あとがき
はじめましてこんにちは。ゆにわ荘102号室の藤辰です。
このたびは「"真説"少女仙機譚~花よ、花よ~」をお読みいただきありがとうございました。
この話は2013年ごろ発表の短編集『少女仙機譚短編集~迅雷のヴァルリッツァー』に掲載された話に加筆修正を加えたものです。
少女仙機譚という話は、もともとはもう一人の作家とのシェアワールドとしてモデルした作品でした。ただいろいろとあり作品がこれ以上増える事も無く、またもう一人の作者との設定のズレなどから一つの作品群としては成り立ちにくくなってしまったという経緯があります。
今回『真説』と題名を改めましたのは、今一度藤辰作品として再構成をし、矛盾のない一つの世界を作り上げたいという考えがあったからなのです。
さて、そんなわけでもともと二人の作者の脳みその中を詰め込んだような作品になる予定でしたので、私自身も少女仙機譚の世界には。当初それまでにいろいろと空想を働かせていた登場人物や設定などをふんだんに盛り込み作品を組み立てていきました。
例えば現在公開中の『晴天のヴァルリッツァー』。これは確かに『少女仙機譚』としてプロット段階から作成していった話ではありますが、一方で昔から頭の中にあった『劣等剣士がエリート剣士に打ち勝つ話』という大まかなあらすじが影響している面もあります。物語の中に出てくる『クロとヒール』という女性と男性の人工知能は、名前こそ違うものの藤辰が学生時代に書いた短篇作品に出てくる、『主人公の夢の中に出てくる二人の別人格』という設定から持ってきたりしています。
『晴天のヴァルリッツァー~奮闘編~』では、コルダ、ジオ、マイノモミジというキャラが出てきますが、これも過去に空想したキャラクター達がもとになっています。コルダとジオは昔描いたイラストから設定を持ってきましたし、マイノモミジは昔遊んだTRPGのPCから持ってきたりしています。
そしてここからが本題。今回の作品の主人公『梨本森野』はその最もたる例と言えるキャラクターです。
元をただせば中学時代。『主人公を守るSPの話』とプロットも書いていないような妄想があり、いつか小説に書こうと思っていた物語がありました。それは結局実現しなかったのですが、『梨本森野』というキャラクターは名前と容姿だけが独り歩きし始めます。
高校の終り頃に絵を描き始めた時、一番初めに自分の中で「上手く描けたな」と思えたのが、梨本森野でした。金髪でロングヘア―で、少し細身だけど健康的な少女。そのデザインはその後、十数年間変わらず藤辰に描き続かれることになります。
大学時代に作ったHPでは看板娘をやり、社会人になってからハマったMMOではPC名として活躍する。自分の中では『梨本森野』と言う名前は自分の娘の名前に近い物があって、MMOの時は自分が『梨本森野』と呼ばれるのが最後まで慣れませんでした。余談ですが、お店もやっていたので『店主』と呼ばれることが多かったりします。
しかし、彼女のビジュアルが出来てからもすでに10年近く経っていたその時、流石に彼女の物語を書かないとなぁという思いに火が付きました。そんな時手を付けていたのが『少女仙機譚』。いくつかの基本的な設定とともに、彼女をこの世界に生み出すことに成功するのでした。
しかしそれでも彼女は『主役』にはなりません。最初に企画した作品は少年が主人公の話を考えていましたし、結局書いた作品も『晴天のヴァルリッツァー』。
彼女は、あまり主人公的なキャラクターでも無かったんですよね。どちらかと言うと支える方と言うか……。
なにせ慎重だし、物事にドライな面が強い。広く見ているようで盲目的な面もある。むしろ突き進んでいく主人公を遠目から見て、部分部分で助けてあげるような、損な役回りの方が彼女にマッチしていました。
彼女が主役で動くと、絶対に今回の話みたいに成るんですよ。彼女は遠くから物事を見るのは得意ですが、近くにあるものは途端に見るのが苦手になる。だから対戦相手の本質をすぐには見抜けなかったし、あんな不自然なカフェテリアの会話にすら踊らされたのです。
遠くは見渡せても近くは苦手。そういうところはガンマンっぽくもありますね。
しかしまあ、それでも彼女の主人公の話がやっとこさっとこ書けました。短編と言う形式ではありますが、生まれて十年近く経って彼女の物語は日の目を見ることになったのです。
ですので、この話はとても思い入れがあります。なにせ、私が生み出したキャラクターの中で一番愛着があるのです。結局今でも何かあると彼女を描きますし、好きあらばどこかの世界にも召還したりしています。
その加筆修正が今回だったわけですが……。『晴天のヴァルリッツァー』よりは加筆修正は行いませんでした。
きっと筆が乗っていたのでしょう。数年前の作品にしては、とても気持ちよくかけていました。
梨本森野はとても扱いが難しいキャラクターです。ですが、きっと今後も時折顔を見せてくる、生涯を通じた自分の娘になるのだなと、今回の加筆を経て再確認できました。
それでは、長くなりましたが書きたいこともかけたので、次の作品で。
”真説”少女仙機譚~花よ、花よ~ 藤辰 @fujitatu
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