〔 お嬢さまの社会見学 〕⑥

「さあ、麗華帰るぞ!」

 ハーレーダビットソンの後ろに飛び乗った。

「大伯父さま、アウトローって素敵ですわ!」

「そうか、じゃあワイルドグッズをいっぱい買って帰るぞ。わははっ」


 そして、わたくしたちはスカルや血や悪魔の絵の描いた怪しげなお店でお買物をしましたの。ええ、とっても楽しいお店ですのよ。うふふ♪


 蟻巣川家の屋敷に帰ったら、上空をヘリコプターが数十台旋回していました。どうやら、わたくしたちを心配した、執事の黒鐘がヘリコプターを飛ばして行く方を捜査していたようですわ。

 ホントにもう! 心配性な爺やねぇー。  

 今日は怖い目にもあったけど、大伯父さまとお出かけができて、とっても楽しかったことよ。

 バイクは蟻巣川家のゲートを目指して、真っ直ぐに走っていく。

 あら? 門の前に黒い人影が……どうやら、黒鐘と鶴代さんのようですわ。早く顔を見せて安心させてあげましょう。うふっ♪


「黒鐘、ただいま!」

 泣きそうな顔で黒鐘が飛んできた。

「お嬢様、心配しました。よくご無事で……」

 ――と言いかけて、黒鐘の視線が止まった。

「どう? わたくしのこのファッション?」

「はあ? どうなされたのですか? そのまっ黒けのカラスみたい服は……」

「イケテルでしょう?」

「……そんな、骸骨や鎖の付いた黒い服は感心しませんなぁー」

 黒鐘が眉をひそめ渋面しぶめんでいう。

「あら、そうかしら」

「ゴージャスな、お嬢さまらしいファッションがございましょう」

「そう、じゃあ、これはどうかしら?」


 くるりと後ろを向くと、スカル柄のジャンバーを脱いで、黒いタンクトップを見せた。わたくしの背中には、大きな蜘蛛のタトゥーがあった!


「ひえぇぇ―――!」


 それを見た瞬間、黒鐘が奇声を発して倒れた。


 あらら! 黒鐘って蜘蛛が苦手だったのかしら? 

 驚いて卒倒そっとうしちゃったみたい……お嬢さまだって、たまにはこんな冒険もしなくっちゃねー。

 もちろんタトゥーシールでございますわ。うふっ、御免あそばせぇー♪




         ― 〔 お嬢さまの社会見学 〕 おわり ―

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ザ・グレート・オブ・お嬢さま 泡沫恋歌 @utakatarennka

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