おバカな御伽草子(笑)

幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕

お台1『果物、その他(厨ニ病)、腐』

「ふぁ〜……あ"〜ねみぃ……」

「眠過ぎてコケなはるなや〜?」

「うるせっニヤニヤすんな」

「あはっあはは、ははっあはははははははははは……」

「うわぁ……無いわー」

「ちょっ引かへんでや!?」

相変わらず読めない横の厨ニ病……もとい胡桃裂憂破くるみざきゆうはにツッコミを入れつつ、眠気と格闘する俺、播摩碕 驪竜はまきしりりょうは授業終わりの放課後、部室への足取りを急ぐ。

俺らの部活──それは表名『動画・漫画研究部』……裏では『腐男子萌えの巣窟』という異名を持つ部活だ。部員は俺と憂破と後二名──他の二人は委員会で遅くなると聞いている──の計四名だ。因みに四人だけだと部として成り立たないので、しっかり名前を貸してくれる影武者幽霊部員が存在する。

「りりょー……今日も、その、ヤるん、か……?」

おっと俺が説明しているうちに部室の前に着いたらしく、憂破が上目遣いで俺を見てくる。


──相変わらず可愛いヤツめ……


と心の中で呟きながら俺は返事の代わりに憂破の薄紅色に染まった唇を塞ぐ。

「! んっ……ふ、ぅ……」

憂破が弱々しく俺の袖を掴む。舌を入れて更に喘がせる。

「ん、むぅ……ふ……」

満足して口を離すと憂破がけほけほっと咳き込みながら、涙目で咎めるように睨む。

憂破の目はこう言っていた。

『人が来そうな所でサカるなや、アホ……///』

俺はそんな憂破を見て、思わずニヤッと口角が上がる。

『それは部室では襲って良いって事か?』

『アホ、そういう事やない……/////』

俺達が部室の前で話しているとアイコンタクトしていると、俺達が歩いてきた廊下の向こうから身長差の激しい二人組が歩いてきた。

片方は深く惹き込まれそうな濃い蒼色の髪をした、長髪の男子。名前は幽谷澪埼ゆうこくれいき。学年で三本指に入る、頭脳派。ただ、コイツの欠点と言えば口下手な上に毒舌である事くらいか……。お陰で周りからは『怖いヤツ』という印象が強い。

澪埼の横を歩いている、澪埼より頭一つ分くらい低いのは、漆黒の髪をした少年、薊深由翔あざみなおだ。澪埼程では無いにしろ、コイツも髪が長く、肩の辺りで一括りにしている。

「あ、部長に副部長」

「……………………部室前でサカるな、野生動物」

「お〜委員会お疲れ〜……っておいコラ澪埼、会った瞬間に毒を吐くな毒を」

「相変わらず澪埼は口が悪いな〜」

四人でギャーギャー騒ぎながら部室に入る。中にはDVDやカセットテープ、衣装など様々な道具が置いてある。──主にヤる時に使用されてるヤツだが。

「ふぃ〜……肩凝った〜」

「…………………部長今回の議題は?」

「じゃーん☆ 良くぞ訊いてくれました、今回の議題はこちら☆」

「いやいやいやいや〜……星いらんやろ星は」

ジャジャーン☆っと驪竜がホワイトボードに書いた議題は──

『壁ドンと相手を悶えさせるセリフ☆』

「「「…………は?」」」

「いやいやいやいや〜『は?』じゃなくて、もっと反応してよー?」

「………………………遂に脳が腐ったか、このエロ脳味噌野郎が」

「いやいや腐って無いよー? ただ皆が悶える姿が見たくて見たくて〜」

「〜〜〜ッ! いてこますぞ!?/////」

「部長がここまで腐ってるとは思いませんでしたねー?」

「………………………由翔に近付かないでくれ、変態菌が移ったら困る……」

「ちょっ!?///」

「キャー憂破怖ーい♪」

「怖がってへんやないかい!」



──そして暫くわちゃわちゃした後、本題に戻る。


「あっはっはっ〜楽しかったな〜」

「………………………お前だけな」

「りりょーだけやないかい、楽しんだんは」

「部長の変態性を垣間見た……」

机に座り一服しながらそれぞれ言う。

「ンじゃまァ、落ち着いた事だしやりましょーか、一応部活だから部長命令って事で♪」

「なぬっ!?」

「うわは〜……出た部長の無茶ぶり発言〜」

「こんな時だけ、部長って肩書きに威張るな、アホ」

「あ〜は〜は〜♪ せーの、さーいしょーは〜」

「「「グー」」」

「残念パーだよ(笑)」

「なぬっ!?」

「うわぁ……」

「おろろ〜……?」

悪知恵の働く部長の作戦に、俺ら三人はあっさり引っかかる。

部長が決めた順番は澪埼⇒由翔⇒部長⇒憂破。何故この順序なのかはさて置いて。


「…………………………由翔の、悶えさせて……?」

「……ッ!//」

澪埼は表情を変えずに澪埼は由翔を壁ドンして、耳許で由翔に甘えるような声で囁いた。滅多に甘えないので澪埼にしては頑張った方だろう。その証拠に耳が燃えるように赤い。

「…………………………ジ、ジッと見るなよ……反応に困るか、ら…………」

「かーわい♪チュッ……」

「んっ!? んぐ、ん……ッ……ケホッケホ…」

「おっと、思わず。…………澪埼、一生縛って閉じ込めて逃げられないように、愛してやる……だから、俺のモノになれ」

「〜〜〜〜〜ッ!/////」

不意討ち壁ドンからの、低音ヴォイス。滅多に照れない澪埼が顔を真っ赤に染め上げて、アタフタとする。

「ば、ば……」

「ば?」

「由翔の……バカぁぁぁぁぁ……」

「あ〜ぁ……ありゃ一時間は隅から動かねぇぞ」

「澪埼が珍しいよね〜」

「うるさい!///」

顔を真っ赤にして隅に逃げた澪埼がケラケラ笑っている、驪竜を睨む。

その反応をニヤニヤ笑いながら眺めると、満足したらしく驪竜が立ち上がる。

「さて次は俺だな♪」

「りりょーに出来るんか、この間澪埼に壁ドン教えてもらっとったやろ?」

「出来ますー憂破俺を舐めんなよ?」

ニヤァッと口角を上げて驪竜は憂破を立ち上がらせる。

そしてそのまま壁に押さえ付けてグッと顔を近づける。

「…………今日甘い声で啼いてくれよ、仔猫ちゃん?」

「に"ゃ"っ……/////」

「あははかっわい♪」

ぺろっと憂破の耳をさり気なく舐めながら、驪竜はご満悦のようだった。

「うぅぅ……」

「可愛かったなぁ?」

「……ッ!」

グイッと驪竜のネクタイを引っ張り憂破が驪竜を見る。

「おーおーどうしたァ?」

「……ッ…………絶ッッッ対今日悶えさせてやるわ……ッ!/////」

「あら過激なこって〜?」

憂破は言った後すぐにそっぽを向いた。その耳が赤く染まっている。その様子をニマニマ驪竜が笑いながら眺め、憂破の首筋をつつーっと撫でる。

ビクゥッと躰を震わせ憂破がチラッと驪竜を上目遣いで見る。


「そう簡単に逃げられると思うなよ〜?」

「そうだぞ、澪埼〜?」

「に"ゃ"っ!?/////」

「……ッ!/////」









こうして腐男子の時間は更けていく──……

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