第36話

「みんな・・・帰ろう。なんとか帰る方法を真剣に考えようよ。オレ達、あんまりここの居心地がよくって、これまでこのことにちゃんと向き合ってこなかったと思うんだ。」

 ようやくヒック、ヒック、という声が止まった英ちゃんが強い口調で言った。その目にはかたい決心が感じられた。

 「そうだね。3人よれば文殊の知恵って言うしね。みんなで考えればきっと何かいい方法が見つかるはずだよ。」

 僕は昨日読んだばかりの、まんがのことわざ辞典で覚えた言葉を使って英ちゃんの意見に賛成した。

 「もん・・じゅ?3人って、僕らは4人じゃないの?」

 カッコは僕の言った意味がよくわからないようだ。

 「いや、それは別に関係ないよ。そういうことわざなんだ。とにかく、あのハンドルをどうにかして止めたままにすればなんとかなるんじゃない?」

 僕はみんなを見回した。

 「棒か何かで止めるのは?」

 カッコが言った。

 「どうやって?ただハンドルに棒を通すだけじゃ、すぐに倒れちゃうだろ。」

 英ちゃんがすぐにそれを打ち消す。

 「できれば、ハンドルをずっと同じ位置に固定させなきゃ。」

 英ちゃんはそう言ってまた考え出した。その時、僕は突然ひらめいた。

 「そうだ、ヒモかなにかでハンドルとそばの柵を結べばいいんじゃない!」

 「あっ、なるほど。それいいね。一旦水を止めてからそのままロープか何かで固定すればいいのか・・・でもロープじゃほどけそうじゃない?」

 英ちゃんは必死に考えて再び口を開いた。

 「ねえ、ロープよりもさ、鎖とかならいいんじゃない?」

 「そうか、それなら切れることもないかな・・・でもどうやって鎖を結ぶの?」

 僕と英ちゃんは突破口を必死に探す。カッコは僕らの様子をぽかんと眺めている。サオリは下を向いてじっと黙ったままだ。

 鎖・・・鎖は確か一階の工具売り場のあたりにあった。きっといろいろな種類があるはずだ。鉄だからかなり丈夫だろう。じゃあ、鎖と鎖をつなぐにはどうしたらいい?あっ、そういえばどこかで何かで鎖をつないでいるのを見たことがある。工事現場だったっけ?思い出せ、僕。鎖と鎖のあいだにあったものはなんだ・・・そうだ!

 僕はついに答えを見つけた。

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