きみかげのはな 弐
その言葉を最後に、女はスッと姿を消してしまいました。本当に姿が薄れて消える物なのだなあと僕は驚き呆れるばかりで、
さあ、ここまでが怪異ですよ。先生。探偵小説宜しく、挑戦を受ける気はお有りではありませんか。果たしてこの女の正体や
先に女も言った通り、僕に
成る程。確かに僕は長々とあの本の話をしていましたが……。いけませんね。もっと上手に隠すべきでした。
ええ、そうです。僕は思い立って、灯りを点けると買ったばかりの本を開いて精査してみたのですよ。何故って、その日に限って起きた変わった事と言ったらその本を購入した事位でしたからね。
古い本でしたが、中はなかなか綺麗な物でした。そうしてはらはらと
『押し潰されて苦しゅう御座います』
女の声が、頭に蘇りました。人間からして見れば美しさを保つ為の工夫でありましょうが、花からすれば
押し花を取って、そうして大家に頼んで庭に埋めてもらったが最後、あの女はぴたりと現れなくなりましたね。礼くらい言ってくれても良い物だと思うのですが——まあ、ああ言う物に望みを掛けても痛い目を見そうではありますし。
はい。怪異の話はこれで終わりです。
え? そんな、そこいらの草花の声がいちいち聞こえるだなんて事はありませんよ。僕の目は確かにあれ以来少し変わった様ですが、それでもそこまで人離れしては居りません。そんな風だったらとっくに気がおかしくなっているでしょうよ。
偶々、ああして女の姿で現れたから少しばかり情を掛けたばかりの事です。それだけですよ。まあ、時折
いえね、今度の休みに僕は友人を訪ねる用事があるのです。気のいい奴なのですが、趣味が昆虫採集。採った虫をピンで刺して、防虫剤を入れて、
先生。僕は、一体どうすれば良いのでしょうかね?
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