我輩

山本 シン

第1話



我輩はカエルである、名前はまだ無い

卵から生まれた時、おたまじゃくしと言われていた

田んぼの泥水の中、たくさんの兄弟がいた

兄弟のほとんどは、鳥やトカゲ等に食われ

水が干上がり干からびた兄弟もいる

時には、人間の子供に網ですくわれ、何処かに連れて行かれたりもした

成長して、足が出て尻尾が無くなり

ようやくカエルと言われるようになった

水のないところでもある程度は、自由に動けるようになった

しかし、水辺より遠くに行きすぎて干からびる兄弟もいる

そしてまた、兄弟が蛇に食われている

雨が降ると、ゲコゲコなき相手をさがす

鳴き声に誘われて、道路に飛び出す兄弟がいる

雨が止んで晴れると、紙のように潰され干からびて道路に張りつく兄弟がいる

そしてその兄弟は、カラスに突かれ食べられる

カエルは食物連鎖の底辺にある

がしかし、遠いところには毒を持つ兄弟がいる

派手な色で、食ってみろぞと言わんばかり派手である

人も迂闊にさわれないぐらいの猛毒である

しかしながら、我輩には毒はない

何者かが近づき危険を感じた時、水に飛び込み逃げるしかない

だが、我輩には使命がある

それは、食べられることではなく

交尾してたくさんの卵を産み、子孫を残すことである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我輩 山本 シン @kaku4522

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る