第42話
「急ごう、孝くん!2人を起こしに行こう。今すぐ調整池へ行くわよ!」
サオリは僕の手を引っ張って階段をかけ下りた。僕はいまだにわけがわからなかった。でも、とにかくここを出なきゃならないということは確かだった。
英ちゃんとカッコはさっきの揺れで目を覚ましていた。薄暗い店のエスカレーターを、息せき切って降りてくる僕らをみて驚いた様子だった。
「2人とも!明かりをつけて!すぐにローラー履いて!そのほうがきっと速い!」
ただならぬサオリの様子に、2人はすぐに起き上がり、明かりをつけてローラーブレードを装着し始めた。サオリと僕もすぐにヘルメットをかぶり、ローラーを履いた。ずしりとまた揺れた。地震の間隔が短くなってる。
「サオリ、もっとここのことをくわしく教えてよ。どうして僕らがここにいるのか?サオリは誰なのか!」
僕はどうしても知りたかった。カッコはどうして僕がそんなことを言うのかがわからないようだった。鎖を肩に巻きながらカッコは言った。
「ねえ、外まだ暗いよ。“さまよい”がいるけど、大丈夫なのかな」
サオリは僕の質問に答える代わりに言った。
「アレは何の危害も加えてこないわ。だって、あなたたちと同じような子供たちの成れの果てだから」
僕らはあんまりびっくりして、何も言えなくなってしまった。
「おどろいたよね。ここがどういうところか教えてあげる。わたしだって全部を知っているわけじゃないけど」
ようやくローラーを履き終えた僕らは正面出口に向かって走り出す。猛スピードで走りながらサオリは話し始めた。
「“神隠し”って知ってる?昨日まで一緒に遊んでいた友達が、ある日突然消えてしまう・・・。昔はよくあったのよ」
僕らは正面出口の前に立った。夜明け前の薄暗い空の下、ドアの向こう側は白い人影であふれている。サオリは迷うことなくカギを開けた。僕らは身構えた。開けた瞬間、どっと白い影たちがこちらになだれ込んできた。でも、“さまよい”は僕らの横をすり抜けて、ただ通路をウロウロしているだけだった。僕らは勢いよく出口から飛び出して調整池へ向かい始めた。同時に地面がまた揺れた。バランスを崩しながらも僕たちはなんとか走り続けた。
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