おっぱらでぃん?(流行り)

 冷たい風の突き刺す頃である。草も生えぬ砂漠、命は一つも寄せ付けられないような乾いた海の一点、魔術師は襤褸に覆われ果てにまで広がる道を歩む。その中でさえも魔術師の肉に衰えた様子はなく、真っ白な命の瑞々しさを保つその異様さに、ある意味で彼は魔術師らしい魔術師に見えた。

 男とも女とも判らぬ年若く柔らかな貌とは裏腹に、時の流れに削られた巌のような表情をしている。ただ、その目は何処にも向かっていない。踏みしめるような足取りも、崩れてしまいそうな脆さを抱え、揺れる。

 つぅ、と両の目から血が一滴零れて、水が砂に奪われ乾く。何に突き動かされるとも知らずに残していく足跡は、新たに足跡を作るとすぐ溶けしまった。

 突風、布の破ける音、魔術師が巻き付けていた襤褸は悲鳴をあげ散々、塵と消え、砂の海に飲み込まれた。と、それが箍であったのか魔術師の体はふらりと倒れる。流砂の上を動いていた体は、糸を無くしている。

 砂の海は、塵と等しく等しく魔術師を飲み下す。ゆっくりと眠りを誘うようであってあまりに大きい揺り籠に投げ出してしまうようでもあった。

 次第に魔術師の体は見えなくなっていく。終いに白い足がす、と沈んでしまった。

 その跡でさえも、容易く掻き消されてしまった。

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切羽詰まっているので初投稿です 三浦太郎 @Taro-MiURa

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