第22話

 「プール?わたしも?」

 サオリは目をまるくした。また新しいサオリの顔が現れた。

 「うん、そうだよ。ここからなら歩いて10分くらいだからすぐに着くよ」

 僕はホットプレートの上で焼けている肉を取ってほおばりながら言った。今晩は無印良品のテーブルで高級牛肉パーティだ。みんなで囲む食卓はとても楽しい。合宿みたいな気分だ。

 「みんなで行けばさ、絶対に楽しいよ!」

 英ちゃんもコーラをがぶ飲みして言った。

 「キミたち、わたしが行くと、楽しいの?」

 僕はなぜサオリが僕らのことを言うのかがわからなかったが

「そりゃそうだよ、人数は多い方が楽しいに決まってるじゃん」

 と英ちゃんが言うと、あっさり

「そう、なら行くわ」

 と答えた。


 翌日、4人で色々なグッズを持って学校へ出かけた。

 サオリは大きなつばのある白い帽子をかぶり、水色に白のストライプが入ったワンピースを着ていた。その姿はなんだかまぶしく、とっても優雅に見えた。それにひきかえ僕ら3人といえば、着いたらすぐにプールに入れるように海パン一丁だった。サオリと比べると、本当に僕らは子供だと思った。

 日差しは今日も強い。プールにはうってつけの日だ。ただ、僕はどう考えても夏なんだけど、何かが足りないと思っていたんだ。

「あ!そうか!」

 僕は突然叫んだ。みんながこちらを見た。

「あ、急にごめん。でもさ、僕、夏なのに何か物足りないな、と思っていたんだけど、それがわかったんだ」

「何が足りないの?」

 大きな麦わら帽子をかぶっているカッコが僕に聞く。

「ほら、セミの声だよ。いつもならうるさいくらいに聞こえているのに、静かすぎるんだよ。季節っていうのはさ、音でも感じるんだね」

「そう言われればそうだね」

 カッコは、なあんだ、そんなことかとでも言わんばかりの反応だった。英ちゃんはそうだね、なるほどね、とうなずいた。サオリは相変わらず何も言わない。

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