第2話 夜

夜が好き。


暗い中で光るお店の看板。街灯、屋台からこぼれる明かり。

いろんなご飯の香りがして、おなかが空いてくる。

居酒屋の店員さんが、何人も客引きしてて、酔っぱらってる人たちがはしゃいでる。

ああ、自転車置き場に倒れこんじゃった。ちゃんと元に戻さないとだめなんだよ。


空は暗いのに、目の前はこんなに明るい。

本当に今は夜なんだろうか。

少し肌寒い風だけが、夜だという実感を持たせてくれる。

友人と遊んでる学生らしき子たち

会社の同僚や先輩と歩いてる人たち

一人で家路を急いでる人たち

今日は、私も家に帰ろう。


電車に乗って都心部から離れると、あたりはしんと静かになる。

相変わらず冷たい空気

暗い空

暗い道を照らす街灯

まばらな人

一人の私


誰かと一緒に夜道を歩くのは好きじゃない。

夜はやっぱり、一人でいてこその夜だ。

街灯が照らす道を歩く。

一つ、二つ、街灯を超えていく。

私は今、本当にここに存在しているのだろうか、

今ここにいるのは幽霊になった私だったりして。

それはそれで面白いなと思う。


誰も気が付かないうちに幽霊になって、

誰も気が付かないうちに、この闇に吸い込まれていったら

どれだけ、楽なんだろう。

どれだけ、素晴らしいだろう。


目の前を照らす街灯が嫌になる

夜の道は、自分が今歩いているもう一つの道のようで

果てしなく思えて気が滅入る。


ぐう、とおなかが鳴った。

そうだ、ご飯食べなきゃ。ぼうっとしていた思考現実に引き戻される。

買い物して帰ろう、今日のご飯は何にしようかな。

久々にカレーライスにしようか。うまく一人分が作れるといいけど。

まぁ、作りすぎたって明日食べればいいんだから。


明日は寄り道して帰ろ。

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