ツチノコこはんに行く

けものフレンズ大好き

ツチノコこはんに行く

 今日も一人でジャパリパークの遺跡を巡るツチノコちゃん。

 最近は少し寂しいと思うときもありますが、それでも日常は変わりません。

 そんなある日――。


「これは……!」

 

 その時見つけたたった1枚の紙切れが、ツチノコちゃんのその後を大きく変えるのでした――。


「これなんだが」

「どれどれっす……」

 ツチノコちゃんはその時手に入れた紙切れを見せるため、わざわざこはんちほーのビーバーちゃんの家にいきました。

 ビーバーちゃんとはそれほど親しいわけでもありませんでしたが、黒セルリアンを通しての出会いから、ビーバーちゃんがこういうことが得意なのは知っていました。

「私も見たいであります!」

「まあ意見は多い方がいいだろうな」

 興味津々で寄ってきたプレーリーちゃんにも、ツチノコちゃんは紙切れを見せます。

「これはなんでありますか?」

「分からん。お前らなら知ってるかとも思ったんだが……」

「とりあえず建物ではないみたいっすねー」

 ビーバーちゃんも首をひねります。


 そして――。


「作ってみたらどうっすか?」

「順序が逆だろ!」

「いや、構造も単純だし、作るだけならそれほど大変でもないと思うっす」

「私もやりたいであります!」

「……まあそこまで言うなら好きにするといいさ」


 こうして謎の紙切れに描いてあったは、解明される前に製作されることになりました。


『カジカジカジカジ……』

「・・・・・・」

 2人が木を囓ったり、木材を組み合わせている様子をツチノコちゃんはずっと見ています。

 2人の息はぴったり。

 そんな2人に、ツチノコちゃんは気になることがありました。

「なあ、お前ら違う動物なのに一緒に住んでて、困ったこととかないのか?」

「そうっすねぇ……」

「あんまりないでありますな」

「けんかとかしたりしないのか?」

「あー、それはたまーに……」

 ビーバーちゃんは恥ずかしそうに答えます。

「でも必ず仲直りするであります!」

「一人になりたい時とかあるだろ?」

「穴を掘っていて気付いたら独りだったことは未だに……」

「でもやっぱり独りは寂しいっすよ」

「・・・・・・」


 そうこうしている間に作業も終了します。


「出来たっす!」

「出来たであります!」

「ホント早いな……」


 一日がかりどころか、半日もかからずに紙切れに描かれていたものは完成しました。

「……作ってはみたものの、なんなんすかねこれ?」

「とりあえず座るところがあるので乗ってみるであります!」

 ビーバーちゃんとプレーリーちゃんは、板の両端についてる椅子に座りました。

 板の中心には支点があって固定されておらず、両端に乗った2人が動くと板も連動して動きます。

 つまりこれは……。

「おお、なんか楽しいであります!」

「プレーリーさん落ち着いてっす」

 プレーリーちゃんが座ったまま飛び跳ねる度に、ビーバーちゃんの身体が大きく上上下します。


 ――つまり紙切れに描かれていたのは、シーソーでした。


「わははははは!」

「ちょ、あはははは」

 2人とも夢中で遊びます。

 自分達をただじっと見ているツチノコちゃんにビーバーちゃんが気付いたのは、しばらく経ってからでした。

「ごめんさいっす! すっかり忘れてたっす……」

「いや、俺は別に」

「ツチノコ殿も乗るであります!」

「だから俺はぁ!」

 話も言い終わらない内から、ツチノコちゃんはプレーリーちゃんに強引に乗せられ、

「いくであります!」


 ぎこぎこぎこぎこぎこぎこ!!!


「うぉぉぉぉぉおお!」

 プレーリーちゃんの激しいシーソーに、ピット器官がおかしくなるほど揺さぶられるのでした。


「……死ぬかと思った」

「申し訳ないであります」

 しばらくしてプレーリーちゃんの変わりにビーバーちゃんが座り、今度はゆっくり上下に動きます。

「でもこれ持ち帰るは難しいっすね」

「作ったのはお前らだし、お前らにやるよ。俺はただそれがなんなのか知りたかっただけだしな。それに持ち帰っても――」

 一緒に遊ぶ相手もいないし、と言いかけて止めました。

 言えば自分が寂しがっていると認めることになってしまうから。

「じゃあここに置いておくから、ツチノコさんもいつでも遊びに来ると良いっす」

「そうであります!」

「いやでも……」

「俺っち思うんすけど、これを作った人はお友達が大好きだったんと思うんす。これは独りでは遊べないっすから。きっとこの紙があったのも、見つけた人にもっとお友達と仲良くしてほしかったんだと思うっす」

「折角ツチノコ殿が見つけたのに、ツチノコ殿が遊ばないなんて、なんだか可哀相であります」

「……そうかもな、独りじゃ遊べないもんな」

「そうっすよ、俺っち達とツチノコさんはお友達なんすから」

「お友達であります!」

 少しくすぐったいけれど、嫌な気持ちはしませんでした。

「……そうだな、また気が向いたら顔を見せるさ」

 ツチノコちゃんはシーソーから降り、少しニヒルな笑みを浮かべてそのまま帰――。


「ああ、そうでありました! ツチノコ殿は隠れてばっかりだったから、まだプレーリー式挨拶が済んでいなかったのであります!」

「あいさつ? 別にいまさら――」

「ああ、そういえばあれは未だだったっすね……」

 ビーバーちゃんの顔が赤くなります。

「え、どういうことだ?」

 戸惑うツチノコちゃんに構わず、プレーリーちゃんはがっしりとツチノコちゃんの顔を掴みます。


「いくであります!」

「いくって……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


                                  おしまい

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ツチノコこはんに行く けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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