Edward's Story -友へー
これは俺が上級に昇格した次の日の事。
馴染みのエルフ族が経営する宿屋兼酒屋に朝餉を食べに行った時。
その日は特に仕事はなく、昇格したことを店主-マーガレット-に昔の馴染みで報告でもしようかと思っていたところに、
「エド!ちょっと仕事を頼まれてくれる?」
「うん?」
依頼を頼まれた。
依頼なら騎士団に入ってから定期的に受けていたが、今日はその日ではなかったはず。
けれどまぁ仕事もないし、と二つ返事で承った。
《深緑の森-ディフォル-》
「後は…リーフ全色と、マカマの木の実は有るだけ。…あるだけって取りすぎじゃないのか?」
サラダなんかに使われることの多いリーフには今の所3色(レッド、グリーン、イエロー)この地方では見つかっている。
が、どうやら気候によって変化するらしく北のほうでは色が違うらしい。
マカマの実は硬い殻に覆われているが剥けばみずみずしく柔らかいものから、水分少なめで歯応えのあるものまで様々だ。
料理では剥いて水で洗っただけでも、本来の味がしっかりしているからとても美味しい。
あえて炒めるも良し、煮込むも良し。
甘みがある種類もあり、
全ては調理者の手にかかっていると言っても過言ではないと思う。
と、その他に店の看板メニュー、レッドブロックの肉の調達、魚の生け捕りやら任務内容はてんこ盛りだ。
「食材なら一昨日も取りに行ったばかりなんだがなぁ…。
取りすぎて精霊族に怒られないだろうな?」
渡されたリスト通りに食材を確保しては、種類ごと麻袋に詰めていく。
依頼書いっぱいに書かれた食材をすべて集め終わったのは昼餉の時間を優に超え、空腹感もピークを過ぎた頃だった。
「ったく…。
一昨日のリストにもあったもんが半分くらい入ってるじゃないか。
一昨日からの2日間で大食らいの客でも沢山来たのか?」
結構な袋数になったため、1つの大きな布で包んでそれをトルマンに咥えて運んでもらうことにした。
「いつもの宿屋、ワイドベリーまで頼む」
《宿屋 ワイドベリー》
「助かったよトルマン。
今日はもう急ぎでない限り任務もないし、ゆっくり休んでてくれ」
コクン
トルマンが頷いたのを確認して、あの大量の麻袋を店の裏口へ数往復して運び終えた。
生け捕りに、と言われた魚に関しては予め木箱を渡され、なんとかそれに木の葉を敷き詰め持ち帰ってきた。
…少し隊服が濡れたがな。
裏口から店内に入ると何故か物音がしない。それに店内が暗い。
何故だ?今日は定休日でもないし、いつもならこの時間は甘味目当ての街娘達で溢れかえっているはずなのに、何の音もしない。
マーガレットに何かあったのか?
まさか…!?
「マーガレット!!」
いてもたってもいられず、荷物そっちのけで店内に飛び出した。
『パーン!!』
何処からか一斉にクラッカー音がして急に照明が付いた。
「…は?」
目の前にはニヤリと笑うマーガレットに、さらにニヤニヤ笑う騎士団の面々がそこにいた。
『上級昇格おめでとう!』
と、店内の壁に布が掛けられ、マーガレットの字で大きく書かれていた。
「…どういう事だ?何故団長達まで、」
公の場以外は滅多に執務室に篭りっきりの団長が、何故?
「それはね、私がこのパーティーをしたいってリグちゃんに話してたら偶々通りすがられて。折角だから隊の人も誘っては?って。
そうしたらこんなに集まってくれたのよ!
あ、依頼をしたのは準備の時間を作るためだったの。重たかった?」
店内も30人くらいはすんなりと入れる程の面積なのに、今はキツキツだ。
「こんなに?俺の昇級祝いに?」
騎士団の連中の肩幅があるとかそれを差し引いても狭い。店内ですれ違うのもギリギリな程に。
「エドワード」
「はっ!」
おおよそ中心に立っているマーガレットの隣に立つ団長、副団長に名を呼ばれた。
「エドワード、この騎士団に入って何年になる?」
「15で入りましたので、7年目になります」
「そうだ。7年経った。
お前はこの7年間、辞めていく同胞も多い中鍛錬も怠らず仲間達とともに本当によくやってくれた。
そして、これからも仲間達と共に全力を尽くしてくれ」
「…勿論です!
これからも力の限りを尽くす所存です」
「うむ、お前がいると頼もしい限りだ。
さぁ、宴を始めるとするかの?」
それから後の事は酒の呑みすぎで、実はうろ覚えな事は俺1人の秘密。
この日聞いた団長からのお言葉は、
俺1人の宝物。
そして、マーガレットは俺だけの____。
(あ、エドはお皿洗い、ヨロシクね!)
(俺が主役だったのに?!)
(それはさっきまでの話!
…改めて、昇級おめでとう、エドワード)
(…おぅ!ありがとうな)
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