サーバル故郷に帰る

けものフレンズ大好き

サーバル故郷に帰る

 日ノ出港を発ってから数年後、多くの出会いと別れがありました。

 そしてかばんちゃん達はついに、かばんちゃんと同じヒトと会うことが出来たのです。

 しかしかばんちゃんはサーバルちゃん達と共に暮らす道を選び、再びキョウシュウエリアへと戻ってきました……。

 

 ……などという感動的なことはなく、別れからおよそ数時間後、かばんちゃん達はひそひそと日ノ出港に戻ってくる羽目に……。


「いやー、まさかジャパリまんを忘れるなんてね!」

 サーバルちゃんは歩きながら、照れ隠しをするように何度も言います。

「本当にサーバルはおっちょこちょいなのだ!」

 その度にアライさんはサーバルちゃんに文句を言います。

「それを言ったらアライさんだって同じじゃない! 水だけ持ってきて!」

「アライさんはサーバルがジャパリまんを持ってくると思ってたのだ! 水だけなのはサーバルも同じなのだ!」

「まあまあ」

 その度にかばんちゃんが宥めます。

 こんな光景が日ノ出港から何回も繰り返されてきました。

 

 涙の別れから数時間後、かばんちゃんを追っていったサーバルちゃん達でしたが、ゴコクエリアに到着する前に、ジャパリまんがないことに気付きました。

 なんとサーバルちゃんもアライさんも、お互いがジャパリまんを持ってくると思い込み、水しか持ってきていなかったのです。

 フェネックちゃんは出発前になんとなく気付いていましたが、面白そうなので黙っていました。

 いちおうかばんちゃんはジャパリまんを持っていましたが、

「コレダケジャサーバルタチノブンマデタリナイヨ」

 というボスの話で、結局一緒に戻ることになったのでした。


「それにしてもあの時のマイルカさんには助けれたね。まだ会ったばかりだったのに」

 動けなくなったかばんちゃんのジャパリバスを港まで押してくれたのは、他ならぬマイルカちゃんでした。

 今度会ったときは必ずあの時のお礼をしようと、かばんちゃんは心に誓いました。

「そうだねー。それにしても、まだみなとに残ってたみんなに会わないようにするのは、流石に大変だっかなー」

「見つかったらばつが悪いからね……」

 かばんちゃんとフェネックちゃんはその時のことを思いだします。

 いつもは凝視するハシビロコウちゃんが、4人を見つけた瞬間、なかったことにしようと慌てて目を晒した優しは今でも忘れられません。


「でもみなとからさばんなちほーがあまり遠くなくて良かったよ。これなら最初からみなとに行けば良かったね」

「あの時はまだみなとに行くことが目的じゃなかったからね。でもぼくはそれが逆に良かったと思うんだ。色々なフレンズと出会えたし、だからこそあのセルリアンも倒すことが出来たんだから」

「そうなのだ!」

「そうだねー」

「……うん」

 最後にサーバルちゃんが笑顔で頷きます。

「ユウエンチガチカカッタノモコウツゴウダッタネ。ジャパリカフェイガイデモ、アトラクションニハスベテタイヨウデンチガアッテ、ジュウデンデキルカラ」

「……うん」

 少し微妙な笑顔でかばんちゃんは頷きます。

 電池を充電しようと密かにゆうえんちに行ったら、お別れライブをしていたPPPぺぱぷ全員にバレ、なんとか他のみんなに見つからないよう倒れるまで余計に踊ってもらい、注意を逸らしてもらった恩は、返そうとしても返せるものではありません。

「あのときのコウテイさん白目むいてたね……」

「それより私はフルルさんがどうも不安だなー。なにかあの人にバレた時点でもう致命的だった気がするよ」

「カクゴハシテオイタホウガイイヨ」

『・・・・・・』

「あ、もうすぐだよ」


 色々話しながら歩いている内に、さばんなちほーに到着したようです。

 みんなからもらったバスを元に戻すのも悪いので、今回は徒歩の旅でした。


「うみゃみゃみゃみゃー!」

 サーバルちゃんはバオバブの木を駆け上がります。

 ジャパリまんは木の上に隠しておいたのです。

「……あ!」

「どうしたのサーバルちゃん!?」

 かばんちゃんは慌てて木に登ります。

 以前のようにサーバルちゃんの助けがないと登れないほど、ひ弱なかばんちゃんではありません。


 でも、成長したかばんちゃんでもどうにもできない問題もあります。


「これは……」

「そういえば隠してたジャパリまん、ほとんどかばんちゃんにあげたんだった!」

「サーバルはドジすぎるのだ!」

 下で一部始終を聞いていたアライさんが文句を言います。

「どうしようかばんちゃん!?」 

「えっと……」

「ちなみに私達はジャパリまんの備蓄はないよー。いやあ、アライさんにそれを期待するのは酷だよねー」

「そうなのだ!」

「ははは……」


「本当にどうしようも奴らなのです」

「ダメダメなのです」


 そんなとき、不意に空の上から声がかけられました。

「博士、それに助手!?」

「お前達が戻ったことは、ゆうえんちにいたフレンズのほとんどが知っているのです」

「フルルがライブの最後ではっきりそう言ったのです」

「チメイショウダッタネ」

「……そうですね」

「とりあえずジャパリまんは改めて我々がどうにかしてやるのです。それぐらいちょいなのです」

「ちょいちょいなのです」

「よかった……」

 かばんちゃんはほっと胸をなで下ろします。

 しかし。


「その変わりにまた改めてお別れ会をするのです」

「諦めてお別れされるのです。そして主賓の料理を期待するのです」

「あはは……」


 こうしてかばんちゃん達は、みなとに残っていたみんなの2回目の別れの挨拶を受けることになるのでした。


 ちなみにその時は、およそ半分のフレンズが笑いをこらえるので大変でした。


                                  おしまい

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サーバル故郷に帰る けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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