第2話 告げる

「行ってきまーす」

玄関先で声を出すと、ドアを開ける。

その際に、自分の新しい道を塞いでる扉を開け、

また一歩前進する為に道を歩んで行った。


外に出てみると、太陽は光り輝いている。

まるで、僕にスポットライトを当ててくれてるみたいに―。


学校に向かう途中に、新しい友達に出会った。

僕と同じ、1年B組のクラスのマドンナ的存在の

福庭佑美ふくばゆみさんは優しくて、性格もおっとりしていてまさに女性の象徴。

クラスの男子の心を掴ませるのも得意種目に入っているらしく、クラスの女子がコツを聞きに来るが毎日絶えなく大変そうな顔をしていた。

何か会話を弾ませようとする物の勇気がなくて、佑美さんと会話もしないまま、学校に向かうと次第に周りに人が集まり始めた。


「佑美さん、今日もお話聞いてもいいかな?」


「はい! 勿論もちろんいいですよ!」


見ていると、頭の中とは裏腹につい口だけ先に動いてしまっている様子が多々あるけど、佑美さんは決して断りはしなかった。


今日も十六人程の人が話を聞きに来るらしいけど、佑美さんは表では、何処と無く笑顔で優しく人に接していた。

そんな、佑美さんに僕は憧れた。


学校に着くと、真っ先に自販機に向かった。

四列ある中でも最上階で一番端っこのコカ・コーラを購入するボタンを人差し指で強く押した。

すると、下に落ちてきて「ガンッ」っと大きな音を廊下に響き渡らせた。

取り出し口を上にあげて、キンキンに冷えた缶のコカ・コーラを取り出した。

一気に半分を飲み干すと、今日の学校生活が始まる。

そんな、気がした。


全部を飲み干すと、ゴミ箱に入れて教室に向かう。

静けさの廊下と一転して声と笑い声が飽和した教室。

教室に入ると、匠に昨日の教えられた告白ゲームのことについて、伺った。


「匠! 昨日教えてくれた告白ゲームについて、詳しく教えてよ!!」


「別に良いけど、気になったか?」


「うん、面白そうだったら一度でいいから、やってみようかな・・・と」


「まず、告白ゲームとは名前の通り相手に告白をするんだ。 でも、ただ告白するだけではダメだよ。 告白してその一日間だけ二人は恋人同士という設定になる。 デートはもちろんOK! そのまま、恋に落ちたら大成功。 なっ? 簡単なゲームだろ」


「なるほどね、でも、相手はどうやって決めるの?」


「日付と番号さ。 今日が仮に七日だとすると相手は女子でいう七番目の人とお前。 たまに、今日の日付から二倍する時もあるからそこは、知っといてね」


「案外簡単なゲームだね、このゲームのお陰で相手のことをよく知れるし、次第に恋に落ちれば付き合うことだってできる! メリットばっかだ! それで、いつからやり始めるの?」


「明日からって、一応考えてるんだけど・・・」


「いいね! じゃあ、皆に伝えるところから始めないと」


そう言うと皐月は、黒板前の中心にたって告白ゲームのことを皆に伝えようとした。

前に立って、数秒が経過した。

息を大きく吸い、吐き出した。

心が落ち着いたら、勇気を振り絞って声を出した。


「皆さん、聞いてください! 僕さつきと匠君の提案で明日から、告白ゲームというものをここのクラスで始めてみようと思うんですけど、皆さんは参加してくれますか?」


突然伝えられたから皆は戸惑い話を理解するまでに、少し時間がかかった。


「どういうものか、分からないからゲームのルール的なのを聞いてから、考えるよ!」


クラスメンバーの一人が声を上げると、次第に皆も「まずは、ルールを聞いてから考えてみる!」

と、言ってくれた。


さっき、匠に教えてもらったことを僕は時間を掛けて丁寧に皆にルール告げた。


ルール説明が終わると皆から、高い評価を貰った。


「それなら、普段喋らない人でもこれをきっかけに話せたり皆と仲良く出来るようになるからいいな!」


「私もそのことについて、賛成です」


クラスのマドンナ佑美さんが第一声を上げた。

凄いのは、その後からだった。

佑美さんが声を上げた途端、さっきまで反対してた人達が、一転して賛成し始めた。


クラス中は盛り上がりさっき言ってたことが吹き飛ばされた様子がしてくる。

だから、皐月はさっき言ったことをもう一度繰り返して言った。


「この、ゲームを作ったのは紛れも無く匠くんです!」


言うのにもう、緊張は無かった、怖さは無かった。

逆に楽しさがあった。

皆の前で発言する機会なんて高校ではあまり無い。

でも、これを機に皆の前で発言をしていきたいという気持ちが高まった。


「そうです、僕が作りました! でも、僕だけではありません。 皐月君と一緒に作り上げました」


「えっ?」


明らかに匠だけが作り上げたのに、匠は一体何を考えて今の発言をしたのか頭の中に疑問が浮かぶ。


「たしかにゲーム自体は俺が作ったけど、皆に発表するのは俺はしていない。 皐月が勇気を振り絞って言ってくれた。 発表するまでを含めて告白ゲームを作ったことになる!」


匠の口からこんな言葉が出るとは、誰も予測できなかった。

長年居て匠が僕さつきを想う気持ちが少しずつ変わっているのかもしれない。

何にせよ、いい方向に向かってくれればそれでいいと心底からそう思った。


クラス中が盛り上がる中廊下で先生がこちらに向かってくる跫音にいち早く気づいたのは皐月だった。

一刻も早く皆に伝えないとクラスメイト全員が怒られることになる。


「皆! 先生がもうこちらに向かってくる跫音がします! 直ちに席についてください」


怒られるなんて、死んでもゴメンだ。

最低限先生の前では優等生を演じないと。

皐月の言葉を聞いたクラスメイト達は一斉に大きな音を立てるけども机から椅子を引いて座る。

その次に、椅子を手前に引いて背筋を伸ばした。

最後に後ろの腰掛のところは拳二個分開けておくとさらに良いと教わった。


ガラガラガラ。

スライド式の古びたドア。

表面の木は日に日に剥がれ落ちていく。

けど、そんなことでドアを変える余裕なお金はこの学校には無いから何年経ってもこのままだ。

一層の事ドアを蹴り、壊して新しく変えてもらうのもありかもしれない―。


「皆さんおはようございます。 今朝は寒くて先生布団からすぐに出られませんでした。でも、カミさんが布団を引っ張り出して怒鳴り散らし始めたから先生は怖くて眠気が無くなり目がパッチリです!」


河乃かの 幸村ゆきむら先生。

先生という職業に置いてはまだまだ底辺の人間。

いつも、朝にくだらない話を聞かされる。

でも、別に嫌ではなかった。

所々面白い面もあるからだ。

けど、今日はそんな話を求めていないけど聞いておこう。

そう思った今日だった。


授業が始まりおよそ三十二分経過した時には匠と段々集中力が切れてきて、黒板を見ずに周りをキョロキョロ見渡していた。


一階の校舎から見えるのは木と草ぐらいだった。

けど、じっくり観察をしているとそこら中に虫で溢れかえっていた。

どこにでもいる虫を徹底深く観察して見たいがまだ授業だ。


虫さんたちに「授業が終わったら、すぐ行くね」と伝えた。

言葉を理解できないと思うが気持ちが伝わる。

少しの可能性を感じ虫さんたちにそう告げた。

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告白ゲーム @nekonigiri

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