10.ぼくたちの失敗




 うぃーん がしゃん かちゃかちゃ ゴットン ガッシャン

 ぴっ ぴっ ぴっ しゅっ ふーーっ しゅっ しゅっ かちゃかちゃっ……


 機械や作業の音が一斉に響き続ける。

 やかましくわめき続ける。

 意識の上澄みを覆って焦燥感を煽り続ける。


 …………。


 軽く深呼吸をする。

 気持ちに余裕を持つよう、心掛ける。

 再三注意されているのだ。

 もう後はない。そのつもりで手綱を握る――。


 …………。


 …………。



 仕事が終わる。

 ――よかった。今日もなんとか乗り切れた。

 そんな思考に嫌気が差す。がんばってるフリなんて白々しい。

 

 早足で更衣室へ向かう。

 

 通路で研修生たちと行き会う。挨拶を交わす。

 みんな眩しい。肌がつやつやしている。元気もいっぱいだ。

 一方、ロッカーの鏡に映る顔には経年の醜さが忍び寄る。

 迷走した青春の果てには、ただただ失敗したという事実だけがあった。たくさんの時間を無駄にしたという遣る瀬無い後悔だけがあった。


 大切ななにかを失ったことで、代わりにいろいろなものが欲しくなった。

 より即物的で、わかりやすいものを求めるようになった。

 ステータス、社会的地位、他人から羨まれるなにがしかの能力、せめて恥ずかしくないだけの教養、自信を持って語れるなにか、誰かの優位に立てるなにか、他人に見下されないためのなにか、そしてモテることとセックスと――。


 失敗と後悔の果てには更なる迷走が待っていた。

 焦れる。焦る。わがままに焦燥する。辛いのは自分だけじゃないのに。

 劣等感に追われるのも、諦めて生きていくのもあたりまえのことなのに。

 そんなのわかってる。それでも苛立ちをぶつけるみたいに乱暴に着替え、自転車に乗る。

 視野狭窄になって走る。交通ルールは守る。一応マナーも気をつける。

 だが根本にある勝手さは、どうしたって運転に滲み出る。

 道の譲り方、すれ違い方、ふと沸き立つ感情から性格の悪さを思い知る。

 どうしてこうなった? アホみたいに思う。何度も思う。何度でも。

 そうして走りながらくだらない時間の計算をする――今日はいったい何時間本が読める? いったいどのくらいの量を読める?

 

 みすぼらしいスーパーでいつものパンと弁当を買う。決めてしまったほうが手っ取り早いから。

 でもいつもそれがあるわけじゃない。そんなときはまた腹を立てる。不機嫌な雰囲気を周りへ撒き散らす。いつからこんなに心が狭くなったのか。嫌で嫌で仕方がない。でもそんなものはただの自己憐憫だ。自分で自分を止めようともしないくせに。

 

 とにかく急いで買い物を済ませる。漂う悪臭と汚らしい人ごみのなかレジに並ぶ。

 明らかに「負け組」の集う激安スーパーで、同属嫌悪にますます心が荒む。


 いつも潤沢な時間が欲しかった。すこしでも自分を磨く時間が欲しかった。

 漠然とただ「結果」が欲しくて。今すぐなにかが欲しくて。

 なぜか知性や教養に焦がれた。強く強く焦がれた。でもそんなもの簡単には得られない。失った時間は大きい。追いつかない。すごい人はいくらでもいる。若くて賢いやつらもいっぱいいる。10代の才能。有能な学生たち。彼らは一日中学業や文化的なことにかまけていられる。差は開くばかりだ。ただでさえ知能には恵まれないのに。どんどん差は開く。一生追いつけない。生きてることがたまらなく無様に思える――。

 でも高望みし過ぎてることもわかってる。

 周りの人間もなにもない人たちばかりだ。

 大した特技も教養も飛びぬけた能力もなくて、そのうえ大学さえ出てなくて、非正規雇用で、それでも表向きはちゃんと胸を張って暮らしてる。何者になれなくてもそうやって暮らしていく。それでいいんだ。それが普通だ。受け入れてしまえよ。彼らは決してくだらない人間じゃあないのだから。


 でも無理だった。自分だけはどうしたって特別でいたかった。


 大切な想いを失うことは人生から「物語」を失うことだ。

 自分はこの世界の主人公ではない。それに気づくことだ。

 だから安直にステータスが欲しくなった。

「全能」になれなかったなら、せめて「有能」になりたい、と。


 俺はいつまでも幼児的な万能感に縋り続けるクソガキでしかなかった。



 

 …………。


 …………。



 今日もいらいらする。今日も午前をなんとか乗り切る。

 お昼にはバカみたいに唐辛子を振ってカレーを食べる。暴力みたいに急いで食べる。

 また周りに見せびらかすみたいに、ただただ不快を撒き散らすみたいに。

 そのくせ「こんな自分はどうせ気持ち悪がられてる」と自己憐憫する。一丁前に被害者ぶる。

 なんて支離滅裂な振る舞い。心はもうぐちゃぐちゃだった?


 戻る途中女に話しかけられる。露骨な好意を向けてくる研修生の女だ。

 やめてくれ、と思う。ほんとうはうれしいくせに、適当な理由をつくって遠ざける。

 もちろん俺だってまた誰かを好きになりたい。

「恋愛」を口実に、ひたすら気持ちのいいセックスがしたい。

「愛のあるセックス」なんて気持ちの悪いものに芯まで溺れてみたい。

 でももう無理だった。大切な想いさえ棄ててしまったから。逃げてしまったから。

 それはこれから先も誰も愛せないということの証左だ。

 だからみんなが信じている幻想をもう信じられない。

 ――理屈でどう思ってても恋には落ちてしまうものだって?

 そんなこと、ない。落ちてもどうせ否認する。あるいは躊躇して機を逃す。

 わかってる。ほんとうはまた傷つくのが怖いだけ。自分の空虚さ気持ち悪さを思い知るのが恐いだけ。


 

 雨が降る。雨が降っている。ザーザーと殴りつけるように降っている。

 鬱陶しい。鬱陶しい。ぜんぶなにもかもが鬱陶しい。

 いらいらを隠しながら更衣室へ向かう。着替えて飛び出て傘立てをまさぐる。

 ……見つからない、傘がない、自分の傘が見当たらない。

 きっと誰かが持っていったのだ。間違って持っていったのだ。

 腹が立つ。なんでそんなことをする? なんでこんなことになる? なんでこんな目に合わなきゃならない? ちゃんと見ろ。後のことを考えろ。頭でわめきながら戻らない傘に執着する。散々迷った末、けっきょく誰かの傘を奪う。呪詛がぜんぶ返ってくる。わかってやってるから最低だ。そんな自分を正当化する。仕方がないからとごまかす。まるで論理が破綻してる。いらいらしながら傘を引き抜く。更衣室から出てきた研修生が俺を怪訝そうな目で見る。心のなかで擬似的な罪悪感が膨らむ。ばれてしまった? 明日からいったいどうなる? 不安に襲われる。ますます苛立ちを募らせる。どうしてこんなことになる? どうしてこんな目に合わなきゃならない? どうして野郎は傘を間違えるんだ? どうしてそんなに適当なんだ? どうして俺ひとりが罪人にならないといけない!? ああくそ! くそったれ! くそったれ! 脳裏を過ぎる言葉はあまりにも理不尽なものばかりだった。



 …………。



 …………。



  


 うぃーん がしゃん かちゃかちゃ ゴットン ガッシャン

 ぴっ ぴっ ぴっ しゅっ ふーーっ しゅっ しゅっ かちゃかちゃっ……


 機械や作業の音が一斉に響き続ける。

 乱暴に怒鳴り続ける。

 意識の上澄みを覆って不安感を煽り続ける。


 …………。


 深呼吸をする。

 気持ちに余裕を持つよう、心掛ける。

 再三注意されているのだ。

 もう後はない。そのつもりで手綱を握る――。


 パーツを補充する。ラインにパーツを補充する。

 減ってるものを片っ端から補充する。

 各ラインの段取りをチェック。最低限の目標を脳内に描く。

 もうすぐ忙しい時間が来る。できるだけの準備をしておく。


 呼び出し音が次々に鳴る。ひたすらこなす。

 品番の切り替え、空ケースや材料の補充、完成品の搬出……。

 とにかく身体を動かす。効率は悪い。

 上手に動けない。無駄が多い。

 頭の回転と運動神経が鈍い。

 なんとかこなしてる自分がみじめになる。

「動きの機敏さ」を褒められても素直に喜べない。

 だってそれこそが俺の無能さの証明なのだから――

 

 気持ちの悪い雑念。振り払えなくてもともかく仕事をこなしていく。

 追い立てられるように。徒に焦りながら。ちいさなミスを重ねながら。

 いらいらが募る。劣等感が募る。フッと絶望感が降りてくる。それでも手綱を握って――


 不機嫌な声に呼び止められる。いつもうるさい注文をしてくる女。尖った声で嫌味ったらしい文句を連ねる。しまった。勘違い。また思い込み。そうやって失敗する。無能を重ねる。恥を上塗る。どうしてよりにもよってこの女のところで――ッ


 意識が濁る。そのまま手綱を放してしまう。

 あとは不合理な怒りに狂うゴミを眺める。

 そうやって、けっきょく自分で止めようともしない?

 

 …………。


 今度は他人にぶつけてしまった。

 これまではひとりでわめくだけだったからなんとか見過ごしてもらっていたのに。

 おかしな感覚が引かない。激しい動揺を引きずる。ふらふらと逃げるように別の場所へ去る。意識はなかなか収束しない。どこか遠くから眺め続ける。

 ソレは突然笑い出す。くっくっと下卑た笑いをお腹から弾ませる。めちゃくちゃに腰を折って大笑いする。泣き叫ぶみたいに破笑する。今度はわめきながら転げまわる――


 いつもの感覚が戻ってくる。今さら手綱が返ってくる。

 寝そべったまま息を吐く。みんなはドン引いてる。終わりだ。おしまいだ。また絶望感に駆られる。

 立ち上がり、へらへらと弁解してその場を去る。逃げるように仕事へ戻る。

 顔がヒクヒクして心がヒリヒリしてわけがわからない。今にも泣いてしまいそうだ。

 意味がわからない。ぜんぶ自分でやってることなのに。ぜんぶ自分の勝手が膿み出したことなのに。ただただ性格の悪さが招いたことなのに。けっきょくこんな考えもただの自己憐憫に過ぎない。いつも最後は「まともになれなかった自分」へ帰結する。


 すぐに事務所へ連れてかれ、厳重注意をもらった。

 でも上司は優しく接してくれた。

 ポップで爽やかな笑み。惚れてしまいそうな依存したくなるようなさりげない優しさ。

 俺は女みたいにしっとりした気分で彼の言葉を聴いた。

 一定の理解を差し向けてくれた。それはうれしかった。

 なのに壁もまた感じてしまうのが辛かった。

 馬鹿げた話だ。どうせぜんぶ演技でしかないのに。最低の模倣でしかないのに。

 そこにほんとうの痛みなんてありもしないのに。

 どうせ俺はただ、「上手く生きれない人間」をやっていたいだけなのに?


 ……ともかく、二度とおなじことはしないと心に言い聞かせた。





 …………。


 …………。

 



 なるべくストレスのすくなそうな仕事を探した。


 一人用のブースで淡々と地道な作業を続ける。音もそんなにうるさくない。

 なんとかやっていけるような気がする。


 素朴な生活のささやかな喜びを描いた文学作品を読む。

 そうやって、これからの暮らしを生き方を納得させようとする。

 きっともう大丈夫だ。なんとかやっていけそうな気がする。必死でそう言い聞かせる。


 だんだん仕事も慣れてきた。休憩時間の過ごし方もわかってきた。

 

 そして新しい作業法を教わる。入門編は終わってしまった。

 これからはついにスピードも求められる。

 不安になる。俺はどん臭い。頭が鈍い。処理が遅い。

 でもやらないと追いつかないとクズのままだ。いつまでもゴミのままだ。

 まずは手本を見せてもらう。そのやり方を覚える。

 目の前でやってみろと言われる。やってみる。記憶の喚起が遅い。もたつく。焦る。先走る。工程を飛ばしてしまう。気づくと同時に注意を受ける。仕方がない。やるしかない。黙ってずっとこっちを見てる。どうしても焦ってしまう。また工程がすっ飛ぶ。今度はゆっくりやる。わざとらしく確認しつつ進める。今度は遅いと言われる。また焦る、意識が淡く濁る速くする。速くする速くする。バカみたいにおかしな動きで急ぐ。わざとらしいにもほどがある。あまりにも歪んでる。ひどく不自然だからだろう。大丈夫?とか訊かれる。俺はへらへらとへつらう。見られてると上手く行かないしやり方は覚えてるからあとはひとりでやらせて欲しいと頼む。受理された。ちょろ過ぎる。ほんとうに最悪だった。


 ひとりになって仕切り直す。まずひとつひとつの工程から洗練させる。手本に添うよう作業の無駄を省いていく。機械のスイッチを押す。待ち構える。タイマーをセットする。ボウルに粉をぶち込む。グラムを合わせる。もうひとつの金筒についた粉やゴミを拭き取る――ここで大きな壁にぶち当たる。他はまだいい。今はまだ遅くても、速くできる見込みは立てられる。でもこればかりは先を思い描けない。あのおばさんはひと吹きでサッとゴミを拭い取った。金筒のなかもいちいち覗かなかった。前に受けた指導と食い違ってる。そもそもあんなのでちゃんと取れるのか? でも成型品にゴミが出なければいいのか? 試しにやってみる。やはりときどきゴミが出る。これでは規定の数を超えてしまう。じゃあゴミを減らす工夫をすればいい? 今後はそのための試行錯誤を進めていこう。


 

 …………。



 先輩にアドバイスをもらったりしながら、ある程度はこなせるようになっていた。ぎりぎりなんとか、役に立てなくもないくらいには。


 ある昼休み、保険の販売員に声を掛けられた。

 なんとなく、人生の岐路に立たされている気がした。

 先のことをちゃんと考えているというポーズは、なんとも立派で胸を張れるものに思える。

 それだけでも、すこしは自分に自信が持てる気がした。

 俺は前向きに考えさせてもらう旨を伝えた。

 それから販売員と様々なプランを検討していった。


 一方、私生活ではやはりなにかを読まずにはいられなかった。

 なんのために読んでいるのかもわからなくなったまま、ただみじめな気持ちで読み続けた。

 仕事が遅いなら読書も遅い。どうせ理解も大雑把で記憶もおぼろだ、なにも身につかない、あっという間に抜けていく。進まない、ちっとも前に進まない。持つ者との差はどんどん開いていく――ではなぜ諦めない? 受け入れない? ねちねちとした執着心だ度し難い偏狭さだ――棄てればいい! こんなものこそ棄てればいい!

 もう身近な人間関係のなかだけで満足してしまいたかった。でもそれはそれで難しかった。だって気持ち悪いから。嘘だから。簡単に誰かのことを気に入ったりできる、好きになったりできる。でもどうせまた嫌いになったりどうでもよくなったりする。まるで使い捨ての道具みたいな扱い。まるで人として見ちゃいない。けっきょく自分だけがかわいい。そんなぜんぶが気持ち悪くて嫌気が差していたから。

 

 ただ、どうしようもないまま日々は過ぎていった。



 それからあたらしい配置になり、べつのブースを割り当てられた。

 なにもかも勝手が変わった。仕事の内容はほとんどおなじなのに。

 ものすごくゴミの出やすい品番だった。

 とにかくゴミが出る。どれだけ手を打ってもゴミが出る。

 ロットスタンプが上手く押せない。インクを消して押しなおす。何度も押しなおす。それでまた時間を食う。もたつく。焦る。まともな量をこなせない。片づけどきを見誤って掃除に参加できない。おなじことを何度も繰り返す。相互不信をコミュニケーションで解消できない。不安な思いは募っていく。暗い思いが積もっていく。


 そんなとき、心撃たれる音楽に出会った。とんでもないラップ。ポエトリーリーディング。生きているということを、問いかけてくる。存在そのものを懸けて問うてくる。おまえはほんとうにそれでいいのか?と、すさまじい圧力でぶつかってくる。


 混乱した。頭はぐちゃぐちゃになった。今さらどうすればいいんだ? 今さらどうすればいいんだ? くそったれ! くそったれ! そう思いながらも、やはり自分もまた「何者か」になれるのではないか? という幼稚な幻想に縋ってしまう。


 …………。


 保険の契約は結ばなかった。

 今の仕事を続けていける自信が持てないでいた。だからすこしでも蓄えをつくっておきたかった。いつかの保障より目先の金のほうが入用に思えた。

 それに受け入れてしまうことが怖かった。生き方を決めてしまうことが恐かった。俺はまた、大人になることから逃げてしまった。


 やがてクリーンルームへ入るのが嫌になった。無塵衣むじんいを着るのがいやになった。タイムカードを押すのが面倒になった。職場へ向かうのが億劫になった。朝準備するのがもう耐えられなくなった。また仕事を辞めてしまった。

 今回も最低だった。

 どうしようもないゴミだった。

 電話の電源を切って引き篭もるように過ごした。

 心は言い訳ばかりした。誰かのせいにした。反省しなかった。そしてまた「人間になれなかった」という悲劇ヒゲキに縋りついた。

 ほんとうになにもかもが最悪だった。また死ぬことを考えた。何度も何度も考えた。



 でもけっきょく、わずかな蓄えを食いつぶしながら未来へ怯えていた。どうにもならない最低の現在にただただ甘ったるく震えていた。



 …………。


 …………。



 さーさーと、草のさざなむ音がする。


 どうやら壷かなにかの中にいるようだ。


 上空には星々がちらちらと瞬く。

 俺は誰かの名の刻まれたチャームを握り締め、ただ生まれいずるのを待っている。


 からっぽの心に、すこしずつなにかが流れ込む。


 暖かい? 優しい? そんなものまだ知らない。

 冷たい? 残酷? どっちでも良かった。


 ただ、すこしずつ満たされる。


 そして風が火打石を鳴らした瞬間、パリンと乾いた音を立てて――。




 目が覚めた。

 

 ふと、押入れにしまった玉を引っ張り出す。

 死んでいたはずの光がまた戻っていた。

 

 …………。 



 俺はアパートを引き払い、またふらふらと旅に出るのだった。

 





    ● ●




 こ~くんが壊れていく。

 頼んでもないのに壊れていく。

 まるであたしに見せつけるみたいに。あたしに向かってあてこするみたいに。

 

 とても見ていられない。

 あまりにも不愉快だ。


 ……それになによりもかなしくなる。 



 …………。




 こ~くんを壊したのは他でもない、あたしだ。

 こ~くんは触れれば壊してしまいそうなくらいに純粋だったのに。

 あたしはそんなこ~くんを残酷に引き裂いた。



 やっぱりそうだった。

 

 あたしが生まれてきたことこそ悪。

 あたしが死んでしまったことこそ悪。

 なのにいつまでもしがみついていることこそ、最大の悪だった。

 

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