見守っているよ、ずっと。

──こんなところにいたのか、お前。


『…え?』


ずっと探してたんだぞ?…ったく。


『ずっと探してた…?』


お前はいつも、すぐどこかへ行くんだから。


『なんで、なんで…っ』


周りの迷惑を考えて行動しろよ?


『…まさか、来るとは思わなかったんだよ』


…いきなり引っ越すって聞いたときは、流石に驚いたぞ?


『それは…ごめん』


「もうここにはいられない…」ってさ。


『うん、あの時はちょっとカッコつけちゃった』


…なぁ。


『ん?』


そっちでもちゃんとやっていけてるか?


『やっていけてるよ。なんとかね』


俺達、友達だろ?いつでも相談しに来いよ。


『…』


相談しに…来れたら、いいな。


『…そう、だな。相談しに行きたいよ、俺も』


何て言うのかな…その、えぇと…


『?』


今は元気か?


『おう、元気だぞ』


…最初に言う言葉だったよな。ごめん。


『ははっ、確かにな』


なんか、何を話したらいいか分からなくて。


『ふぅん…お前は、元気なのか?』


俺はもちろん元気だぞ?最近、犬を飼い始めたんだ。


『犬?あぁ、お前動物好きだもんな』


凄く可愛くて人懐っこいぞ!お前にも見せてあげたかった…いや、今度連れてくるよ。


『そりゃいいや、楽しみにしてる』


あまり大きな声で吠えないようにしないとな。近所迷惑にもなるし。


『俺は元気の方が好きだけどなぁ』


お前は元気の方がいいって言うけど…周りの迷惑を考えろってさっき言ったよな?


『あ…ごめんなさい』


…あぁ、お前に伝言があるぞ。


『え?伝言?』


まずはお前の元カノからだな。


『はっ?あいつから?』


「今はまだ会えないけど、きっとまたあなたのいる町に行くからね」…だって。


『…』


お前思いのいい子じゃんか。正直に言って羨ましい。


『…やんねぇからな』


次は先生とかクラスメイトからだな。何か同じようなことを言ってたからまとめて言うとな。


『うん』


「俺達は違う場所で暮らしててもお前のこと忘れてないからな!出来るだけこっちにも遊びに来いよ!」…だってさ。


『相変わらずうるさいのは変わらないのな』


お前はクラスのムードメーカー的な存在だったから、皆元気なかったお前を心配してたぞ?


『…最後は、笑顔で別れたつもりなんだけどな』


俺が長期休み利用してお前を探すって言ったとき、すげー勢いで皆に伝言頼まれて。


『それは…』


あー…思い出すだけで疲れる。


『…お疲れ』


お前からは特にないか?伝言。


『俺からは…なんだろうな』


元気だぞってことだけ伝える?


『そうだな、そうしてくれ』


…そう伝えておくよ。


『…ありがとう』


あ、これさ、プレゼント的な感じで。


『!綺麗だな』


綺麗な花だろ?元カノさんからだよ。


『えっ…』


毎日育てている花を見たとき、お前、花綺麗だなって相手のこと誉めたそうだな。


『そんなこと言ったようなそうでもないような…』


お前はどれだけ上から目線なんだよ。


『うっ…』


そーゆーの多分嫌われるからしない方がいいぞ。


『…はぁい』


後は…そうだな。


『…』


お前のお母さんとさっき会ったよ。


『母さんと?』


凄く驚いてたぞ。こんな所に来てくれたのかって。


『まぁそりゃ、驚くわな』


家に上がらせてもらったよ。お茶も貰った。


『まさか、俺の部屋には入ってないよな?』


お前の部屋にも勝手に上がったぞ。相変わらず汚ねぇな、お前の部屋は。


『入ったのかよ…しかも汚ないって指摘された…』


お土産として俺が折った千羽鶴置いといたから。


『千羽鶴?不器用なお前が?』


感謝しろよ?俺不器用なりに頑張ったんだから。


『はははっ!頑張ったのか。俺のために…』


一匹しかいないから、少し悲しいけどな。


『そりゃ悲しいな。もっと作ってやれよ』


…もっともっと話していたいけどさ、もうすぐ日も沈むし。


『…』


俺は帰るよ。


『…』


お前が好きだと言ったあの町へ。


『…そっか。…』


…ん?


『…おい』


何で今頭を撫でているかって?


『おぅ。何してんだ?』


困惑してるな?


『当たり前だろ』


いや、お前の頭固いなぁって。


『そりゃそーだ』


…馬鹿になんかしてないからな?


『別にそんなこと思ってねーよ』


俺はお前と出会えたから、今の自分があると思っている。


『…』


今も。


『…』


昔も。


『…』


この先も。


『…』


ずっと。


『…』


俺はお前に感謝しているよ。


『…俺も、お前には感謝してる。感謝してもしきれないくらいに』


だからさ。


『…』


お願いがあるんだ。


『…?』


そんなに難しい頼みじゃないよ。


『難しくない頼み…?』


ただ、1つだけ。


『…』


お前にお願いするよ。


『…俺に出来ることなら』


…俺とずっと一緒にいてくれてありがとう。


『それは俺もだよ。こんな俺と一緒にいてくれてありがとう』


俺はお前の事をずっと忘れないから。


『俺も、お前のこと絶対に忘れない』


『…例え、今、俺の魂が消えてしまったとしても。絶対に』


…だから。


『うん』



    「どうか、傍で見守っていて。」



















































「...さよなら。」









そう言って。









あいつは。









俺の名前が書かれた大きなその石から。









手を。









…離した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どうか側で見守っていて。 星鎖 @siro1212

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ