「 木漏れ日 の 春月 」

朝倉 ケンイチ

「 木漏れ日 の 春月 」

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誰かの ために


そっと 泣いてみる



十二単の 袂に 隠した


切なき 恋文の ように



そして 瞬きを 忘れた


わがままな 春風 の


ために




薄紅の 君が


上弦の月を 笑う




木漏れ日の 月光が


それを 受け止めて


静かに 鼓動を


照らす



お面を つけた 村人は


その 灯りの 下で


無邪気に 踊る




薄紅の 君を 囲んで




涙が 枯れる ころ


旅立ちの 歌が 流れる


それは 微弱な 迷い


そして 誘惑




時は 放たれた


舞い散る 花びらの 下


月光が 歩むべき 道を


誘い出す



赤い靴が その上を 


あるいて 行く



舞い散る 花びらが


その姿を 隠してゆく




宴が 終わり


誰も いなくなった 社を


青白い 月光が 照らす



もう 帰らない 人を


敬う ように・・・




   

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「 木漏れ日 の 春月 」 朝倉 ケンイチ @atomickenichi87

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