Leonardo's Story① -昔話-


下界が異分子騒動でわちゃわちゃしている一方、

魔界で新・魔王の帰りを待つ前・魔王はその頃…。



<魔界 城内 謁見の間>



-ルイスの父-



「エヴァンは今頃何をしとるのか…」



エヴァン王子が下界へ旅立たれて早数ヶ月が過ぎた。



城には先代の魔王様…レオナルド魔人王と妃様、と先代直属の戦闘部隊が残されていた。

かくいう私もその一頭である。



「王子なら心配はご無用でしょう。

それは先代が一番理解されているのでは?」


「それはそうなんじゃが…。

お前のとこの息子からの便りがちと気になってな…」



先代のいう私の息子からの便りとは、下界で異分子≪イレギュラー≫と呼ばれる存在が出現し、それが先代の魔王であるとニンゲン達が考えている、とのことだった。



もちろん、王子もルイスもこの件に関して魔界が関与していないことは存じているだろう。


だが、おそらく先代が気にされているのはその点ではなく、勇者の存在についてだ。



「儂が100年前に会った男は<光>の魔力に長けておった。

エヴァンは精霊族や<光>の魔力に対して儂と比べても相性が悪すぎる。

…悪すぎて暴走しないかが気になるんじゃ」



王子は過去最強の魔王と言われるほどに、お強い。

それが今修行中となれば、今後どう化けてもおかしくはない。


過去最強の王子であるが、修行に出た理由の1つに、力のコントロールがあると思われる。



王子は持ち前の魔力はもちろんのこと、<光>の魔力以外ほとんどを、我々ドラゴンと裏契約を結ぶだけで使いこなせるだけの潜在能力がある。


しかし、<光>の魔力や精霊族の波長など、王子自身の力源と正反対の力に対して拮抗する力が暴走する時がある。



「お主、覚えておるか?

エヴァンが暴走したあの日を…」


「えぇ…、あれは王子が幼少期の頃…」




<エヴァン王子 約5歳頃>



「父上、コレはなんでしょうか?

天と地の境目に紛れ込んでおりました。」



と、小さな腕にぐったりした猫族の幼体が抱えられていた。

あれは体毛の白い、<光>の魔力を持つ猫族であったが、白いのは尾のみで、あとは<闇>の魔力に染まっていた。



「エヴァン…!?

その猫族に一体何をしたのだ?」



「判りません。

ただ僕はこの獣に触れただけ…」



 猫族には一貫して一つの能力がある。

それは、受けた魔力を吐き出す、というもの。

利用できる分のみ体内に取り込み、己の力を増幅させる、それができる種族なのだ。


しかし体毛の色がほぼ変わってしまっていた。



「おそらく、触れた際にエヴァンの魔力がこの幼体に流れ込み、容量オーバーしたのだろう。だから尾だけは白いまま、なのかもしれない。


誰でもいい、〈闇〉の魔力を宿す猫族を連れて参れ!

この幼体を元に戻すにはそれが早い」



 そして私が魔界に住む猫族を引き連れて戻り、事は済んだ。


この1件以来、王子は力のコントロール制御を目的に我らドラゴンと共に修行に励まれ、無暗に魔力が流れ出さないようになられた。




「…あの時は猫族だったから何とかなったものの、ニンゲン相手に同じことをしてしまったら、おそらくニンゲンは堕落してしまうでしょうね。

…浄化の力に長けたものがいれば、話は別ですが」


「その者の精神力が強ければ大事には至らんだろうが…」


 


「…儂は心配しすぎかの」目まぐるしい勢いで成長されていることでしょう


「王子はあのお方しか今は居られませんからね。

私も息子が一人おります故、そのお気持ちはわかります。


…ですが先代のご子息様は次期魔王様です。

我々の心配はよそに、目まぐるしい勢いで成長されていることでしょう」



「…そうじゃな。お主の倅もついて居ることじゃし、

高みの見物、と行こうかの」




…END



 


 

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勇者なんか消えればいい。〈Sub Story〉 花宮 蒼 @hssh341

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