第3話 危機
人類の危機と言えば何を思うだろう?
隕石の衝突?
バイオテクノロジー?
人工知能の逆襲?
突然の自然災害?
軽く上げればこのどれかは思うだろう。
だが、『神』はこのどれでもない危機を伝えた。
それが、地球外生命体の侵攻だ。
突拍子もないよな。
俺もそう思うよ。
全容はもっと突拍子もないがな。
「人類の危機とは簡潔に言うと、『人類が滅亡する危険性のある出来事である』と、いう事を分かって頂きたい。私は全知全能ではない。なので、その可能性が高い。としか言えないんだ。」
可能性であって必ずしもそうなるとは限らない。
そう言いたいのだろうが、俺にはそうなる可能性は限りなくゼロに近いが、希望的観測をすればゼロとは言えないと、読み取れる。
「そして、危機とは地球外生命の侵攻だ」
「ふざけ……」
俺は一瞬だけ怒りがこみ上げた。
だが、ここまでも事をしたヤツが妄言を吐くとは思えない。
冷静になり、話を聞く。
「距離はかなり離れている。だが、確実にこの星に来るだろう」
そこは確定しているのか。
運命か定めってやつかね。
「私はこの星が好きだ。めちゃめちゃにされたくない。……そして、これは私の我儘だ。だから君たちには正直に話すと決めた」
感情が読めない。
これが感情を込められたモノなら少しは感情を揺さぶられたのだろうが、機械的な声では感情を読む事が難しい。
例えるなら有名なボ〇ロにエロい言葉を言わせてエロいと思えるか? って事だ。
猛者な人たちならそれでエクスタシーを感じるだろうが、ほとんどの人はエロイとは思えないだろう。
逆に気持ち悪いとか意味が分からないって感情が出るだろう。
今の俺の気持ちを簡単に表現するなら近いのがそれだな。
好きだ。
などと言われても何も響かないのだ。
「私には向かってくる侵略者に対して時間を稼ぐ事しかできない。だから、君たちに侵略者を退治して欲しいんだ」
なるほど。
「その者たちの力は今の人類の総合力を持っても太刀打ちできないだろう」
なるほど。
「お願いだ。世界を救ってはくれないか?」
……。
「答えはすぐに出す必要はナボグウ」
殴れないのか。
これ。
「何をする」
おや?
声に少しながら感情が読み取れる。
怒ったか?
「すまない。手が滑って殴りかかってしまった」
「……お前は私に反発した者だな」
「分かるのか。流石は自称『神』なだけはある」
「私は神だ!!」
空間が歪んだ。
怒らせる気はなかったんだがな~。
その言葉を臆せずに言えるのもスゴイな。
俺なら黒歴史だ。
「最初は許そうと思たんだ。謝罪をしたからな」
「……」
「だが、俺はお前に従う事はできない」
「人類が滅ぶぞ」
「何も俺だけって訳じゃないだろう? 俺は戦いってのは苦手なんだよ。足手まといにしかならないと思うし」
「お前はなぜ……」
「俺は、社会不適合者だ。お前もこの身体を見てそう思うだろう? こんなボヨボヨの腹で何が出来るってんだ」
俺は引きこもりだ。
体重は八十キロに近い。
顔もブサイクで彼女もいない二十八歳。
もう少しで魔法使いになれるな。
「私に従えば望みを叶えるぞ?」
「……それは魅力的だな。首を縦に振りたいよ。でも、ダメだな」
「なぜだ……。なぜなのだ……」
「俺は心まで醜く生きたくない」
これでも一人で稼ぐ事は出来ているからな。
「そうか……」
自称『神』が消えた。
意識が急に遠くなる。
……何かが聞こえる。
「合格おめでとう」
……また、ハメられた。
俺は意識を手放した。
強くなって人類を守るんですか? イナロ @170
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