ちょいちょいす(激サム

僕が汗水糞小便をだらしなく流して、それを続けて何年経ったのだろう。未だに僕を知らない僕は、ここにふと思い出た記憶をここに流して塗りつけていこうと思う。

十代の前半であろう。花真っ盛り、それが本当に美しいかはともかく、間違いなく生きることを謳歌していた私は、ある夏の一夜、仲間たちと連れだって港町に住む仲間の近くにあった花火に出掛けた。

仲間達は先にその中の一人の家で遊んでいて、私は途中から彼らに混ざった。花火が上がるまでの暇潰しに、夜店を回っては駄弁り、ジュースを買っては駄弁り、それがどうしようもなく楽しかった。

けれど花火の始まる時刻をその時僕は知らなかったのだ。仲間の話がそこにふらりと行き着いたとき、ぞっとした。直ぐ様、当時買ってもらって一年程だったケータイで、僕は胃に重たい氷がのし掛かるのを感じながら両親に電話をかけた。

夜闇に遊ぶ許しを得られなかった僕は、仲間達に別れを告げて、駅まで独りで歩いていくことになった。途中、随分早足だったのだろう。(今思えばあれは小走りかもしれない。)約束の時間の二十分前に着くであろう時刻の電車があと十分で出ることを掲示板は告げていた。

僕はギリギリになってから、早い電車に乗った。何故だったのかは分からない。ただ、僕はそれでも乗った。

駅を出ると程なくしてトンネルに入る。それを抜ける頃には、なんとなくさざめいて息を吐いてはケチをつけるような心は落ち着いていた、と思う。

広がる海一面に、客船が無数、そのなかに明かりがまた無数と浮かび上がっていた。この事実は、僕を慰めもしたけど傷つけもした。

約束スレスレの電車に乗っていると、丁度花火は始まっていたのだ。

こんな綺麗な光の奥に、また七色光が踊ることを想い、先程までの僕を呪ったのだった。

自宅から最寄りの駅、勿論両親はおらず、私は真っ白な街灯の下で電話をかけた。その後待ったのは、体感として二十分、ケータイの時計では十五分が過ぎていた。

迎えに来たのは母親だった。

よく早く帰ってきたね

そう一言浴びせられると、僕は沈んだ心がそれなりにまた浮力を得るのを感じていた。帰り道、特に言葉もなかったと思う。ただ浴びた言葉を飴みたいに転がしていた。

単純であった少年の私の話ではなく、私は有償であり手間が掛かった極彩の花火と客船の窓、白い明かりの下かけられた無償の言葉と、そのどちらに価値があることか未だに判断がついていない、そういうことである。

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