果てたはずで




あの人は九龍を思わせる

揺らぐネオン管と

行き交う薄汚れた服たち

じめった空気に

ほのかに暗い部屋の中

頽廃するはずの空間が

眼前に現れる

つくなった違法建築物が頭に浮かんでは消える

ちゃちな街々が

どうしてか懐かしい

そこに住んでいたと思うほど

阿片が懐かしく

壊れたコンクリが懐かしく

伸びきった枝が懐かしく

がしかし

立つのは交差点の真ん中だ

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