第15話
「サオリはいつ、どこから来たかわからない、って言ったよね。そうはいっても、僕らよりはここのことを知っているでしょ。ひょっとして僕らが来るまではずっとひとりでここにいたの?」
僕は空になったお寿司のパックをゴミ箱に入れたあと、サオリに質問をぶつけた。サオリは肩をすくめて答えた。
「そう。ここはなぜだかいつも明るいし、食品はいつの間にか補充されているの。テレビやラジオはダメだけど、ゲームはできるわ」
「そんなうまい具合にできてるのって・・・それにしたってひとりでいて、寂しくならなかったの?」
僕がそう聞くと、サオリはキョトンとした顔になった。
「さびしい・・・なんだろ、それ。わたし、よくわからない」
「よくわからないって・・・だってひとりぼっちでここにいたわけなら、家族のこととか、友達のこととか、いろいろ思い出すだろ」
サオリは一度下を向いてから僕に向き直った。
「ほんとうにわからないの、ごめんなさい。変に思うかもしれないけれど、気がついたらわたしはここにいたの。それがいつかもわからない。ずうっとひとりでいたから、わたしの気持ちはどこかおかしくなっているのかもしれない。もちろん、わたしに家族や友達がいたかもしれない。でも本当にわからないの・・・。今日、ここから外を眺めていたら、キミたちが走っているのを見たの。それで急いで追いかけて来たのね」
僕はそれ以上何も言えなかった。なんだか聞いてはいけないことを聞いたみたいな気がした。
「地震の時、大丈夫だった?」
カッコが思い出したようにしゃべった。
「さっきも言ったけど、なぜかここだけは特別なの。もちろん揺れたけれど、びくともしなかった。わたし、窓から沢山の家が崩れるのを見た・・・」
「でも、その家には誰も住んでいない。そうでしょ」
英ちゃんはするどく聞き返した。
「そうよ。いたのはわたしだけ。そして、今日キミ達が来た」
結局何一つわかったことがない。僕らはもう帰れないのだろうか。
「そういえば、さっき言っていた“アレ”って何?」
僕はサオリに聞いた。
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