貴女に声が届くまで

@Kukkiii

理不尽な世界。

 学校生活。

 それは、僕たち学生にとっては自信の世界であり。全てである。

 学校で居場所を失えば、それは世界で自分の居場所が失われたのと同じ意味をもつ。

 そんな学校なのだが、カーストと呼ばれる順位分けが全員黙認の元行われている。

 カーストとは、学校におけるその者の価値であり。グループ分けをする際に、カーストの近いもの同士で組むなどの、学校生活には必然的に出来てしまうモノである。

 中には自信の知らぬ所で出来ている者や、カーストとは何か知らぬ者もいるだろう。だが、そんな者達ですら、知らず知らずの内に自信のカースト順位と同じ者とグループを組んだりするのだ。

 云わば、カーストは強制。

 覆る事の無い、学校における絶対的な制度なのである。

 もし、カースト全ての学校生活において、最底辺カーストになってしまったら………

 


 月曜日。

 土曜日、日曜日の安寧を一日にして忘れさせる悪魔の日である。この日は特に行きたくない場合が多く、逆に今日さえ行ってしまえば明日からも行きやすくなるのである。

 そんな日の朝早くに僕は学校に来ていた。シンと静まりかえっている廊下を素早く歩き、一番奥に位置する職員室へと向かう。

 職員室にたどり着いた僕は、軽くノックをし扉を開ける。すると数名の先生方が此方を見てくるが、すぐにもと見ていたパソコンや資料に目線を戻す。

 僕は少し大きめな声を職員室に響かせる。

 

 「失礼します、二年二組 茶臼さきゅうケイゴです! 安堂先生に用があってきました!」

  

 「はい、どうぞ~。安堂先生なら……あ、ああ。奥の生徒指導スペースにいるよ。行ってみな」


 近くにいた、定年間近のお爺ちゃん先生にそう言ってもらい。言われた通りに職員室の奥にある指導スペースに行ってみる。

 ……いた。しかもタバコを吸ってるし。


 「安堂あんどう先生、茶臼ケイゴです! 昨日先生に言われた通りに来ました!」


 「おうおう、お前は元気が良いなぁ……。その元気を少しだけでもクラスで発揮できればなぁ……」

 

 「余計なお世話です。それよりも、早く本題に入ってもらいたいんですけど……」

 

 「んん~、分かってる。分かってる。そんなに慌てんなって、人生そんなに生き急いでも良いことねぇぞぉ~?」

 

 話を戻そうとする度に、話を脱線させてくる安堂先生。そろそろ僕の我慢も限界が…と、思い初めていると。安堂先生も流石に不味いと思ったのか数度咳払いをし、やっと本題に入る。

 

 「まあー、お前も分かっている通り金曜の件の事だ。金曜は時間がなくて、話を聞けなかったからなぁー、その代わり今日の朝早くに時間をとってもらった。悪いなぁー?」

 「金曜日の件について、僕は無関係ですし。いつもこのぐらいの時間帯には学校にいるので別に問題無いですよ……?」


 「……そうか、やっぱり金曜の件は、お前無関係なんだな? んん~ー……、さてさてどうするべきかなぁ。なんか良い意見ないかぁ?」


 ……この先生大丈夫? さっきから僕にばっかり意見を求めて来る上に、自分はカップラーメンを食べ続けてるだけなんだが。本当に考えてるのだろうか?


 「先生、金曜日の事に関しては特に何もしなくても良いと思います。正直何もしないでくれた方が僕としては助かります」


 「あーぁー、そうだなぁ……分かった。だが、次にまた同じ事があったら言えよ?」


 「はい。では失礼します……」


 僕は、そう言い残し職員室を出た。

 教室への帰り道、来た時よりもチラホラと登校してきた生徒たちが見えた。

 教室に着くと既に数人の生徒がいたが、特に気にせず自分の席につき、持ってきていた文庫本を取りだし読み始める。

 本に集中してきたと思ったら、周りの生徒からコソコソと嫌な話し声が聞こえてきたので、少しだけ意識をそっちにやる。すると……


 「うっわ……でた、最底辺野郎」

 

 「あー、あれが例の……」


 「プフッ、まじ同じ空気吸うなっての……」


 と、言った声が聞こえてくる。

 ……またか。

 そう心の中で溜め息を吐き。特に気にしないフリをしながら始業の時間まで本を読む続けた。

 


 昼休み。

 この時間帯は、僕にとっての一番危険な時間帯だ。普通なら、やっと嫌な授業から解放される喜ばしい筈なのだが、残念ながら僕には当てはまらない。

 その理由は…………


 「おい、茶臼……! ちょっと話があんだけどよっ!!」


 僕は、元々クラスにおける立ち位置が低かった。しかし、少し訳ありな金曜日の一件により僕はカースト最底辺へとなったのだ。

 ……しかも、カースト二番手から目をつけられるオマケ付きで。はぁ。


 「……なにかな、金色こんじきヒカル君?」

 

 「あ? なにかな、じゃねぇーだろ! 分かってんだろ、俺がお前に聞くつったら金曜の事に決まってんだろーがよっ!!」

 

 ……おおう、至近距離の大迫力だな。

 この金色は、ちょい悪系というか、ちょっとヤンチャ系なのだ。その上でイケメンだからモテる。だからクラスカースト二位なのだが……。

 要するに、外見はかなり恐い。そんな奴に迫られたら脚がガタガタしちゃうのは仕方ない事だ。うん。

 僕はなるべく平静を装いつつ、当たり障りのない返事をかえす。


 「ああ、うん。ゴメンね金色君。金曜日の事は…………」


 「ハキハキと喋れやこの野郎っ!!」

 

 即一蹴。

 ……ええええぇ、最後まで話を聞こうよ。

 とは言え、この金色ヒカルがここまで怒りをあらわにするのも無理はない。何故ならばこの金色ヒカルの彼女……だと勝手に金色自信が思い込んでいた、金色ヒカルの片想いの相手が僕に対して…金曜日の放課後…………


 

 …………告白してきたんだから。

 


 と、まあそこまで簡単な話ではない。



 そう、この話には続きがあるのだ…………



…複雑でややこしく、もの凄く面倒な話が。

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