天井

@mini-gon

天井

漫画を読んでいました。しっくりとくる体勢をいくつも

発見し、とてもいい気分で寝っころがって読んでいました。

急な事でした。上の部屋から聞こえます。男のうめき声が聞こえます。

”ルメールなにしとんねんボケー”

わたしの住むアパートが揺れました。確かに上の部屋から聞こえます。

頭上から降り注ぐ暴力的な言葉にわたしの

平穏な日曜日が壊されていきます。漫画の絵とセリフを

目で追うだけ追って、ページを開いていることに気が付きました。

無意識に読んでいるふりをしていたのです。

あれほど簡単に頭に入ってきていたはずなのに、今はとても

漫画の内容を楽しむことが難しく感じました。

いろんなことが気になります。

物静かな人だったはずです。顔を合わせれば挨拶してくれるし

わりと暗い表情をしているイメージだったので、ルメールは

男にとってとても大きな衝撃を与えたのだろうと考えました。

大人が暴言を吐くってよっぽどのことです。

見たことはないけど、もしかしたら上の住人の男に

ルメールと言う名の子供がいて

その子を言葉で虐待しているのかもしれない。

キラキラネームが流行っているしルメールという名前の子供が

いてもおかしくない。考えれば考えるほど上の階に子供が

暮らしているとの思いこみが強くなります。

児童相談所へ通報するか迷いました。迷った時点で既に

上の階のゴタゴタに関わりを持ってしまった気がして、

何もしないのは気が引けます。

わたしは携帯で児童相談所の番号を調べて電話をかけました。

声だけでおじさんだとわかる人が電話にでました。

優しい声です、この人ならきっと助けてくれるだろうと思いました。

「ルメールはボケと言われても仕方がないんじゃないですかね?

 今日に限っては。安心してください。たぶん虐待でありません」

罵声を聞いた時間を確認され、その時間を告げると腑に落ちた

ように笑った。緊急窓口のはずなのに電話越しからまるで

緊張感が伝わりません。

恥ずかしい気持ちがしました。でも私は一人の人間を守った気が

したし、抱えた問題を解決したことで無事、漫画をじっくりと

読めるようになったからこれでよしです。

行動して後悔はなし!!です。

わたしは見たこともないルメールと言う人をかばいました。

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