📩【From 篠原 綾子】

【To 丸井 倫太郎】


丸井さん


昨日はすみませんでした。

急にメールの添削をしたり、変なことを喋り始めたり、

きっと驚かれましたよね。


もしかしたら、今後も同じようなことがあるかもしれ

ませんし、お伝えさせてください。

私が執行部に入った理由について。


実は、私も本社に来る前は、丸井さんと同じく地方の

支店で働いていました。少し、言いづらいのですが、

私はそこで上司からセクシャルハラスメントを受けて

いました。


最初は、そこまで大したものではありませんでした。

でも、私が何も言わずにいたのが良くなかったのだと

思います。『篠原はそういうことを気にしない奴』と

いう空気が出来上がってしまい、周囲の人間も注意を

するどころか、便乗するような雰囲気になってしまって

いました。


もう会社に行きたくない。もう辞めたい。そう思って

いたとき、私を助けてくれたのは、書記長として支店に

打ち合わせにきていた清洲さんでした。


清洲さんは声を上げ、組合として大きく取り沙汰され、

その上司は懲戒となり、私は本社へ異動になりました。

そして、その上司が退職した、という話を聞いたのは

私が本社に来てからすぐのことでした。


もちろんその上司に対して、今でも嫌な感情はあります。

でも、退職したと聞いて、私は後悔しました。

最初にちゃんと自分の意思で拒絶していれば、ここまで

大きなことにはならなかったんじゃないか、と。


清洲さんにはとても感謝をしています。

それでも、やり方によっては、もっと穏便に、誰もが

傷つかずに済む方法があったかもしれません。

なにより、私自身がもっと上手くやっていれば、と。

問題が起きた後で対処するのではなく、起きる前に

防ぐことができれば、と。


私が執行部に入ったのは、そう思ったことがきっかけ

です。できることなら、芽が大きくなる前に防ぎたい。


いきなり長文のメールを送りつけて、ごめんなさい。

ただ、今後も一緒に仕事をしていくなかで、お伝え

しておきたかったのです。


これからも、どうかよろしくお願いいたします。



商品開発部 篠原綾子

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