第6話

「……ついたか」


現在地、京都。

島根から遠路移動してきた京子達。

出雲に対象はいないと判断。対象が育った街にいる可能性のほうが高いと結論づけた京子達は京都に来ていた。

そしてそこは京子の生まれ育った地でもある。

惨劇が生まれた地でも___


「まさか、再びこの地に足を踏み入れるとは思っていなかったな」

京子は自嘲するように嗤った。

「京子の故郷は…ここ、なんですよね?」

躊躇いがちに神谷は訊く。

「ああ」

「あ、の京子さん?京子さんは宿で待っていても構わな」

「あ?」

「いえ!なんでもありません!」

新谷め、余計な気を使いやがって。

確かにここは私にとって忌まわしき思い出の地。

だが、これは任務。

余計な感情移入などしない。

「…行くぞ」

「は、はい!」


京子達はまず、宿泊先である宿へと来た。

「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました~」

大きな旅館であるそこは、入るとたくさんの女中達が京子達を出迎えた。

「今日予約していた新谷です」

「あぁ、新谷はんご一行な。おおきに」

旅館の女将であろう女性は、丁寧にお辞儀をした。

その見覚えのある姿に、京子は眉をひそめ、目をそらした。

「京子さん?」

「なんでもない」

しかし女将は

「京子……。貴女、あの…京子ちゃん?」

女将は勢いよく立ち上がったかと思うと、京子の顔を両手で包み込んだ。

「黒い髪に黒い瞳。光が入ると赤く見える瞳も、なんも変わっとらん…。貴女、京子ちゃんやろ?」

チッ、バレたか。

「…女将さん」

「やっぱり!京子ちゃんやない!」

女将は久々の再会に興奮気味だ。

「…よく、分かりましたね。私が京子だって」

最後に会ったのは、もう10年くらい昔の話だぞ。

「そりゃ分かるさかい。うちは京子ちゃんのこと、ほんまに心配しとったんやえ?」

「……」

心配、ね。

「それに京子ちゃん。昔と全然変わっとらんもん。ほんま、立派にのうて……」

女将は涙ぐみながら、私を見て微笑んだ。

そんな女将の姿を見ても心一つ動かない私は、やっぱり、昔とはずいぶん違うだろう。

「京子さんと女将さんは知り合いだったんですか?」

「ああ、まあな」

驚く新谷に対し、その横にいる神谷はなんだか難しい顔をして突っ立っている。

「…?」

なんだ。なぜ、そんな顔を…。

「…まあ、立ち話もあれやし、奥へ案内するさかい」

次見たとき、神谷はいつものようなヘラヘラとチャラそうな男に戻っていた。

さっきの難しい顔をした神谷が気になったが…


…気のせいか?


「さ、ここやえ」

案内された部屋へと入るが、その部屋の広さと豪華さに京子達は唖然とする。

「…新谷、こんなところよく予約できたな」

「…いえ、こんなすごいとこ予約した覚えは…」

ということは

「ああ、うちが勝手に変更させてもろたわ。大丈夫や、料金はいただかんからなぁ」

やっぱりか。

昔から女将は、おせっかい…いや、気の利きすぎるときがあったからな。


「さ、座って」

促されるまま、座布団の上に座る。

全員が座ると、女将が口を開いた。

「…昔話でも、しよか」

「…!」




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憎愛 @20010410

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