けものフレンズSS-僕とサーバルちゃんの夜

舎模字

第1話

 僕、かばんです。


 今日は、いっしょに旅してるサーバルちゃん。昼間のできごとはアニメで見れると思うので、夜のことを書いてみようと思います。



 そのサーバルちゃんなんですが……、夜もいろいろと騒がしいです。

 その……、夢遊病って言うんですか?

 よくあるのが、夜中、カリカリカリカリ……って物音がするからなんだろうな、と思って起きてみたら。

 サーバルちゃんがジャパリバスの隅っこで、爪とぎしてるんですよね。


 朝になって、サーバルちゃんに「覚えてる?」って聞くんですが。

「なんのこと?」って、まったく覚えてないんです……。


 それが一週間ほど続いたことがあったので……。アメリカオオコノハズクさんたちにも相談してみたんですが。


「ふむ……。サーバルも、慣れないちほーでの生活にストレスが溜まってるのかもしれないです。なにかストレスが発散できるようなことがあれば良いかもしれないです……」


 と言いながらこちらを神妙な目で見つめるばかりで……。良い案は浮かばないようでした。




 やっぱり、サバンナを離れた生活でストレスたまってるのかな……サーバルちゃん……。




 それで昨夜は……。かじられました。

 二の腕に歯形がくっきりと残ってます……。


「食べないでくださいー」

「食べないよ!」


 と、いつものあのやり取りがリアルになってしまいましたついに……。


「あの……。サーバルちゃん?」

「ん?」


 今日のサーバルちゃんは、いつもに増しての上機嫌です。

 やはりサーバルキャット……。野生の血がそうさせるのでしょうか?


「食べない……でね……?」

「もう、食べないよー!」


 やはり、本人には全く自覚が無い模様です……。




 でも、そんなことがあった日から。サーバルちゃんの夢遊病は治まったんです。


 今夜。いまもサーバルちゃんは、僕のとなりで穏やかな寝息を繰り返しています。


 サーバルちゃんの腕。昼間、おひさまの光をたっぷり浴びて、いまもぽかぽかした匂いのしそうなヒョウ柄をなぜてみます。

 気持ちよさそうに寝返りをうって、こちらに顔を向けましたが。

 起きる気配はありません。でもその顔には満面の笑みが浮かんでいました。


「サーバルちゃん……いつもありがとうね……」


 僕はその晩、こっそりジャパリバスを抜け出しました。

 その晩ジャパリバスは、見晴らしのいい小高い丘に留めてあって。

 僕はその青草におおわれた丘の頂きに寝転がって。夜空を見上げます。


 空は満天の星空でした。


 僕は、この夜空。ひろい世界にたったひとり居るような、その感覚を不思議に思います。

 僕はいまだ僕のお仲間。『ヒト』という種族に出会えていません……。

 この丘でひとりぼっちでここにいるのと同じくらい、僕はひとりぼっちなんです。


 でも、なんだか。


 一度に見渡すこともできない広い夜空。無数の星々。

 それよりもずっと小さいはずの丘でさえ、僕の手にはとうてい収まらない。


 それなのに。


 僕は不思議とさみしくないんです。

 この広い世界でひとりぼっちなのはそうだけど。僕はこの丘、空に見えるあの輝く星とだって同等。

 世界は僕をわすれない。ちゃんと一人前としてあつかってくれてる。

 そんな気がしたから。


 と、そんなことを思いながら夜空を眺めていたら。

 いつの間にか、僕のとなりにサーバルちゃんが座っていました。

 サーバルちゃんは言います。


「きれいな夜空だねー。すっごーい!」


 サーバルちゃんも夜空を眺めています。

 僕は、そんなサーバルちゃんの横顔を見ながら、思いました。


――そうだ、あの日。サーバルちゃんと出会えたから。


 僕はあの日と変わらず、相変わらずこの世界でひとりぼっちだけど。

 一番大事なフレンズはいまも僕の隣にいて。

 いっしょに夜空を見上げて「すっごーい!」って言ってくれる。




 だから僕は、ひとりで夜空を見上げていても、さみしくなんてない、なんて。

 そう思えるんだって、そのときわかったんです。


 ありがとう、サーバルちゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

けものフレンズSS-僕とサーバルちゃんの夜 舎模字 @shamoji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ