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『申弥』
その名前は自然と口をついて出た。
『申弥』
親とはぐれた子猫。アパートの裏で、体を震わせぴいぴいと鳴いていた。
『申弥』
手を噛まれながらもなんとか捕らえ、病院に連れて行った。虫下し、ワクチン、検査――母を説得して代金を払わせた。
『申弥』
段ボールとクッションでベッドを拵えた。その安らかな寝顔に一生かけて守ると誓った。
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