第20話


 外は晴れて、暑かった。昼は“さまよい”はいないらしい。見えないだけなのかもしれない。僕らはリュックにお弁当とペットボトルを詰めてまずは調整池に向かった。

 相変わらず土管の出口からは水が勢いよく流れていた。あんまり期待はしていなかったけれど、やっぱり僕らは落ち込んだ。

  ――ぐらっ。

 とたんに地面が揺れた。

 体が一瞬固まったけど、揺れはすぐに止まった。

 「とりあえず、いろんなところに行ってみよう」

 気を取り直して僕は言った。

 「そうだなー、三谷団地の様子を見て、学校に行ってみようよ」

 英ちゃんはそう言ってペダルをふんだ。立ちこぎで左右にお尻を降って自転車を走らせ始めた英ちゃんの後ろに僕らも続いた。ほとんど廃墟のようになった三谷団地を見たあと、僕らは再びリリィの方へ向かった。僕らの小学校はリリィの前の大通りを通り過ぎたその数百メートル先にある。

 「どこもひどいね」

 カッコが両手離し運転でペットボトルのスポーツドリンクを飲みながら言った。

 「メチャメチャだね。通れないところもあったし。でも、やっぱり人はいない」

 僕はそう言って、強い日差しを避けるためにジャイアンツの帽子を深めにかぶりなおした。このままここで過ごすとすれば、毎日帽子はとっかえひっかえだ。

 リリィの前を通り過ぎる。サオリはどこからか僕たちを見ているのだろうか。英ちゃんが口を開く。

 「あのサオリって子は不思議だよね」

 「そうだね。年は同じくらいなのに、なんだかやけに大人っぽくない?」

 僕は思ったことを言った。カッコも答える。

 「ボク、なんだか年上のお姉さんと話しているみたいな気がしたよ」

 その通りだ。サオリの見た目は小学生だけど、話し方や、落ち着き方がまるで大人なんだ。そんなことを話しているうちに、学校へ到着した。

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