルーの眼にいっぺんに見つめられて、

かばんはドキドキした。

妙な空気に思わずサーバルが間に入る。

「駄目だよオオカミ!かばんちゃんを食べちゃ!」

「ボスの反応はなかったけど、良い顔いただきました、ふふ。」


「わた~しはトキ~、かば~んはわたしのファン~」

「アワ、アワワ」

かばんの手が小刻みに震えだし、レンズがオレンジに明滅する。

「ラッキーさん大丈夫?あれ!?手が熱いよ!?」

「私に任せて!お水に浸けると冷たくなるよ!」

サーバルがボスをもぎ取り、水を探して走る。

「あった!あそこにお茶があるよ!」

「サーバル、オ湯ハ駄目ダヨ」

「そっか・・あれ?ボス、またお話してくれたんだね!みんなとももっとお話すればいいのに!」

「・・・」


サーバルがボスを冷やしに行っている間に、

料理に連れ出されたヒグマが戻ってきていた。

「ええー?私もやるのか?そんなに興味ないんだがなあ」

ヒグマがいやいや仕方なくというそぶりで口を開く。

「かば」

「ベチャダメダヨ」


「しゃべったー!?」

「はやーい!」

皆大騒ぎ。

(なんとなくそうなるような気がしてたんだよな・・食べたりなんてしないのにな)

苦笑いをしてテーブルを離れようとするヒグマの背後でボスが穏やかに瞬いた。

「シャベッチャダメダヨ、本当ハ。デモ、ミンナ。カバンヲ助ケテクレテ、アリガトウ。」

「しゃべったあああ!!!」

観覧車が揺れるほどの大歓声が遊園地に響いた。

その後もたくさんのフレンズがボスにおしゃべりをせがんだか、それきりボスは反応しなかった。



その晩。騒ぎ疲れて寝息をたてるサーバルの隣で、かばんはそっと呟いた。

「ラッキーさん、おやすみなさい。」

「オヤスミカバン、マタアシタ」

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