5:アジト 一条

今の俺の前には人数分の、リュックと催涙スプレーと煙幕玉がおいてある。

ここは、表向きは画材中心の雑貨屋の、革命派”青狐”のアジト。

1年ほど前、今の俺らの住む地区、”白虎”の政治に不満を持った人間が集まってできたのだ。

今でこそ人数は”白虎”の人口の4分の1ほどいるが、できたころの人数はとても少なかった。

確かはじめたばかりのときは俺と美弥と那由と...くらいだったか。

(あのころはまだ”白虎”もいまほどではなかったんだが...)

あのころ何も考えずに若さと勢いだけで作ってしまった”青狐”がこんなに大きくなってしまうとは思いもしなかった。

(青かったな、俺。)


いよいよ明日は決行の日だ。


濃紺の空に弓張り月が浮かんでいた。







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暖かく,うす暗く。 櫻庭 春彦 @dawbrock

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