ランブリング戦記

新人

一冊目 ランブリングの予備知識

 俺は今、ある思考に至ったため、いつ誇り高き戦士として命を落としても悔いのないようこの地で起こっている戦争と俺の人生を、

ランブリング戦記として本に書き残す事にした。


 今、この本を手に取っている貴方が

 この世界の人間でないなら本当に嬉しい。

 俺の考えが正しかった事になる。

 もし違うなら頼む、本を置いてこの“箱の家”から何も持ち出さず立ち去ってくれ。



 早速だが、すぐにこの世界の事を知って欲しい。

 この世界、この大陸はランブリングと呼ばれている。

 誰が言ったかは知らないが、地鳴りという意味だそうだ。

 実際この地方は、原因不明の雷とは違うような轟音がする事がしばしばある。

 人間族はこれを“神の声”としてランブリングの主を神とし、崇め奉るようになった。

 このランブリング信仰は人間族の約半数に根付いているが、俺はその限りではない。

 そして俺レガシ・リードエヴォリは、誇り高き人間族だ。

 自分が人間族に生まれた事は本当に幸せだと思っている。

 明らかに他の“高度な言語を持つ種族”よりもまともだからね。

 このランブリングには人間族以外にも2種類の

“高度な言語を持つ種族”がいる。

 1つ目はエルフ族。

 蔑称を“神の失敗作” “病気の奴ら”

(もちろんだが、ランブリング信仰の者は前者を使わない)

 エルフの耳は長く、尖っている、人間族と違うのはただそれだけの事だ。

 なのにエルフ族の過激派はエルフ族の歴史が浅いことを根拠に、自分達を“新人類”として各地で通り魔的テロを起こしている。

 このうち、大都市である太陽街たいようがいガレオニアに本拠を置く、民からの支持も高い運送ギルドのギルドマスターが被害にあった“太陽の街の悲劇”により、殆どの人間はエルフ族を悪とみなすようになった。

 そして人間とエルフの抗争は、いつの間にか種全体での戦争となっていった。

 もう一つの種族は、猿。

 正式な名称は猿人だが、人間族、エルフ族共に猿人への差別がひどく今はもう、そう呼ばれていない。

 元々はランブリングのほとんどの山に住み、いくつもの集落を築き、独自の言語を持つ比較的人間との接点のない獣だった。

 ある時、各地で山の麓にある農村を襲い始め占拠した事から、人類の危険な敵として広く認知されることとなった。

 その後侵略活動を続け、次第に人類の言葉を使うようになっため、学者達は猿を“高度な言語を持つ種族”とするようになった。

 強靭な肉体を持つ彼らは人類を“退化した貧弱者” “毛のない猿もどき” “猿の道を外れた猿外”と蔑むようになった。



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