7

『申弥』


 その名前は自然と口をついて出た。


『申弥』


 親とはぐれた子猫。アパートの裏で、体を震わせぴいぴいと鳴いていた。


『申弥』


 手を噛まれながらもなんとか捕らえ、病院に連れて行った。虫下し、ワクチン、検査――母を説得して代金を払わせた。


『申弥』


 段ボールとクッションでベッドを拵えた。その安らかな寝顔に一生かけて守ると誓った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る