【家畜の女王】

第74話 【傘門十弓】



傘門十弓さんもんじゅっきゅう



葦原で最も優れた十人の弓取り。

原則として他の十弓による推薦で選出される。


射手としての実力を認められれば年齢や性別、門地や経歴は一切問われないが、用兵に必要な読み書き、指揮官としての知見を求められる。

国内外を問わず各種式典や催事への出席義務があるため、礼儀作法にも通じている必要がある。


弓衆に対する指揮命令権限を持っているが、階級そのものは最上位ではない。

有事の際は既存の指揮体系に組み込まれ、一指揮官として機能する。

※一位、二位、三位、四位を除く。


各人が一定数(最大三百人)の弓衆・太刀衆・大貫衆を保有・指揮する権限を持ち、平時においては独自の裁量で行動する。

※保有・指揮する兵は事前に登録する必要がある。






【現在の十弓】



・カヤミ一位

十弓筆頭。弓衆(正式名称は弓筒衆)の中で唯一、帝と謁見する権限を持つ人物。

淡い茶色の長髪を持つ、透明感のある二十代半ばの女性。茫洋とした雰囲気の持ち主。

狩衣の色は水色。名乗りに使われるのはかや

最も輝かしい矢、『星の矢』を操る。



・ニラバ二位

葦原最強の弓取り。ワカツ九位、アマイモ十位を含む葦原の多くの孤児の父。巨大な琴を担ぐ、五十代の豪放磊落な男性。

海藻のように波打つ末広がりの黒髪。顔の右半分を赤い武者の面で覆う、髭面で恰幅の良い男。演劇を嗜むため声が低く、よく通る。

狩衣の色は紺青。名乗りに使われるのはにら

最も仰々しい矢、『まつりの矢』を操る。



・ランゼツ三位

葦原第二、女性最強の弓取り。淫蕩癖を持ち、しばしば独自の考えで暗躍する人物。

束ねた黒髪に孔雀の髪飾りをあしらう、二十代後半の女性。左腕を太く白い腕甲で包み、一般的な成人男性より長身。

狩衣の色は赤紫色。名乗りに使われるのはらん

最も禍々しい矢、『骨の矢』を操る。



・イチゴミヤ四位

長い砂色の髪を馬の尾のように束ねた、三十手前の眉目秀麗な男性。ザムジャハルの血を薄く継ぐ。

右目にさそりの細工を入れたガラス玉を嵌め、蠍型の銀甲冑に身を包む。十弓随一の人格者。

狩衣は桜色。名乗りに使われるのはいちご

最も醜悪な矢、『さそりの矢』を操る。



・ミョウガヤ五位

ツバキ、サザンカ、スイセン、ドクダミと呼ばれる四人の護衛を従える少年。駆け引きや交渉事に長け、外交や政治の領域を得意とする。

エーデルホルンの混血であるため金髪で色白。変声期は迎えておらず、戦闘能力はゼロ。

狩衣の色は赤色。名乗りに使われるのは茗荷みょうが

十弓で唯一弓を持たず、護衛の四人衆による『花の矢』を操る。



・ツボミモモ六位

首元で切り揃えた黒髪と華奢であどけない容貌を持つ、小柄な三十代の女性。十五になる娘がいる。

太陽を模した回転矢筒、『天輪てんりん』を背負う。冷笑的な皮肉屋だが、十弓の中でも古参の一人。

狩衣の色は橙色。名乗りに使われるのはもも

最も多彩な矢、『影の矢』を操る。



・エノコロ七位

銀の薄刃を全身の革帯に結んだ若い男性。女装しており、頭部を飾る紅玉の金輪から被衣かずきを垂らす。別名ネコジャラシ七位。

焦げ茶色の髪を頬まで伸ばす、元は『獣面』候補の凄腕忍者。弦を張った刃、『剣弓けんきゅう』と呼ばれる弓を用いる。

狩衣の色は黄色。名乗りに使われるのはえのころぐさ

最も美麗な矢、『氷の矢』を操る。



・ギンレンゲ八位

右半身に網の肌着と貝の玉暖簾たまのれん、左半身に白い波濤を描いた黒振袖を着る、二十代半ばの女性。片側で結んだ髪は明るい茶色。一対の弓を背負う。

十弓に対しても敬語を使う、元大貫衆の女傑。現在はとある富豪、通称『お嬢様』に仕えている。

狩衣の色は白色。名乗りに使われるのは蓮華れんげ

最も静かな矢、『虫の矢』を操る。



・ワカツ九位

錦蛇にしきへびの皮で黒髪を束ねた、十代後半の男性。袴ではなくズボンを穿き、草鞋ではなくブーツを履く。

五位相当の腕前を持ちながら無礼な言動で九位に据えられた問題児。強毒『獺祭だっさい』を用いることで、中型以下の恐竜を即死させることができる。

狩衣の色は緑色。名乗りに使われるのは若芽わかめ

最も奇抜な矢、『蛇の矢』を操る。



・アマイモ十位

二十代前半の臆病で気弱な女性。異常体質のため一般的な成人男性より頭二つ以上長身で、太く強靭な骨と筋肉を持つ。

鬼灯柄ほおずきがらの黒い付け下げ姿。長い黒髪を背に流し、額に葉つきの芋蔓いもづるを模した髪飾りを巻く。

狩衣の色は灰色。名乗りに使われるのはいも

最も忌まわしい矢、『 の矢』を操る。


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