なぜ、かばんちゃんは百合ゲー廃人になったのか……

底辺さんかく

第1話 げーむせんたー(おんせん)

キタキツネから「たのみごとがあるから温泉のゲームセンターへ来てほしい」と連絡を受けたかばん

そこで待ち受けていたのは予想外な「たのみごと」で……


キタキツネ「……そうだよ。博士たちにプログラムとかを教えてもらって作ったんだよ」


かばん「すごいですねっ……でも、どうしてボクなんですか?」


キタキツネ「……なんとなく?」


かばん「あ、あはは……それで、そのゲームはどこにあるんですか?」


キタキツネ「これだよ。VRって言って、帽子みたいに頭にかぶってプレイするんだよ……」


かばん「へー……」


かばんは関心しつつ、キタキツネからヘッドセットを受け取り装着する


かばん「あ、あれ?なにも見えませんよ?」


キタキツネ「大丈夫。すぐに見えてくるから」


そう言った直後、かばんの視界に「キタキツネゲームス」というロゴが表示された


かばん「うわぁ!ほんとにすごいですねっ」


キタキツネ「……今回は体験版だよ。各フレンズのルートのハイライトを編集してあるからね。また終わったら感想を聞かせて」


かばん「は、はぁ……」


かばんは不安感と好奇心が同居した不思議な心情のまま、ゲームの世界へと入ってゆく……



【どきどき!じゃぱり学園はイケてるフレンズだらけ!?】


かばん(これがこのゲームの題名なのかな……?)


タイトルロゴの表示の後

~サッカー部のイケフレ先輩ライオンと、マネージャーのかばん~

と文字が表示された


ライオン『あ、かばんーっ!探したよー?今日は応援に来てくれてありがとねーっ!』


かばん(最初のハイライトはライオンさんなんだね)


ライオン『見ててくれたー?私の豪快なシュート!』


ライオン『……かばん、ありがとね』


ライオン『ヘラジカに負けて、サッカーを辞めようとしてた私を説得して、ここまで連れてきてくれて……』


ライオン『ヘラジカに勝てたのも、じゃぱり杯で優勝できたのも……ぜんぶ、ぜんぶ……』


ライオン『……へへへへ。私ね、この試合に勝ったらかばんに伝えようと思ってったことがあるんだー』


ライオンがかばんに近づく。その瞳は獲物を前にした肉食獣のそれであった

ゲームと分かっていても、かばんの鼓動は自然と早まってしまう


ライオン『私の女になれよ……かばん』


ライオンは低い声で言った


かばん(!?!?)


かばん(な、なに!?いまの感じ、ボクの心がドクンって……///)


そして、画面が暗転する


かばん(ん?今のでライオンさんの分は終わりなのかな……?も、もっと見たかったような……)


余韻に浸るかばんに構わず、次のハイライトへとゲームは移行する


~PPP最強のイケフレ、イワトビペンギンとかばんP~


イワトビ『プロデューサー……いや、かばん』


イワトビ『アイドルとプロデューサーだからとか、ファンを悲しませないためだとか……そんなのはちっぽけな言い訳だった』


イワトビ『本当は怖かった……かばんにフラれるんじゃないかとか、かばんを幸せにできるのかどうかとか……』


イワトビ『でも!もうそんなロックじゃない考えはやめた!』


イワトビ『自分の気持ちにウソはつかねぇ!かばん!私と結婚してくれっ!!』


かばん(はわわわわわわ……///)


かばん(ゲームって、たーのしーかもぉ……///)


陥落寸前。いや、既に陥落しているかばんを相手にイケフレたちの攻撃は止まらなかった


~一途な幼馴染、ハシビロコウ~

ハシビロコウ『……私は、かばんをずっと見てるよ。例えあなたの瞳に映るのが私じゃなくても、ずっと、ずっと見てる』


~科学部のマッドサイエンティスト、コノハ博士~

コノハ博士『……こんなにも世の中には知らないことに溢れていたなんて、知りもしなかったです。だから……かばん、その……一生かけて私にもっともっとたくさんのコトを教えろです』


~百戦錬磨の恋愛番長、キュウビキツネ~

キュウビ『私に落とせない女の子なんていない、恋なんて酷く退屈なモノ……そう思っていたわ。でも、今は、あなたが欲しくて欲しくてたまらなくて、胸が張り裂けそうなの……千年生きてきて、初めて知ったわ。これが、恋、なのね』


かばん(ボク、ずっとゲームしてたいなぁ……///)


かばん(ふふふふ。次のフレンズは誰かなー)


~やんちゃな大親友、サーバル~


かばん(あ、次はサーバルちゃんだ!)


サーバル『えへへ。嬉しいな。まさかかばんちゃんと両想いだったなんて……!』


サーバル『かばんちゃんと旅してる間も、きっとかばんちゃんは私のこと、親友としか思ってないんだろうなって……この気持ちはずっと隠しておかなくちゃって思ってたのに……』


サーバル『……嬉しくても、涙って出るんだね。へへ』


サーバル『ねぇ、初めて会ったとき、かばんちゃん「食べないでください」って言ったよね』


サーバル『今日は特別な夜だから、あえて言うね』


サーバル『食べちゃうぞ❤』


かばん(サーバルちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁんっっ!!///)


もはやかばんはゲームなしでは生きていけない身体になりつつあった

しかし現実は非情である……


キタキツネ「はい。体験版は終わりだよ」


その声と共に、かばんのヘッドセットは外されて強制的に現実に戻された


キタキツネ「どうだったかな……?個人的にはまぁまぁだと思ってるんだけどね」


かばん「……」


放心状態のかばん


キタキツネ「かばん?大丈夫??」


その時、部屋の扉が唐突に開かれた


サーバル「あー!!かばんちゃんこんなところにいたー!もう!探したんだよ?」


ラッキービーストにかばんの居場所を聞き、探しに来たサーバルであった。


かばん「……!!」


サーバルの存在を認知した瞬間、かばんの瞳はギラリと光る


かばん「サーバルちゃん!」


サーバル「え、え?どうしたの?」


かばん「ボクを食べて!!」


ハァハァとした息遣いのかばん。サーバルは困惑する


サーバル「え、た、食べないよ!」


かばん「食べて!」


サーバル「食べないよ!!」


かばん「食べてぇっ!」


サーバル「食べないってばー!」


その光景を見守りつつ、キタキツネは悟る


キタキツネ(ゲームのやりすぎはほどほどに……)



おわり

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