第14話

「キミたち、お腹すいているでしょ。何か食べるといいよ」

 そう言ってサオリは食品売り場の方へ歩き出した。

 「何か食べるって、オレたちお金ないよ」

 英ちゃんが周りを見回しながら言う。

 「お金なんかいらないよ。好きなものを選んで、好きなものを食べればいいの。どうせ誰もいないし」

 サオリは相変わらず表情を変えずに言う。僕は再びサオリに聞いた。

 「どういうこと?ここだけ特別って言ったよね?もっとくわしく教えてもらいたいよ。僕ら、本当になにがどうなっているんだか、わけがわからないんだ・・・」

 「いきなりいっぺんに説明はできないわ。もうすぐ夜だし、その時話すよ。さ、なんでも好きなものを選んで食べて」

 確かに僕らはお腹が空きすぎていたから、サオリの言うとおり、お弁当やおかずを勝手に売り場から選んで、がらんとした2階のフードコートでもくもくと食べた。サオリは何も食べずに、僕らをまるで観察するようにじっと見つめていた。

 フードコートのラーメン屋やたこ焼き屋、ピザ屋には電気がついていたけれど、当然そこに働いている人はいない。フードコート反対側の窓をみると、いつの間にか外はすっかり暗くなっていた。

 「英ちゃん、今何時?」

 カッコがミートソーススパゲティで口の周りを赤くしながら聞いた。いつもの英ちゃんなら、きっとそれを見て「ピエロ!ピエロ!」みたいなツッコミを入れるはずなんだけど、今日はまるでそんな気にはならないようだ。

 「それがさ、オレのデジタル時計なにもうつらないんだよ。買ったばかりなのに。外の様子からすれば、7時くらいなんじゃない?オレ、いつもならそろそろ風呂に入ってる時間だよ・・・」

 「お風呂なら、店員用のシャワールームがあるから入れる。ここにいれば、たいていのことに不自由はないよ」

 サオリが口をはさんだ。

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