第2話

夜の匂いがする。私は夜が好きだ。夜風が体を通る度に心が浄化され、星々の光が当たる度に抱きしめられているような気持ちになるからだ。この空間だけが今の私の支えであり、居場所である。今まで、見ず知らずの男に何度も抱きしめられてきたが、そういった彼らが内に秘めるものは確実なる本能であった。本能で私を抱きしめ、求める。彼らの心は私を必要としていないのだ。こちらも仕事と割り切ってそれに従っているが、終わった後のぐったりとした体の疲れや、余韻の快楽の虚しさにはいつになっても慣れない。快楽は毒だ。クスリのように私の心を侵し、壊していく。拒みながらも、目の前にある快楽にいつも溺れているのだ。私はきっと、前のような生活には戻れないだろう。頭の悪そうな金髪の男に会計をしてもらった後、私はすう、と息を吸い込んだ。ふう、と私のもやもやとした部分を吐き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイシテル ともみ @tomomi1030

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る