アカシックガーデン

猫田ヒラ社員。

第1話

「ふぬぬ。」


 ここは、名もなき書庫。場所も知れぬ図書館。

 その場所には名もなき作家が書いた本やら、有名な作家が書いた本だけではなく、名もなき人達が歩んできた記録や未来が書かれてある本があると言われている。


 そんな場所で、いろんな作家が書いてある本が高く陳列されてある本棚の一番高いところに陳列されている本を取ろうと、備え付けの脚立短い手を一所懸命に伸ばしている、一人の少女の姿があった。


「ふぬぬ?」


 その少女が目的の本に手をかけ、やったと気が緩んだ瞬間に、足元がぐらっとした時には脚立が倒れ、転倒。大量の本がその少女に降り注いだ。


「え、きゃーー!?」


 暗転。


 館内を時が止まったかのような静寂が包む事数秒。どさという静寂を切り裂く音がし、本の山の中から、先ほど本と共に落下した少女が姿を現した。


「ごほん、先ほどは御見苦しところをお見せして、すみませんでした。」


 姿がを現した少女は立ち上がると、自分が着ているゴシックドレスをばさ、ばさとはらい、咳払いをひとつ。

 

 そして、少女は語り出した。


「あら?こんな誰もこないような場所にお客さんなんて珍しいこともあるものね」


 来訪者は問う。君は?


「私ですか?そうですね、どこにでもいる少

 女A、とでも思ってください。」


 その容姿は、表情はどこか幼さを感じ、吸い込まれそうな黒い瞳をこちらに向け

 女の子はミステリアスの方かモテるといわんばかりのイタズラな笑みを浮かべてそう答える


 来訪者は問う。ここにはどんな本が


「どんな本をお探しですか?本は良いです。電子書籍もありますが、やっぱり本という媒体は読んでるて感じがして良いです。」


 淡々と本の素晴らしいさを来訪者に聞かせる。


「ごほん、先ほどのお詫びともうしますか、私が珍しい本を紹介させていただきます。」


 という少女の顔は先の出来事を思い出してか耳まで赤く、夕陽に照らされ艶やかさを感じ、映し出された影は女神のそれで、そして一冊の本を手にとり、その本の内容を淡々と語り始める。


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 一冊目:赤ずきん

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『それほど遠くわない昔話をしよう』


 その本の最初の一文がこう書かれている。


 とある森の奥深くにあると言われている一軒の家があった。


 その家には、おばあさんと年は10にも満たない一人の女の子が住んでいた。


 ある日、女の子は街に降りて花を買いに行き帰宅する。

 

 だが、それは唐突にやってきた。


 『違和感』


 いつもなら、帰宅後すぐにおかえりと優しく声をかけてくるのに、それがないことに気づいた女の子。


 『変化』


 帰宅後、何かを感じとった女の子は、そのままおばあさんが寝ている寝室へと足を進める。だが、ベッドに寝ているおばあさんの様子がおかしい事に気づいた女の子。


『これは、赤ずきんちゃんの話しに似ているて?でもね、この話しは少し違う。だって、これはの話しなのだから、』


 そう言って物語の続きを語り出した。


『心配』


 安否を確認する為におばあさんに声をかけたのだが、返事がない。さらに、女の子はベッドに近くのだが足下が濡れていた。


『血』


 真っ赤に染まるそれは、おばあさんの安否を確認するには十分すぎるぐらいだった。


 でも、わずかながらおばあさんは生きていた。なけなしの気力をつかいうしろとだけ女の子に伝え、完全に息を引き取る。


 だが泣いてる暇などなかった、おばあさんの最後のことばを思い出して、後ろを振り向くとそこには、見知らぬ人物がナイフをこちらに向かい振り翳している。


 そして、無情にも振り降ろされた凶器によって女の子の命はそこでついえた。


『走馬燈』


 女の子は、薄れ行く意識の中。考えた。必死に考えた。親のいない自分を、自分の娘のように大切してくれたおばあさんの事を。そんなおばあさんを殺した男の事を。なんのためらいも無く自分を殺した人間を。


『理解』


 今日の出来事を思い出した。街まで花瓶にいける花を買いに行った時のことだった。身知らぬ5の若者に道を尋ねられた事を。その中の一人に女の子の命を奪い、大切なものを奪っていった男と、今女の子の小さな身体に、何度も、何度もナイフを突き刺している男の顔が酷似している事を。


 その者が『御上オガミ』と名乗った事を。


鬼願キガン


 嗚呼、神様、天神様、どうか、この身に宿る魂が闇に縛られようとも、私の大切なものを奪っていった彼奴に復讐の機会をお与えください。願わくば神自らの死の鉄槌を下される事を望みます。そして。


『鬼』


 人ならざる者。人間の負の感情が具現化した者。


 にわかには信じがたい話しだが、童話のような都市伝説を信じて、大学のサークルの仲間であろう男性3女性2人のグループが曰く付きの家を探し森の中をさまよい歩く。


 草木をかき分け歩く、歩く、時にはたわいない会話をしながら歩く。


 どれくらい彼等は歩いたのだろう、道とも呼べぬ山道を


 それに、彼等はあきらめかけていた。


 無理もない話しだ、片道2時間以上の車での移動と舗装されてない道をひたすら歩いての移動、森の中の移動は、生い茂った木々のせいで方向感覚や時間経過の感覚すらうしなうのだから


 だがそれは、唐突に目の前に現れた。


『空間』


 夜の月明かりに照らされ、怪しさを増幅させながら存在感を主張するそれは、洋館とは程遠く、小屋というのが彼らの第一印象だろう。


 夜の森の異様なまでの空気の冷たさと、異様な雰囲気の建物が恐怖をつのり、浸入すら危ぶまれる空気のさなか、グループのリーダーらしき男性が意を決した様子で、それの扉を開ける。


 なんだこれとグループの一人がつぶやき部屋の中を見渡すと、テーブルの上には入れたてのコーヒーが人数分置かれており、まるで神隠しでもあったかのような光景が広がっていた。


 部屋に踏み込んだグループは、寒気を感じるもの、恐怖を訴えるものとわかれた。なぜなら場所そのもの異様な光景にあてられたからだ。その時。


『雷鳴』


 轟音と共に、眩い光が部屋全体を包む。だがそれだけではない、いるはずのない人間が突如として出現する。


『女の子』


 突如として彼等の目の前に現れた10にも満たないをかぶった女の子。その手には、刃渡り30cm程の包丁が握られており、その姿を見た彼等は、悲鳴を上げるもの、その場で腰をぬかすものとわかれた。


 そして、女の子は雷鳴がなる毎に近き、彼等にこう告げた。


『処刑宣告』


「おーかみさん、みーつけた」


 このあとは、凄惨たる光景が繰り広げられていた。場は、悲鳴を上げ、泣きじゃくり、許しを請い、だけど、無情にも女の子が持つ狂気が彼等を襲うのでした。

 首を斬られるもの、心臓を刺されて殺されたものとわかれ、気絶し首を斬られ死んだものは幸せだったのだろう。自分がなぜ死んだのか分からずに逝けたのだから。


 だが、扉の近くにでもいたのだろう。運良く逃げられた者が1人森の中を走っている。木々をかき分け、太い幹に足を取られながらも走る彼。


 あの子はいったい何者?なぜ、来る人数がわかった?なぜなぜなぜと彼の頭の中を疑問符が支配しながらも夜の森を懸命に走る。


 彼は、勇気を振り絞って1度後方を振り返る。だが誰も来ない。でも、彼は走る。涙や鼻水で顔を、ぐしゃぐしゃに汚しながら彼は走る。陸上選手に見せたら怒られる程のバラバラなフォームで彼は走る。

 狭い森を、ぬかるんだ道を、迫り来る恐怖から己の身を守る為に。どこまで続くか分からない森の中を。


 無情にも頭上の月明かりは、なにものかの道しるべの如く怪しくかがやいてるだけであった。


 そんな逃走劇にも終わりが見えた。自分達の乗ってきた車が見えたからだ。自分の車なのだろう。服のポケットに入れてあるキーを取り出し、ドアを開け運転席へ飛びのり、ドアを閉め、ハンドルに頭を埋め、呼吸を整え足は貧乏揺すりをし、自問自答しながら彼は心の平穏を保とうとしていた。


 だが、彼は知らない、恐怖したそれは音もなく近ずいてることを。もうすでに、逃げ場などないのだから。


 そう、それは唐突に痛みとして彼を襲い、彼は痛みを感じた腹部あたりを見ると、そこには刃渡り30cm程の包丁が刺さっているというより、この場合は、生えたという表現方法が正しいのだろう。彼の表情は、驚愕、恐れ、さまざまな感情が出ていた。


『慢心』


 彼は、いや、彼等は気づくべきだった。森に進入した時からずっと、狩人の罠に掛かっていた事を。仲間の一人にがいた事を。


 月明かりに見えたそれは、ただの光ではなく。そのものなのだから。


 それを証明するかのように、カーステレオから聞こえてくるニュースは、彼等の安否を確認するものではなく、その日、彼等が立ち寄った山岳地帯の天気予報だった。


『雨』


 彼等がこの事実を知る事は永遠にやって来ないのだから。


『回想』


 私と、私の大切なおばあさんが死んで、10年?20年?...もう、わからない。ずっと昔。私達を殺したあいつの顔さえも忘れた。けれど、ひとつだけおぼえてる事があるの。それは、あいつの名前。だから、同じ名前を持つ人間を殺して、殺して、殺す、殺す、殺す!そうすれば、いづれ辿り着く事を信じて、殺すの。


 '' おーかみさん、みーつけた''


 そして、彼の体から這い出たそれは、彼に再びあの光景と仲間達の断末魔の叫びの残響を残し、車内を彼女の頭巾と同じ色に染め上げたところで、この物語は終わるのだから。

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 再び、あの図書館へと風景が戻る。


 そして少女の手に持つ、開いた本の上に、青白い炎が灯り


「この話には、続きがございません。そう、まだ未完成のまま。読書好きには、これほど物哀しいものはありません。もしかしたら、人ならざる者が、人ならざる者に救いを求める話しなのかもしれませんね。だって、最高神である天照もまた。なのですから。」


 青白い炎を羽虫でも潰すかのように勢いよく本を閉じ、こちらに向き直り、


「この物語の女の子の魂を救うのは、この手の話しが好きな専門家にでもまかせるとしましょう。では、またのご来店お待ちしております。」


 少女の笑みはどこか懐かしさを残し、月明かりに照らされ妖艶さを増幅させ、写り出した影は死神のそれだった。


 閑話休題。


 とある都心部のアパートで、大声を上げ自室で目覚める男性が1人いた。


 その男は、目覚めると身体のあちこちをペタペタと何かを確認すかのように触り、悪夢から開放された事を安堵した。


 彼は、夢を見た。誰も知らない、自分でもなぜそこにいるのか知らない、図書館にいた夢を見た。その中で、この世の者と思えぬ程の絶世の美女と出会う夢を見た。


 夢は、まだ終わらない。彼は、彼女を見た瞬間に息を呑み、見惚れ、会話をする夢を見た。そんな、夢を見た。途中までは。


 夢の中で彼女は、1冊の本読み始めると、風景が一変する。図書館にいたはずの彼は、森に囲まれ、さらには、自分の知人達そっくりな登場人物と一緒に森の中を歩き、一軒の家に辿り着く。


 そこで、幼い女の子に次々に襲われ、なぜか、自分だけが助かり、森の中を逃走し、車の中で殺される。そんな悪夢を見た。


 だが、不思議と怖くわなかった。少女の甘く優しい声がそうさせているのかわからないが、ただ言えるのは。


 これは、自分の過去に対しての罰だとしたら、そんな気持ちすら湧いて来なかったのだ。


『過去』


 山岳地帯にある村の一軒の家に驚かすつもりで、侵入し、暴れられたので殺した。ただそれだけの話。


 誤算だったのか、最後、帰宅してきた女の子に見られたので、ついでに殺して2人を家の地下に埋めた。ただそれだけの過去。


 そして、殺した女の子の憎悪に歪んだ目を自分に向けられた事を思い出した。


 そして、怖くなって逃げた。現実から、悪夢から、逃げた。ただそれだけの罪。


 の、はずだったのになぜ、思い出させる?なぜ、あの子は、俺の過去を知っている?あーそうか、全部夢だったのだなと1人納得して、自分の部屋を出る。


 全て、夢のせいにして。過去から逃げるように車に乗って出かけると、ガソリンが減っている事に気付き、ガソリンスタンドへ行く。


 その後、ガソリンスタンドへ到着した彼は、車から降り、給油の合間、店舗スペースの自販機でコーヒーを買い、喉の渇きを癒した。


 店員の給油の終了の合図を聞き、代金を支払ったあと車に乗り込んだのだが、彼の風景が一変する。


 狐につままれたかのような表情をし、なぜ自分は森にいるのか?と疑問符が浮かび、そして、夢での出来事を思い出す。そして。


 誰もいないはずの後部座席から人の気配が、彼は恐る恐る、ルームミラー越しに後ろを覗くと、夢で見た小さな女の子と過去に自分が殺めてしまった女の子そっくりな子が乗っていた。


 彼は、まさかと思い後部座席の方を覗いた。だが誰もいない。これは、夢の続きだと思い車の前方へ視線を向けた。


 だが、忘れないで欲しい、恐怖は常にそばにいる事を


 ”おーかみさん、みーつけた”


『Fin』


 この文字が、本の空白部分に書かれた時再びあの図書館へと映像が変わり、そして、少女の手に持つ、開いた状態の本の上には、光の球体、オーブが現れた。


 その後、本の文字がオーブへと流れ、いや、オーブが文字を吸収しているという表現が正しいのだろう。そして。


 全ての文字が消え、球体の周りに神話文字らしきものがクルルと∞のかたちを取り、どこかえと消え去ると、本を閉じて、少女は語る。


「ようやく、見つけたのですね。これでまた、新たな魂へと昇華できます。では、良い旅路を。」


 その少女の手に持つ本のタイトルが


『循環•再生の書(憤怒)アカシック-ライブラリー』


 と神話文字で記載せれた後、再び違うタイトルに変わる。


「これで、また新たな物語が紡げます。では、またのご来店をお待ちしております。」












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