第16話 未来からの来訪者
ついに人類が火星に行くんだ。たかし君はテレビを見て興奮していた。
この一年は大変な年だったとたかし君は思った。まるで地球が生まれてから今までの歴史を一年で経験したような年であった。色々な人種が増えたし、地球の環境の激変にはとても困った。隣の家のお姉さんにはいつの間にか息子ができていたし、お姉さんはどこか違う街に出て行ってしまった。たかし君は長い冬に地下で過ごした体験を一生忘れないだろう。
「たかしー、らんまるちゃんに水やったかー」
と父親の声がする。
たかし君は巨大ヤモリのらんまるちゃんに水をやってから学校へ向かった。
たかし君の肩パットは金色であった。腰の剣には名があった。立派なものだ。
「たかし君、おはよう」
恐竜人の女の子だ。
「おはよう、龍子ちゃん」
たかし君は友達も増えた。
「なんか、私のお母さんが言ってたんだけど、今日、転校生が私たちのクラスに来るらしいよ」
龍子ちゃんのお母さんはPTAの役員をやっていた。
「へー、まあ、最近多いからね、転校生」
たかし君のクラスには最近ペンギンが転校してきたばかりだ。
「けど、今度の転校生は人間らしいよ」
と龍子ちゃんは言った。
「女の子だって。気になる?」
「いや、別に」
たかし君は言った。
教室に着くと、
「おはようニョロ」
と隣の席のニョロ太が言った。
「お、おう、おはよう」
たかし君が言う。
ニョロ太はニョロニョロと動いている。彼がクラスに転校してきてから一月以上経つのだが、彼が何人か未だに分からない。
キーンコーンカーンコーンと始業のベルが鳴った。先生がやって来る。
「はい、席について」
先生は新任のツルツル先生だ。
「転校生を紹介します。じゃ、入ってきて」
と先生が言った。
しかし、なんで先生はいつも転校生を紹介するのにもったいつけるのかとたかし君は思う。女の子が教室に入ってきた。
「じゃ、自己紹介をお願いします」
と先生が言う。
「ひみこです。未来からやってきました。よろしく」
と女の子は言った。
休み時間だ。
「ひみこちゃん未来から来たんだって?すごーい。未来ってどうなってるの?」
などと龍子ちゃんの声が聞こえてくる。ひみこってのはあのひみこだろうか?とたかし君はずっと考えていた。瞬間接着剤のひみこ。
「ニョロ太、今日もニョロニョロしやがって、この野郎」
とクラスの男子がニョロ太に絡まりついていた。
「ニョロ太は植物なのではないだろうか?」
とたかし君は思っているのだが。
それにしてもひみこの事が気になってしかたがない。
放課後。
たかし君は神社の石碑の前に来ていた。この石碑の下には大量の瞬間接着剤とその他の物が埋められている。全部ひみこからのメールで依頼された物だった。
「たかし君」
声に振り返るとそこには転校生のひみこが立っていた。
「うわ、何?」
驚くたかし君。
「ありがとう、たかしくん。あなたのおかげで未来は救われました」
とひみこは言った。
「え?じゃあ、やっぱり君が未来からメールをくれたひみこなの?」
「うん。そうよ。私はずーっと遠い未来から来たの」
「どうやって?」
「神社の裏に穴があるのよ。その穴がこの時代と未来に繋がっていたのよ」
二人は神社の裏に行った。そこには木の板が地面にはめられていた。
「ここに穴があるわ」
ひみこが言った。
すると突然地面の木の板がゴトゴトと動いて開いた。中から人が出てきた。
「あ、ひみこちゃん。今帰り?」
男であった。
「あ、博士。いま、たかし君に穴を見せていた所です」
「ああ、君がたかし君か」
と博士と呼ばれた男はたかし君の手を握ってきた。
「ありがとう、たかし君。君の活躍で未来は救われたんだよ」
と博士は言った。
完。
地球の急速な変容 朝野風 @tennerinto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます