第13話オルグイユ~傲慢なる矜持~

「……ご主人様は多芸ですね」


 ソフィアは若干引きぎみにそう言った。彼女の目の温度が少し下がっていた。ジトーっとクレアシオンを見つめている。


 四歳の子供が持っているにしては――いや、人が持つには多すぎるスキルの量。それに、ユニークスキルが強すぎる。スキルは多く習得できるものではない。多くても十個前後だ。まず、スキルを取得するまでに時間がかかってしまう。それに、取得出来ても、レベルあげに時間がかかる。だから、普通なら量より質をとる。


 だが、クレアシオンは違った。相反する二つのユニークスキルをもち、そのスキルを生かすために、あらゆるスキルを取得していった。しなければならなかった。彼は血を吐きながらも、師匠たちの修行をこなしてきた。その時、彼が見せた戦闘センス、どんな修行をさせても心が死なないと話題になり、修行をこなせばこなすほど、なぜか、修行と最上級神の師匠が増えていった。これが、彼が天使になったとき、危険視された原因だったりする。


 天使が持つには強すぎるユニークスキル、並外れた戦闘技術。多くの最上級武神・魔神たちの技術を吸収し、彼なりに咀嚼し、新しい技術を生み出す才能が神界に牙を向くのでは?と。


 転生してからは、ひたすらスキルを取り直していた。技術として魂が覚えていたので初めよりは取得しやすく、スキルレベルも上がり易かったが、彼が毎日、今の体で、日々成長する体で再現し続けた成果だ。


「まぁ、俺も色々あるんだ。職業とスキルの詳細を頼む」


 クレアシオンは、追求しようとする彼女の目から逃れるように先を促した。


「……かしこまりました」


 何か隠している、そう思ったが鑑定の続きをすれば少しはわかるかも知れない、と続きの情報を送った。


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 【魔王】 魔族の王ではけしてない。全ての魔素を支配し、ありとあらゆる魔法、魔術を操る。魔素の王であり、魔法の王、魔術の王である。また、神域の魔物の支配者でもある魔物の王でもある。

 ユニークスキル【魔素支配】を取得


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――良かった~。やっぱり、魔族の王じゃなかった。でもあれか?【鬼狐】のせいか?


 そう思っていると。ソフィアが、


「ご主人様、全ての魔素を支配しする、とありますが、何か身に覚えはありませんか?」


 そう言われてクレアシオンは考えるが、魔素を支配した覚えはない。気がついたら【魔素支配】を取得していた。それに、鬼狐たちも支配した覚えはない。周りが言っているだけだった。


 魔素支配を取得したから魔素を支配しているのか、魔素を支配したから魔素支配があるのか?鶏が先か、卵が先か、そんな事を考えていると頭痛がしてきた。彼の頭のなかである光景が思い出されるデュラハンのギルが農場の鶏を逃がしてしまい鬼狐の皆と彼で鶏を追いかけた時のことだ。


鶏の必死具合がすごかった。わからなくもないが……。とにかく速かった。皆で鶏を追っている間に卵が一斉に孵り、鶏を追っている動いているものを親だと思い鬼狐を追いかけはじめた。鶏を追う化け物、化け物を追うひよこ。彼はその時、刷り込みのすごさを知った。そんな彼の様子を見て、


「わからないなら大丈夫です。魔素支配を詳しく見たらわかるかもしれません」


 ソフィアはため息混じりにそう言った。


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 【鬼神化】 ユニークスキル、破邪の鬼の神、武神。武器の扱いに長ける。鬼神化すると筋力、防御力が飛躍的に上昇。


 【九尾化】 ユニークスキル、伝説の狐、妖怪や神の使い。全属性魔法に長ける。九本の尻尾は手足の様に動かせ、手足より筋力はある。狐尾化すると、魔力、素早さが飛躍的に上昇。


 【魔王化】 ユニークスキル、悪魔の王ではない。ただ、神や世界を敵に回してまで自分を貫こうとした者。魔王化すると、全ての能力が大幅に上昇。


 【傲慢】 【支配者の矜持】 不意討ち無効。状態異常無効。他者を無理矢理、支配者しない。他者に支配されない。

      

      【支配者の威圧】 敵に圧倒的な威圧を掛ける。弱いものはそれだけで死んでしまう。絶対者の威圧。

      

      【自己支配】 自分のステータスを感覚で把握できる。自分の体やスキルを使いこなしなすくなる。自分の体を完全に支配する。

      

      【支配者の領域】 半径三メートルの空間を完全に支配下に置き、空間を把握できる。空間内では任意の場所から魔法、魔術を行使できる。


      【傲慢なる裁き】 独断と偏見によって与える逃れることの出来ない裁き。該当者以外の人的被害はない。


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「……ご主人様、【傲慢】は他者を無理矢理支配するスキルじゃないんですか?」


 疑問に思ったソフィアが途中で質問した。彼女の集めていた情報と違ったのだろう。


「俺に他人を背負って責任を持てるほどの器なんてねぇよ」


 そう言って夜空を仰ぐクレアシオン。星が降りそうなほど空気がすんでいる雲一つない星空をみて器を語る三歳児だ。ソフィアはそんな彼をジト目でみていた。四歳がなにいってんだ、と。ソフィアが集められる情報はこの世界の事だけで、神界は持ちもん管理者の神域の情報は取得出来ないので、クレアシオンのことを、自分を生み出した怪しい子供位にしかわからなかった。


 【傲慢】を持つものは他の者より自分は優れていると考える自尊心の強い者が多い。そのため、【傲慢】は他者を支配するスキルになることが多くなる。たが、クレアシオンは何より、支配を嫌う。【神域の魔物の支配者】と呼ばれることもあったが、実際はそんな関係じゃない。体裁のため、『主』と呼ばれているが、支配し、支配されるような安い関係じゃない。何より、


「支配しても楽しくないだろ?一緒に笑い合いながら何かをするのが楽しいじゃねぇか」


 支配して、思考を奪ってしまったら、何をしても肯定され、なにもかも思い通りに動いてくれても、それは寂しい。実際にレキは同じような状況で苦しんでいた。


「自分さえしっかり持っていられたら、……俺はそれでいい」


 クレアシオンの支配は常に内面に向けられている。他者を支配する前に自分を律する。だから、堕天しても、邪神側に行かなかったのかもしれない。


 ソフィアにはこの一言がクレアシオンの全てを含んでいるように思えた。

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職業魔王にジョブチェンジ~周りは妥当だと言い張ります~ 黒水晶 @Rutilequartz-5

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