エンドレス夏休み

第18話

 目が覚めると、いつもとは違う天井だった。そうだ。僕はきのう、リリィ一階にある無印良品の店の中においてあるベッドで寝たんだ。

 カッコは、ベッドは落ち着かないと言って寝具売り場からわざわざ布団を持ってきて床に寝た。そして、まだそこで寝ている。

 僕がガサゴソやりはじめると、となりのベッドの英ちゃんも目を覚ました。

 僕と目が合って、一瞬不思議そうな顔になったけれど、昨日の出来事を思い出したらしく、苦笑いをした。

 サオリはどうしているだろう。女の子だから僕らより少し離れたところのソファで寝たのだ。

 「おはよう」

 声のする方を見ると、きのうとは違う、紺地に白水玉のワンピースでサオリはエスカレーターを歩いて降りてきた。

 「おはよう」

 僕は起き上がってベッドの端に腰掛けた。

 「別にいつまで寝ててもいいんだけどね」

 サオリはそう言った。たしかに、ここでやらなきゃいけないことなんか、ない。サオリはベッドのそばに置いてあるソファに座った。

 「何か気に入った服を着ればいいよ」

 そう言われて、僕はきのう子供服売り場から勝手に持ってきたパジャマを脱いで、無印良品の白いTシャツと緑のチェックの短パンに着替えた。

 僕が着替え終わった時に、ようやく妖怪ウォッチのパジャマを着たカッコが起きだして言った。

 「学校に行かなくていいからよかった」

 学校・・・そういえば今日は何曜日だ?あれ、何月何日だっけ?そんなことすら思い出せない僕はがくぜんとした。ひょっとしたら、僕もサオリみたいに、いつここに来たかも忘れて、お母さんや友達のことを忘れてしまうんじゃないか・・・。しかしそれを言い出すと本当になってしまいそうな気がした。僕は黙ってトイレに行き、そのままパン屋に寄ってクロワッサンとアンパン、ジュースを持って無印に戻った。

 「今日、これからどうする?」

 おにぎりで口の中をいっぱいにしながら英ちゃんがみんなに聞いた。

 「一応、また土管の様子を見に行ってみようよ。これから自転車売り場に行って、好きなヤツ選んで乗ろうよ」

 僕がそう答えると、カッコと英ちゃんも賛成した。

 「サオリはどうする?」

 僕は当然サオリも来るもんだと思ってそう聞いた。けれどもサオリは相変わらずの無表情で

「わたしはここにいる。みんなで行ってきて。様子をよく見てくるといいよ」

 と言った。

 僕はなんとなくがっかりしたが、とにかく外の様子をもっと知りたいと思ったのでそれ以上は何も言わなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る