第76話 69
「『葦原に集まりつつある』、は言い過ぎじゃありません?」
ツボミモモ六位が呆れ混じりの声でそう返すと、室内の時間が再び流れ始めた。
俺は息を止めていたことに気付き、肺に残る空気を吐き出す。
「正確には『葦原に流れる恐竜の数が多少増える』でしょう? それも全体から見れば誤差の範囲。今の語りは大げさに過ぎます」
古参の十弓は袖で口を隠し、諌めるような目で二位を見上げた。
「脅すような言い方はご遠慮願いたいですね、ニラバ二位?」
「いや、『集まりつつある』で正しいんだよ、ツボミモモ六位」
「?」
「今、各地の恐竜女が後方に下がりつつある」
「……の、ようですね。次の侵攻はさぞ大規模になることでしょう」
「追撃戦に参加した少なからぬ兵が『アシハラに集まれ』『アシハラを攻めるぞ』という言葉を耳にしたそうだ」
「かく乱のためではなくて?」
「葦原だけならな。よその国でも恐竜女の伝令が葦原の名を口にしているらしい。……おっと、九位のせいじゃないぞ」
多くの十弓が「こいつが余計なことを言うから」といった目で俺を見ると、二位が言葉を足す。
「既に連中は世界地図を持ってる。一枚や二枚じゃなく、今もあちこちで集めているそうだ。たまさか名を知った国に気まぐれで攻め入っているわけじゃなく、何らかの戦略的な意図をもって葦原を狙っている」
「ま、そういうことにしてあげようかな」
ネコジャラシ七位が嘲りと共に肩をすくめた。
が、俺はふと気づく。
(地図を『集めている』……?)
「どうした、九位」
「いえ。大したことでは」
「言ってみろ。たまにはお前の考えも聞きたい」
促したのはランゼツ三位だった。
俺はうっかりサギの話を漏らさないよう、慎重に言葉を選ぶ。
「ご存知かと思いますが、奴らは戦闘に道具を使いません。装備も軽い。糧食は現地調達でしょうから荷車を引く部隊も不要のはず。……一枚や二枚ならともかく、今も地図を『集めている』のは少し気になるなと」
唐の時は気にも留めなかった。
奴らは霧の外の地理や流通網をまったく知らないのだから、地図を狙うのも道理だと思ったからだ。
だが今は状況が違う。
既に連中は人の土地に攻め込み、物資や奴隷の収奪を始めている。
これ以上、地図を集める理由はない。
「これから攻め込む土地の地形を把握するのは
「俺たちの文明ではな、五位」
でも、と俺は重ねる。
「あいつらは人じゃない。戦の作法が違うはずだ」
恐竜を移動させる平地を調べるだけなら、そう何枚も地図は必要ない。
写し書きできないから大量に奪っているのだろうか。
人類側の兵の練度を知らず、文明がどれほど発展しているのかもまともに把握できていないのに。
――何か、引っ掛かる。
「じぜんにしじがあったようないんしょうをうけますね」
一位がうっそりと呟く。
「かのじょたちは、なにかかくしているのかもしれません」
「隠す?」
「ちけいをしらべることでゆうりにはたらくようななにかか、あるいはべつのいとがあるのかもしれません」
靄がかったような言葉に何人かの十弓が顔を見合わせる。
だが一位はそれ以上何も言わなかった。
「いずれにせよ、連中の指導者は唐でもエーデルホルンでもなく葦原を見ている。本腰を入れて攻めるつもりなら向こうも唐と同じことを考えるだろう。つまり初めは恐竜を寄こす。その後、恐竜女がわっと攻めて来る」
で、と二位は続ける。
「先ほど七位が言ったような防衛に徹した場合、我々は負ける。葦原には対大型恐竜戦で決め手となる武器が無いからな。数に押され、飲み込まれて終わりだ。……我々は攻めなければならない。たとえ唐やブアンプラーナに多少隙を見せることになっても」
「……」
「当たり前の話だが、他国は葦原のために人や金を投げ打ちはしない。我々の国を護るのは、我々の勇敢さだけだ」
二位は厳かにそう告げ、十弓全員の顔を見回した。
微かにだが、汗が匂い始めていた。
「エーデルホルンが四十万、唐が百から百二十万、ブランプラーナが八万の兵を寄こす。これに葦原十二万の兵を加え、四カ国の連合軍を編成する」
二位が再び地図を叩く。
「四カ国連合軍はこの葦原に集結する」
先ほどと同じように、二位は各国の領土から中央へ向けて手を動かす。
「葦原以外の各国は残った兵で恐竜と恐竜女を冒涜大陸に押し込む」
「それはつまり……」
「流れに掉さすわけだ。各国は葦原方面にできるだけ多くの恐竜と恐竜女を集め――いや、『流す』よう努める」
そして、と二位は続ける。
「四カ国の連合軍は葦原から冒涜大陸へ進軍し、奴らを正面からすり潰す」
限りなく混乱に近い動揺が広がった。
俺はその話をどう受け止めるべきか分からず、口を閉じた。
「しょ、正面からやり合うのですか? 恐竜の大群と?」
「はい。しょうめんからです」
「奇襲で削るわけでも、局地戦を繰り返すわけでもなく?」
「はい。そのせんぽうはむこうがとくいとするようですから」
「それも――葦原から? 唐やブアンプラーナではなく?」
「はい。あしはらからのよていです」
「いささか無謀では?」
「かもしれませんね。ですが、かっこくがききかんをいだいているいましかとれないせんぽうです」
一位は淡々と答え、言葉を重ねる。
「われらのもくてきはげいげきではない。しんこうでも、せんりょうでもない」
冷えた声。
「まっさつであり、さつりくです」
しん、と場が静まり返る。
「きょうりゅうをしきする、きょうりゅうおんな。これをねからたやす。きょうりゅうには、ひとのきょういをしらしめる。すがたをみればにげだすよう、てっていてきにきょうふをうえつける。そのために、しょうめんからかずでおしつぶす」
一位は三位と四位を見た。次に五位と六位を。
「きゃつらがあしはらほうめんにあつまるのであれば、そのあしはらから、さいだいのへいをおくる」
七位。八位。俺、十位に目を向ける。
「たちふさがるいのちすべて、ころしつくします」
「ですが、よりによって葦原から……。他にやりようもあるでしょうに」
七位の言葉に、「いえ」と四位が首を振る。
「唐やブアンプラーナから攻め込めば、敵が防備の薄い葦原方面に流れて来る可能性が高い。それに向こうが地図を持っているのなら、最小の葦原から攻め込むことで虚を突けるかもしれない」
「一位様。殺し尽くす、と仰いましたが……捕虜や奴隷は?」
「ほりょやどれいをとれば、ゆうわやたいわのよちがうまれます」
こくりと一位が頷く。
「みなごろしです」
その瞬間、後ろ暗い昂揚が湿った霧となって室内に漂った。
何人かが薄笑みを、何人かが押し殺したような無表情を浮かべる。
あの、と十位が声を上げた。
「皆殺し、ということはその……子供や老人も、ですか?」
「もちろんです、アマイモ十位」
「分かりました! かわいそうですけど、仕方ないですよね……!」
アマイモ十位は眉を八の字にしつつも、力強く頷く。
硬いリンゴすらイチゴのようにすり潰す手が開閉した。
「じゃあ、思いっきりやります!」
はい、と一位は微笑らしきものを浮かべて頷いた。
「……カヤミ一位。今の進軍計画は
ミョウガヤが目を細めながら問うと、「いや」と二位が応じた。
「四カ国の総意だ」
「では、もう進軍自体は決まっているんですね?」
「ああ。各国の王と帝様の間でとっくに話は済んでる。四カ国会談は最終的な日取りと戦後の細々した取り決めのために開かれる」
「珍しく迅速ですね」
「それだけ
ぱん、とニラバ二位が手を叩く。
「話を戻そう。兵を出し惜しめば恐竜と恐竜女に押し返され、葦原は国土を荒らされる。さりとて、出し過ぎれば唐あるいはブアンプラーナに横腹を突かれる危険性がある。ゆえに出す兵は絞り、帝様は檀ノ浦に移っていただく。……ここまでは良いな?」
「そこでもんだいになるのが、みかどさまのごえいです」
一位が静かに告げる。
「わたしとニラバ二位が、このにんにつきます。つまり、われらはたたかいにさんじません」
ようやく俺にも話が見えた。
「いっぽうで、こたびのいくさはゆみとりがじゅうようとなります」
一位の目配せを受け、二位が頷く。
「まだ調整段階だから話半分に聞いてほしい。連合軍の部隊はそれぞれが車輪付きの攻城櫓を中心に据える。これにバリスタやら大砲やらの武器とありったけの弓兵を搭載する。それをブアンプラーナの象、葦原の黒牛部隊、唐の長槍騎兵、それにエーデルホルンの重装騎兵で護衛する。後方には唐兵を始めとする徒歩の兵が続く。この部隊を束ねて『軍』とする」
「えぇ……? 何そのごった煮……」
六位が口元を袖で覆い、八位も不快そうな顔をする。
「各国で軍を分けるべきではありませんか、二位様」
「分けると『軍』ごとの統率は取れても、『連合軍』として足並みが揃わん。土壇場で裏切る奴が出る」
「裏切りは
ネコジャラシ七位がせせら笑った。
「相手が人間ならな。今回は恐竜だ。後方の軍が裏切ったから正面の敵と休戦、なんて話は通じない」
俺も思わず声を上げた。
「だからと言って、象軍、騎兵、黒牛部隊を混成するのですか? 聞いたこともない編成です、二位」
「聞いたこともない
二位は苦笑いを浮かべる。
「悪いが、辛抱してほしい。これでも
「まあ、ぜいたくを言える立場ではありませんからね、葦原は。連合軍を編成できなければ、遠からず滅ぶしかないわけですし」
六位が溜息をつき、三位がむっつりした顔でそれを見た。
「話を戻すぞ。今回の編成で重要なのは弓兵の『目』だ。
「恐竜の首も獲るのですか?」
「今しがた一位が言った通り、目の前に立つ奴はすべて敵だ。獲れる首はすべて獲れ」
三位が舌なめずりし、六位と七位が頬をわずかに緩める。
「もちろん各国から選りすぐりの弓取りが出るだろうが、葦原の『十弓』にかかる期待は大きい」
何人かが頷き始める。
俺と同じく、話を飲み込んだのだろう。
「となると、十弓の『二枚落ち』はまずい。だから――」
「三枚だ。ギンレンゲ八位は大貫衆に戻す。『灼海六傑』が二人も落ちた。海上で帝様を護衛する人手が足りん」
「!」
「十弓のうち三人が抜けるのは十位の騒動以来だ。よって一度『十弓』を解散する運びとなった。……これで話は通じたか?」
全員が安堵らしき吐息を漏らした。
やはり、最初に文句を言ったのはツボミモモ六位だ。
「……それは『解散』ではなく、ただの『再編』でしょう? だったら――」
「このばのぜんいんをよぶとはかぎりません」
誰もがびくりと肩を震わせた。
一位の言葉が心臓にひやりと触れたのだろう。
「なぜならよんかこくでぐんをへんせいするにあたり、ふてきかくなものがいるかもしれないからです。そのぎんみがこれからおこなわれます」
「……」
「じゅっきゅうはさいせんていします。かいいがあがるもの、さがるものもいるでしょう。ともすればすうにんていど、このばからすがたをけすかもしれない。ですからさいへんではなく、かいさんなのです」
「……。あの」
「どうした、十位」
「一位と二位が檀ノ浦へ向かわれたら、どなたが『十弓』全体の指揮を……?」
「それもみていです。さいせんていごにきまります」
「では今の十弓がそのまま残るとしたらどうでしょうか、カヤミ一位」
ミョウガヤ五位は上目遣いで一位を見る。
「参考までにお聞かせいただきたいです。この中で選ぶとすれば誰が『一位』にふさわしいのか」
「はい。……ニラバ二位」
「順当にランゼツ三位かイチゴミヤ四位だな」
「二人で一位を務めるんですか? それも『聞いたことのない戦』だからですか?」
「いや、どちらが一位になっても問題ない、という意味だ。これは私と一位の間で合意が取れている。答えになったか、ミョウガヤ五位」
「ええ。ありがとうございます。……だそうだよ、十位」
五位がちらりと十位を見る。
当の十位は自分が質問したことを忘れているのか、ぽかんとしている。
「え? あ、え、はい……! ランゼツ三位か、イチゴミヤ四位……どちらかまでは決まっていないんですね」
「どちらもその器があるからな。……アマイモ十位ならどちらがふさわしいと思うかね?」
「ええと……私はイチゴミヤ四位かな、と」
「ほう?」
「あの、四位の方が人望があるので、皆さんついて行きやすいと思い……ます……」
語尾が掠れて消える。
三位は特に気分を害した風でもなく、四位はガラス玉の入っていない方の目を閉じている。
二位はやおら俺の方を向いた。
「九位は?」
「お、俺ですか? ……。あくまでも暫定的な指揮、ということですよね?」
「はい。たたかいがおわれば、わたしとニラバ二位がもどります」
「では四位です」
「りゆうは?」
「……」
俺は三位を見た。
三位も俺を見た。
彼女は目だけで嗤っていた。
「三位の言動は品格を欠いているからです」
六位、七位、八位、十位が一斉に俺を見た。
「あなた、どの口で言うの……!」
「蛇飼いがそれを言うのか!」
「九位様が仰いますか、それを」
「九位が冗談を言いました……!」
俺は胃の腑までげんなりした。
ミョウガヤ五位が視界の隅でくすりと笑っただけで、上位の十弓は無反応だ。
「三位、四位。お前たちの意思は?」
二位に水を向けられた二人は視線を交わし、まず四位が口を開く。
「私は……まだその座にふさわしくないかと」
「なるほど。三位は?」
「光栄ですね。ぜひとも一位として十弓を動かしたい」
ランゼツ三位の言葉に、何人かが濁った息を吐く。それは主に下位の十弓だった。
その様を見た赤紫の十弓は、ふっと自嘲めいた笑みを浮かべる。
「もっとも、離脱する兵が出るやもしれませんが」
「そのていどでりだつするへいは、あしはらにはふようです」
一位はいつもの淡々とした口調で告げる。
「われらはくににつかえるみ。ひとにつかえるのではありません」
「そういうことだ。上の顔ぶれで去就を決めるような奴は傭兵をやればいい」
「お二人は私で構わないのですか?」
一瞬、間が空いた。
三位はかつてないほど鋭い眼差しで一位と二位を見据えている。
「わたしは三位でよいとおもいます」
「私は半分ほど反対だな」
ニラバ二位の言葉に何人かが身を強張らせる。
当の三位は、ふっと笑った。
「素行不良ですからね。それはそうだ」
「いや、素行など些細な問題だ。お前より報国の情が強い者はこの場にいないだろう、ランゼツ三位」
「……」
「だがお前自身のことを考えれば、ここで頂点に据えるべきではないと私は考えている」
「仰っている意味が分かりかねます」
「分かるように話していないからな。大きくなれよ、三位」
半仮面の二位はそこで言葉を切った。
三位は不満げに腕を組み、四位を見やる。
「あなたからは何も無いのか、四位」
「はい?」
「戦の腕ならともかく、指揮官としての総合力はあなたの方が上だろう」
「ご謙遜を。あなたは三位で、私は四位。それがすべてですよ」
「謙遜しているのはそちらだろう。嫌味のつもりか?」
三位の声に、四位は一度だけ溜息らしきものを漏らした。
「……。三位が、百万を越える四カ国軍全体の指揮権をお持ちだと仮定しましょう。冒涜大陸に進軍する中で兵の五割が削れたら、あなたはどうします?」
「当然、攻める」
「理由は?」
「勝つまで戦いは終わらないからだ」
「……私にそれはできない」
「……」
「摩耗した兵を連れて勝利をもぎ取るぐらいなら、一度引くでしょう」
「それも戦い方だ。否定はしない」
だが、と三位は続けた。
「私は戦うからには勝つ。必ず、勝つ。方法が何であれ、勝つのが兵の務めだからだ」
俺は彼女の言葉に、僅かな苛立ちを覚えた。
脳裏には夕陽を浴びながら俺を嘲るランゼツ三位の姿が浮かぶ。
「それが――」
俺が口を開くと、皆の視線が集まった。
「それが国の誇りを汚し、名誉を損なうような『勝ち方』でも、ですか。ランゼツ三位」
三位は射殺すような視線を向けた。
「
「……」
「葦原は弱い。弱いから窮している。なら強くなるか、強さを示すしかない。あらゆる手を使ってな」
三位はそれだけ言い、俺から視線を外す。
俺の肉体は数秒遅れて冷や汗を噴いた。
「五位。どう思う?」
水を向けられたミョウガヤは落ち着いていた。
「僕も三位が適任だと思う」
「理由は?」
「四位だと十弓全体が舐められる。弓衆から独立している意味が揺らぐよ。まして今回僕たちが加わるのは多国籍の軍だ。十弓の『頭』は非凡な者が務めるべきだと思う。それに――」
「それに?」
「四位が指揮を執って失敗したとして、三位が後釜だと見映えが悪い。逆なら形が良いよね。三位の失敗を四位が補うって形の方がさ」
俺を嘲る時と同じ笑みが、今は三位に向けられている。
「ずいぶん肝が据わったな、ミョウガヤ五位?」
「育ち盛りだからね」
「あー……。今の『新一位』の話は仮定だからな? 皆、真に受けんように」
では、と一位が引き継ぐ。
「おそくなりましたが。……ランゼツ三位」
「はい。状況を簡潔に共有する。――」
状況は、おおむね予想通りだった。
「九位のほうこくをよんでいないものは、かならずめをとおしておくように」
一位はその言葉で話を締めた。
「つぎのしょうしゅうはすうじつちゅうです。よばれたものだけいらしてください」
「連合軍の話はまだ調整中だ。備えはしなくていい。次の招集は『四カ国会談』の警護についてだ。あまり遠くに出るなよ、諸君」
軍議が終わり、俺たちは部屋を出る。
十弓たちはめいめいの速度で立ち去り、俺も自分に宛がわれた部屋へ向かう。
襖に手を掛けたところで、立ち止まる。
(どうするか……)
今最も優先度が高いのは、十弓の解散云々ではない。サギからもたされた情報を一位に共有することだ。
必要であれば質疑にも応じたいし、口頭で補足したい。
だが肝心の巻物がまだ渡されていない。
あれに目を通すのは一位とて時間を要するだろう。
それに三位が目を光らせている。ここで一位に接触するのは避けたい。
「おい、蛇飼い」
「?」
振り向くと、ネコジャラシ七位が立っていた。
若干だが、機嫌が悪いように見える。
「お前は――……。……いや、後でいい」
「?」
七位が背を向けて立ち去ると、音もなく襖が開いた。
そこには蓑猿が膝をついている。
「? どうした?」
「……ご用がおありとのことです」
すっと柱の陰からセルディナが姿を見せる。
紫布一枚を引っかけた、禿頭の美男子。
腰には弦を張った楽器のような剣。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だ」
「頼みがある」
その語調だけで俺は用件を察した。
「妹の……プルの居所が分かった」
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