( `ー´)ノ<サムライメイドでつかまつる!
ちびまるフォイ
サムライの終身雇用開始
「侍のメイド?」
「そうそう。騙されたと思って雇ってみろよ。日常が一変するから」
そんな友人からの提案に乗る俺も相当だが、
サムライのメイドという響きに好奇心を刺激されて雇ってみることに。
「拙者、本日からお世話になるサムライでつかまりまする」
「お、おお……」
そして、まさか女だとは思わなかった。
ここでメイド要素を出してくるのか。
「主、では拙者が掃除を行いまする」
「あ、ありがとう」
「主、靴を温めておきました」
「ああ、悪い」
「主、ご就寝の間は拙者が見張っているで候」
「やりすぎだーーー!!!」
メイド侍はメイドの業務をこなすが、どれも古い慣習にのっとって行う。
食事はどれも古いものだし、洗濯も洗濯板でやるから非効率。
なによりこっちが見ていて息が詰まる。
「やっぱり雇うんじゃなかった……」
「せ、拙者では役不足で候か!?」
「……えーーっと……」
「しょうがないで候……。拙者は現代の文化のいろはも知らぬ故、
これまでどこに仕えても結果を出せなかったで候……」
「いや……その……」
「主に必要されなくなった侍は去るべし。お世話になりつかまつりました」
「待て待て待て!! もうちょっと様子を見よう!!」
女の涙にほだされるとは俺もまだまだ甘い。
そんなわけで侍メイドが家で働くようになった。
最初こそ炊飯器に刀を抜いたり、自動ドアに妖怪の気配をうたがったりと
サムライならではのギャップで苦しんだりもしたが
いまとなってはすっかり慣れて語尾がおかしいだけの一般人にまで落ち着いた。
「サムライ、お前もすっかりなじんだな」
「そうで候か? これも主のご指導ご鞭撻があってこそで候」
「その口調は治らないんだな……」
「主、次はなにをすればいいで候?
拙者は主の力になれていると最近は思うようになったので候!」
ちょうどサムライの肩越しに、男友達の顔が見えた。
友達は顔を真っ青にして行ってしまった。
何かあったのかと思ってすぐに電話をかける。
「もしもし? どうしたんだよ、俺の顔を見るなり逃げ出して」
『できたんだな……』
「は?」
『オレを置いてけぼりにして彼女を作ったんだな!!』
「ちがうって、あれはサムライメイドで……」
『オレに気を使ってウソをつかなくていい!
あんな風にしたしげに話す女子は彼女に決まってるだろう!!』
「えええええ」
電話が切れた。
なんで野郎に彼女ヅラされなくちゃならないんだ。
「誰だったで候?」
「ああ、友達だよ。俺に彼女ができたもんだと誤解して落ち込んでた」
「せ、拙者はなんてことを!!!」
「えっ」
「拙者が主に近づきすぎたせいで友情を破壊してしまった!!」
「ちょっ……」
「主の交友関係に傷をつけてしまうなんて……侍としてあるまじき失態!!
切腹しかないで候!!!」
「こっちもめんどくせぇ!!!」
サムライは自分の小刀をとって、白装束に着替えていた。
懐に忍ばせていた遺書も片脇においている。
「思えば、主に仕えて拙者は緊張感を失っていたで候。
主君に仕える身でありながらも一線を越えてしまう失態……。
拙者の切腹に免じて許してほしいで候」
「待てって! 俺は全然気にしてないから!」
「それでは拙者のけじめがつかないので候。
主には介錯をお願いつかまつりまする」
サムライメイドは完全に切腹ムードを整えている。
どうすればいい。
サムライに切腹を辞めさせて、かつ友達の誤解を解く方法……。
「そうだ!」
俺は友達に電話をかけた。
「では、主。これまでお世話になりましたで候!!」
「待った!!」
電話が終わると、サムライを引き留めた。
「お前、これから合戦があるというのに切腹する気か?」
「合戦……!?」
「主に仕える身でありながら、これからはじまる戦に主君を丸腰で送るのか?」
「そ、それは……」
「サムライであるなら、その身を主君のためにささげて見せろ!!」
「はい!! 拙者間違ってましたで候!!」
サムライは小刀を置いて切腹を諦めた。
二人で向かった先は……。
「王様だーーれだ! サムライちゃーーん!!」
友達の主催する合コン会場だった。
俺が合コンに参加する意思を示せば、友達への誤解も解けるだろう。
そして……。
「主、これが現代の合戦なので候か?」
「ああ、男と女が知略をめぐらせて戦う現代の戦場、それが合コン。
合コンの"合"という字は合戦からきているんだ」
「なるほど……!! 拙者、主のためにつくすで候!!」
俺とサムライメイドとの生活は続いていった。
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