第3話 朝

朝が好き。


つんと冷たい空気も、ちょっと残ってる眠気も、

少し固めな朝の情報番組の声も。


んんっと背伸びをする。何せ、ついさっき起きたばかりだ。まだまだ眠い。

やかんに水をためて、火にかける。

インスタントの味噌汁を取り出そうとして手を止めた。

…やっぱり、お味噌を溶かしたお味噌汁を作ろう。

やかんにいれたお水は、もう沸騰しかけていて、

熱くもなく冷たくもなく、ちょっとだけあったかそうだった。

お鍋に入れ替えたら、また火にかけなおして、沸騰するのを待つ。

しゅんしゅんって言い始めたらお味噌を用意して、お湯の中に溶かしていく。

じわじわーってお味噌が溶けていくこの瞬間が楽しい。

朝からあまり包丁を使いたくないから、あらかじめ切っておいたお揚げと冷凍の刻みねぎを、お味噌汁の中に入れる。

ちょっとだけ煮込んだらできあがり。


自分のマグカップに注いで、ふうふうって少し冷ましたら一口。

失敗した。まだ、ちょっと熱かった。

まだ熱いお味噌汁を、ちびちびと飲みながらテレビを眺める。

ニュースはやっぱりいいことのほうが少ない。


ふと気が付けば、朝ご飯の支度をする時間になっていた。

今日の朝ご飯は何にしようかな。

昨日は頑張って和風にしたから、今日はちょっと手を抜いて洋風にしよう。

卵を割って、焼く。

白身に火が通って白くなってきたら、お水を入れて少しだけ蒸してあげる。

よし、今日もおいしそうな半熟の目玉焼きができました!

残ったお水を拭き取ったら、ベーコンとウインナーを焼く。


そのとき、おはようって声がした。

おはようって返した後、珍しく早起きだねってからかってみた。

いいにおいがしたから、とまだ眠そうな声で言う。

ああ、なるほど。それで起きてきたのか。

もうすぐでできるから、顔洗っておいでって言えば、洗面所のほうへ歩いて行った。

毎日こうなら、起こさなくて済むんだけどなと思いつつ、お皿を準備して盛り付ける。

よし、今日も完璧。


ご飯をよそって並べたら、ちょうど帰ってきた。

おいしそう。

ちょっと目の覚めた声で君が言う。

いただきますの挨拶をして、ご飯を食べる。

おいひい。

満足そうに笑うので、それはよかったと僕も笑う。


お天気のお姉さんが今日は晴れだって言ってる。

よかったね、洗濯物乾くよって僕が言うと

そうだねえって君は言う。

朝が弱い君のために僕が朝ご飯を作るようになって、もうどれくらい経っただろうか。

今日も満足そうに、君は朝ご飯を食べる。


明日はなにを作ろうかな。

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1日 空詩堂 @sora_bass

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