第12話知らない声には気をつけよう
クレアシオンは真夜中森の中に来ていた。彼とエレノアは赤ん坊のときから一緒のベットで寝ており、エレノアが寝付くまで動けないでいたのだ。気がつくとエレノアが彼の服を掴んでいて、このような真夜中になってしまっていた。彼女が起きないよう、ゆっくりゆっくり服から指を外していき、シーツを代わりに握らせたが、材質が違うのか目を覚ましてしまい、もう一度眠るまで待ち、今度は服を脱いで抜け出してきた。
もちろん、今は服を着ている。裸で出歩くなんて恥ずかしい真似、アリアと出会った瞬間しか、したことがない。体を与えられたとき、服がなかったのだ。今でもクレアシオンは思う。あれは俺は悪くない、と。
静まった森のなか、一人でクレアシオンは立っている。時々、獣の鳴き声が聞こえ、草木が揺れる音がする。彼が魔力を手に集めようとすると、黒い風が掌に集まりはじめた。
「――やっぱり、魔力を使おうとすると、周りの魔素を取り込んで魔力に換えてるな……。保有魔力減らないし……。魔術使い放題だな……」
クレアシオンが魔力を使おうとすると集まる黒い風は空気中に含まれる魔素だ。保有魔力を使わないので魔法や魔術を使い放題だが、彼はそこに胡座をかこうとは考えていない。実際にアレクシスを創造した時、魔力枯渇をおこしていたからだ。
保有魔力量が多いに越したことはないと、彼は日々、魔力を使いきってから寝ていることを習慣にしている。
彼はアレクシスに周りを見張るように命じてから、これから創る眷属を考えた。
「情報収集、隠蔽、敵感知。……情報収集するのには実体がないほうが有利だな」
彼は基本、三日から一週間で問題を解決していたため、いままで、まともな情報収集していたかった。いや、要らなかった。敵が何人いようとも、どんな武器を用意していようとも、どんな敵だろうと【鬼神】の如くねじ伏せてきたからだ。だが、今回は違う。弱体化した上に、敵が多く、神を殺して力をつけた邪神と悪神までいる。
その上、自分の職業と称号はバレると人とも敵対する可能性すら存在している。情報一つで今後を左右されてしまう。そこで、二体目の眷属は実体のない情報収集に特化した魔物にしようと考えていた。
「眷属創造」
眷属のイメージが纏まったので、眷属創造を使う。実体がないので、能力を考えるだけでよかった。
「眷属を創造します。あなたの望む形は?」
無機質な女性の声が響く。そして、次々とイメージを伝えていく。あと少しで終わる、そんなとき、
『――ご主人様、あとは私に任せてください』
「ああ、わかった――」
――どちら様ですか?……つい任せちゃったが、誰だ!?
知らない女性の声につい、眷属創造を任せてしまったのだ。慌てるがもう遅い。クレアシオンが創造していた時点で完成はもうすぐだったからだ。
黒い魔法陣から紅い雷が迸る。魔法陣に黒い風が集まりはじめていた。アレクシスを創りだしたときより、保有魔力量が増えた為か、魔力枯渇は起こさなかったが、一気に持っていかれるため、少し立ちくらみが起きる。
魔法陣から一際強い光が溢れてくる。クレアシオンが目を瞑り、再び目を開けると、目の前に黒髪の妙齢の美女がいた。だが――
「――何でメイド?」
「趣味です。ご主人様」
生まれたばかりだよな?とか、色々言いたいことはあったが、クレアシオンは実体のない魔物を創ろうとしていたはずなのに、目の前には、実体のあるメイドがいた。これは今後――情報収集――に支障をきたすのでは?と思った彼は、
「とりあえず、チェンジ」
「無理です。一生一緒です」
チェンジを希望したが、目の笑ってない笑顔で却下された。確かに、眷属は主が死ぬまで眷属は死んでも三日で生き返るが、クレアシオンにも選ぶ権利があると言いたい。彼が望んだ能力でないと、貴重なスキルを一回無駄にしたことになる。そんな、彼の考えを読んだのか、
「私の能力は基本、ご主人様の望んだ能力です。しかし、【実体化】など、私の願いも入れさせて頂きました。私の勝手な行動お許し下さい。あの機会をのがせば、叶わぬ願いでしたので……」
そう、礼儀正しく、惚れ惚れするぐらい綺麗な礼を披露した。クレアシオンは情報収集、隠蔽、敵感知、鑑定さえ出来れば何も問題はなかった。それに、眷属創造が終わると変更は出来ない。進化するしかないのだが、望み通りの進化をすることはほとんどない。眷属創造が終わる前に申し出た彼女は賢いと言える。なぜ、口を挟めたかはわからないが……。
「それなら、問題はない。早速鑑定してくれ。ソフィア」
「かしこまりました。……ソフィア、ですか?」
途中まで事務的にこなしていた女性は、「ソフィア」と呼ばれて、クレアシオンは気づかないほどの小さな変化――初めて感情を見せた。それは、少し嬉しそうで戸惑いを含んでいた。
「ああ、俺に知識を与えてくれるから『ソフィア』だ」
「ソフィア……。分かりました。今日から私はソフィアです」
淡々と無表情でこなす会話にクレアシオンのソフィアへの印象は、冷たく、冷静で、どこまでも事務的ということだった。何事も淡々とこなしていく。彼が望んだ能力を使いこなすには、感情的より、理性的な方がいいが、それが彼女の感情を殺してしまった。奪ってしまったように感じてしまう。
――これは、少しずつ変えていく必要があるかもしれない。
クレアシオンは、アリアと出会うまで感情が無くなっていた。元々無いのと無くなってしまったのとでは違うかも知れないが、感情が無いのは寂しいと思い、ソフィアを少しずつ、感情を感じられるようにしようと彼は考える。
彼女がただ感情が表情に少ししか現れないだけで、よく見たらコロコロ変わっているのだが――
「では、ご主人様、鑑定を開始します」
ソフィアは初仕事で少し張り切っていた。
「あ、ああ、頼む」
クレアシオンは考え事をしていて、少し言葉が詰まってしまった。ソフィアはそんな彼の様子を気にすることなく。鑑定を開始した。
「鑑定」
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名前 クレアシオン=ゼーレ=シュヴァーレン
種族 ヒューマン
職業 魔王 Lv 1
ユニークスキル 鬼神化 九尾化 魔王化 傲慢 強欲 神器召喚《ヴェーグ》《???》 創造 魔素支配 糖気闘乱 眷属創造✖3 神器創造✖7 臨戦態勢✖1 眷属《アレクシス》《ソフィア》
エクストラスキル 武神直伝武術Lv 3 火属性魔術Lv3 水属性魔術Lv4 土属性魔術Lv5 風属性魔術Lv3 氷属性魔術Lv10 雷属性魔術Lv5 闇属性魔術Lv3 光属性魔術Lv3 聖属性魔術Lv5 無属性魔術Lv10 魔力支配Lv10
スキル 軽業Lv5 農作業Lv8 全属性魔法Lv10 魔力操作Lv10 魔力回復Lv10
称号 女神の剣 甘党 遣糖使 武神の弟子 魔神の弟子 神殺し(悪神、邪神) 道化 偽りの魔王 傲慢の魔王 強欲の魔王 暴食の魔王 神殺し(悪神、邪神)の魔王 神域の魔物の支配者 創造神のお茶飲み友達 女神の婚約者 創造の魔王 勇者の保護者
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クレアシオンの頭の中に直接、情報が流れ込んでくる。元々、ソフィアには、情報のサポートをしてもらいたくて、創造した。戦闘時にや声に出せない時、実体がない方が都合がいいからだ。ソフィアもそれがわかっていたからこそ、頭の中に直接、情報を送れるようにした。
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