あとで

川島健一

 

 いつの間にか机で突っ伏したまま寝ていた。けたたましい携帯の着信音で目が覚めた。あー何時だろうと思いながら、ボォーとしていた。

 時計は真夜中の12時を過ぎたところだった。

 まだ携帯電話が鳴っていた。夜中の電話はあまり出たくない。おれは机の上に頭を乗せたままだった。

 しつこいなー。

 出るまで切らないつもりか? おれは仕方なく電話に出た。

「はい、もしもしー」寝起きの声だった。

「・・・」

「もしもーし?」返事がない。

 無言電話かよと思い、切ろうとした時だった。

「あとで」という声が聞こえて、電話が切れた。

 なんだ? イタズラ電話か? ストーカー?

 男のおれにストーカーとかは無いだろう。


 身体を起こし、着信履歴を見ると電話番号が表示されてない。

 本来あるべき所に何も表示されていないのだ。画面に『非通知設定』と表示されていないので、相手は電話番号を隠してかけてきたわけではなさそうだ。

 よく見るとリダイアルが出来るようだった。

 少し考えたが、どうしても電話の主が誰か確かめてみたかった。


 呼び出し音がなっている。相手側の携帯にはつながっているようだ。

 しかし、なかなか出ない。

「ぷるるー、ぷるるー、ぷるるー」出ない。

 こんなに電話が鳴っているのに出ないとは、普通じゃない。

 それからしばらくして相手が電話に出た。

「はい、もしもしー」相手の声だ。

 突然だったので、かけたおれがびっくりした。

 おれは電話をかけたものの何と言っていいのか分からなかった。

「もしもーし?」と相手が応えてくる。

 おれはかなり焦っていたらしい。またあとでかけ直すと相手に伝えようとしたのだか、

「あとで」と言ったところで電話が勝手に切れた。

 アレっと思い、もう一度掛け直そうと思ったが二度とリダイヤルができなくなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あとで 川島健一 @jp_q

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ