どうか側で見守っていて。
星鎖
ようやく見つけた俺の友人へ
──こんなところにいたのか、お前。
ずっと探してたんだぞ?…ったく。
お前はいつも、すぐどこかへ行くんだから。
周りの迷惑を考えて行動しろよ?
…いきなり引っ越すって聞いたときは、流石に驚いたぞ?
「もうここにはいられない…」ってさ。
…なぁ。
そっちでもちゃんとやっていけてるか?
俺達、友達だろ?いつでも相談しに来いよ。
相談しに…来れたら、いいな。
何て言うのかな…その、えぇと…
今は元気か?
…最初に言う言葉だったよな。ごめん。
なんか、何を話したらいいか分からなくて。
俺はもちろん元気だぞ?最近、犬を飼い始めたんだ。
凄く可愛くて人懐っこいぞ!お前にも見せてあげたかった…いや、今度連れてくるよ。
あまり大きな声で吠えないようにしないとな。近所迷惑にもなるし。
お前は元気の方がいいって言うけど…周りの迷惑を考えろってさっき言ったよな?
…あぁ、お前に伝言があるぞ。
まずはお前の元カノからだな。
「今はまだ会えないけど、きっとまたあなたのいる町に行くからね」…だって。
お前思いのいい子じゃんか。正直に言って羨ましい。
次は先生とかクラスメイトからだな。何か同じようなことを言ってたからまとめて言うとな、
「俺達は違う場所で暮らしててもお前のこと忘れてないからな!出来るだけこっちにも遊びに来いよ!」…だってさ。
お前はクラスのムードメーカー的な存在だったから、皆元気なかったお前を心配してたぞ?
俺が長期休み利用してお前を探すって言ったとき、すげー勢いで皆に伝言頼まれて。
あー…思い出すだけで疲れる。
お前からは特にないか?伝言。
元気だぞってことだけ伝える?
…そう伝えておくよ。
あ、これさ、プレゼント的な感じで。
綺麗な花だろ?元カノさんからだよ。
毎日育てている花を見たとき、お前、花綺麗だなって相手のこと誉めたそうだな。
お前はどれだけ上から目線なんだよ。
そーゆーの多分嫌われるからしない方がいいぞ。
後は…そうだな。
お前のお母さんとさっき会ったよ。
凄く驚いてたぞ。こんな所に来てくれたのかって。
家に上がらせてもらったよ。お茶も貰った。
お前の部屋にも勝手に上がったぞ。相変わらず汚ねぇな、お前の部屋は。
お土産として俺が折った千羽鶴置いといたから。
感謝しろよ?俺不器用なりに頑張ったんだから。
一匹しかいないから、少し悲しいけどな。
…もっともっと話していたいけどさ、もうすぐ日も沈むし。
俺は帰るよ。
お前が好きだと言ったあの町へ。
…ん?
何で今頭を撫でているかって?
困惑してるな?
いや、お前の頭固いなぁって。
…馬鹿になんかしてないからな?
俺はお前と出会えたから、今の自分があると思っている。
今も。
昔も。
この先も。
ずっと。
俺はお前に感謝しているよ。
だからさ。
お願いがあるんだ。
そんなに難しい頼みじゃないよ。
ただ、1つだけ。
お前にお願いするよ。
…俺とずっと一緒にいてくれてありがとう。
俺はお前の事をずっと忘れないから。
…だから。
「どうか、傍で見守っていて。」
「...さよなら。」
そう言って。
俺は。
あいつの名前が書かれた大きなその石から。
手を。
…離した。
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